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プロローグ
静かな海と空が溶け合う境界に、その青年は立っていた。
背には光を宿す羽――氷の結晶のようにきらめくそれは、彼が力を解き放った証だった。
青年の名を知る者はほとんどいない。
ただ、人々は彼を**「守護の翼を持つ者」**と呼んだ。
かつて彼は、ごく普通の少年だった。
戦う力も、特別な使命も持たず、ただ大切な人と穏やかな日々を過ごしていた。
だがその日常は、ある夜、黒い波のように現れた災厄によって引き裂かれた。
守れなかった。
その後悔が、彼の心を深く貫いた。
絶望の淵で、彼は祈った。
「もう二度と、誰も失いたくない」と。
その祈りに応えるように、彼の中に眠っていた力が目を覚ました。
冷たい光、鋭い意志、そして背中から生まれた羽。
それは破壊のためではなく、守るためだけに使う力だった。
青年は知っている。
この力を使うたびに、少しずつ自分が人ではなくなっていくことを。
それでも彼は立ち止まらない。
なぜなら――
彼の背後には、守るべき誰かがいるからだ。
今日もまた、青年はフードを深くかぶり、翼を広げる。
冷たい風の中で、彼の決意だけが熱を帯びていた。
「今度こそ、必ず守る」
その言葉と共に、光の翼が空を切り裂き、
青年は戦場へと飛び立っていった。
守るために力を使う、その孤独な物語は、
まだ始まったばかりだった。




