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冒頭
写経というものは
つまらない。
仏には悪いが、
同じ事を何度も書くのは
どうにも性に合わぬ。
ならば
別のものを書いて
同じ時間を過ごすとしよう。
毎日など
面倒で続かぬ。
思い立った時に
覚えている事だけ書けばよい。
人というものは
よく忘れる。
忘れてしまう程度の事なら
きっと
大した事でもない。
残すほどの事でも
ないのだろう。
それでも
少しくらいは書いておく。
写経ではないから
墨をする手間も
紙も
いくらか省ける。
ものぐさな坊主には
それくらいが
ちょうどよい。
だからこれは
ありがたい経でもなければ
立派な記録でもない。
ただの
坊主の覚え書きである。
どうせ
世の中も
長くは残らぬ。




