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異世界ユース  作者: 朝夕


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異世界キックオフ

初投稿作品です。

数話書き続ける予定です。

校正や物語の展開などにAIを使っています。

常日頃から状況整理を第一にして行動することを心掛けているが、整理するにしきれない。情報の無さ、いや、むしろ情報の濁流に飲み込まれたような感覚だ。確か練習帰りの子供目掛けて突っ込んだ居眠りトラックから、子ども達をかばったのだが自分は助からなかったようだ。微かに聞こえていた

「コーチ…」

と繰り返し呼びかける声も聞こえなくなった。なぜか聞こえるのは、獣の唸り声。真っ暗だった視界が明るさを取り戻していく。なぜか森の中のような場所でオオカミらしき見慣れない生き物に囲まれていた。どうやらすでに噛まれているようだ。昔、親戚が飼っていた子犬に噛まれた記憶がよみがえる。しっかりと痛みがある。なんとか頭を整理して取りあえず把握できたことは元いた世界とは別の世界に転移してしまったであろうことだ…。


自分は小学生の時に所属していた地元のサッカー少年団のコーチをしていた。と言ってもまだ高2だ。この少年団を卒業して、中学3年間も必死になってサッカーに打ち込んだ。その甲斐もあって高校はサッカー推薦で決まった。しかし、入学直後、禄でもないサッカー部の先輩達が少し大きな事件を起こし、なんとサッカー部は廃部になってしまった。強豪校で一定数存在する、自分の実力を悟りドロップアウトしてしまう人間。その人達のせいで高校では一試合もすることができなかった。もしかしたら自分もその先輩達のようになっていたかも知れないが、今となっては知る由もない。その後、しばらくして少年団のコーチをすることになった。


噛み付くケモノを振り払った。噛まれた痛みはそれほど無い。おそらくはRPGでいうところの序盤の低級モンスターだろう。まずはこの世界での自分の強さを確かめたい。元の世界では全く争いごととは無縁だったがゆえに、そもそもが未知数だ。スポーツエリートの高校生だったのだから体力や運動能力には自信が持てる。上下ジャージのそのままの姿で転移していて、肉体に違和感もない。事故の損傷だけはきれいになくなっている。

(よし。このまま戦ってみよう。)

十匹の獣を前に、覚悟を決めた。少し前にプレイしたゲームのような状況に高揚していた。


サッカー部が廃部になって、別の強豪校への転校も考えた。しかし、どんな顔をして敵だったチームに加わればいいのかと悩んだ挙句、そのまま転校はしなかった。今どき珍しい部活強制の高校だったが、特例によりサッカー推薦入学者は帰宅部を認められた。進学校ではないので、勉強はそれほど大変ではない。そこで最初のうちは、サッカーに当てるはずだった時間で小中学生の頃に流行っていたゲームをすることにした。それは、サッカーで失った時間を取り戻している感じがして、とても有意義だった。


ゲーム知識での攻略法を思い返す。まずは、一匹に攻撃を絞って数を減らしたい。それぞれの特徴を覚えて同じヤツにダメージを当てて行くことにした。大きさや体の模様でなんとか見分けがつけられる。なるべく、こちらから仕掛けるのではなく相手から仕掛けさせる。距離感や位置関係を常に把握するのに細かく首を振る。最初のターゲットを選び、そちらに少し距離を詰めた。ターゲットの個体が反応して向かってきた。重心移動を見て半身で躱し、力いっぱい蹴り上げた。相手はバランスを崩したが、すぐに体勢を整えてまた向かってきた。サッカー仕込みの身のこなし頼りで、戦闘に役立つゲーム知識はほとんど持ち合わせていなかった。


ゲームをやり始めた最初こそ熱中していたが、1年程でやり尽くしてしまった。このご時世、ネット上には昔のゲームから最新のゲームまで攻略情報で溢れている。まして、小学生が熱中するレベルのゲームを、高校生がただストーリーをクリアするだけであれば、それほど難しくない。なかにはやりこみ要素のあるゲームもあったようだがそこまでの興味はなかった。ここでゲームにはまり込んでいたら、この後のストーリーは大きく変わっていたのだろうが、これもまた知る由もないことだ。


結局のところ、ターゲットの個体以外の攻撃も躱しながら、狙った個体にダメージを与え続けて2匹を仕留めた。体感として30分くらい経っただろうか。これがゲームなら、効率の悪さに直ぐに飽きているだろう。しかも生身の戦闘だ。少なくともハーフタイムが欲しい。2匹減って個体間のスペースが広がっている。ディフェンスの裏をとるかのように、出力を上げて走り抜けて窮地を脱した。


高2になったときに、自分でお金を稼いでみようと思った。ゲームをクリアし尽くし、満足したのもあるが、このままでは社会に出られないと思ったからだ。まさか、ゲーム知識が役立つかも知れない世界に、転移してしまうなんて誰も思わないだろう。働き口はすぐに見つかった。どうやら、部屋に籠ってゲームに熱中する高校生を心配したのは自分だけでは無かった。恥ずかしいことに、気晴らしに外でゲームをしていたところを、少年団の時の恩師に見られていた。恩師は今でもそこの監督をしていた。そして、ちょうど後継者を探していたらしい。しかし、教えられるほどサッカーが出来て、時間にゆとりがある大人は、このご時世なかなかいない。恩師は、両親に後継者の提案をしていた。本気で任せたいというよりも、自分を気に掛けての行動だろう。練習に参加する誘いを受けていたそうだが、両親はそれを伝えずにいた。パタリとサッカーを辞めた後で、サッカー以外の選択肢を広げて欲しかったようだ。当然、一度引き受けると簡単に辞められない事もあり、恩師や、今いる子ども達とその親御さんに迷惑を掛ける心配もしていた。自分からサッカーと向き合い直すまでは話さないと決めていたようだ。


両親や恩師、子ども達の顔が頭に浮かびながらも、少し走ると森がひらけた。2メートルほどの柵で囲まれるように村が見えた。見張りのような人はいない。迷惑を掛けるかもしれないが、その村に逃げ込んだ。畑で農作業していると思しき人たちが見えた。言葉が通じるか分からないが助けを求めた。

「助けてくれー」

そう叫んだつもりが、知らない言葉を発していた。自分と、ほぼ追いついているケモノの群れに気付いた。3人いるが、男の老人が祖父で、その息子と、もう1人は息子の妻だろうか。近づくと、女の背丈は2人の大人の男達より少し低いだけだが、顔に幼さがある。親子関係は定かでないが、老人の孫娘くらいの見た目だ。最初にその娘が反応した。自分の持つ農具を若い男に持たせて、こちらを指差した。若い男は使っていた農具と、娘から渡された農具を持って加勢した。

「これを使ってくれ」

知らない言葉を頭でそう理解できた。

老人は、娘がまた指を差す、こちらと別の方向に歩みを進めた。

自分は男と共に2回戦、いや後半戦に臨んでいた。そこに遅れて、娘が駆け付けた。

「応援が来るから、ここで追い払いましょう」

武器を持たない娘は、しゃがみ土を掴んだ。手の上で握られた土は、なぜか野球ボール大の球になっていた。そのまま、ケモノに向かい、お世辞にも速いとは言えない球を投げた。球は当たらず土に戻った。一方で、男は少し離れたところで農具を我武者羅に振り回していた。ケモノは距離を取っていて当たっていない。横目でしか見えないが、斬撃のようなものも飛んでいる。どうやら、2人とも戦う術はあるが、あまり慣れていないようだ。

「二人ともラインを揃えましょう!」

咄嗟にサッカーの試合のように、指示が口をついて出た。


結局、サッカーと向き合い直した訳ではない。両親は社会人になれない危機感を悟って動き出した自分に、少年団の指導者の話をしてくれた。コーチとしてようやく1年が経とうとした矢先に、今日、事故にあってしまった。恩師はまだ暫く後継者を見つけるのに苦労するだろう。ただこの1年で恩師からいろんなことを学んだ。選手として戦うよりも何倍も難しく感じた。チームスポーツのサッカーには一人一人に役割がある。自分の役割を果たすことを考える選手と、一人一人の役割を考える指揮官。少年団でポジションが決まる子たちもいる。どんな才能があるのか、なにが得意でなにが苦手か、それをどう活かすか。そして、どう伸ばすか。コーチと言えど、指導者としてその責任の一部を任された。そして改めて、誰かの苦手なものを他のみんなが補って、チームで戦うそのスポーツが好きになった。


サッカー経験者なら、先程の言葉で(誰)に合わせるかを考える。ラインは主にディフェンスラインを指して、ピッチ上では常に、ディフェンダーと相手フォワードの間でオフサイドラインの駆け引きがされている。それにより、自チームの攻守のバランスが決まり、ひいては敵チームの攻守バランスにも影響する。

「線を揃える?」

どこかで(ライン)は(線)に翻訳されたらしい。十中八九、2人ともサッカーは知らないだろう。まぁ、当然伝わっていない。そこで出来るだけ簡単な伝え方を考える。当然、オフサイドのルール説明なんて必要ない。この指示の意図は、3人が直線上に並ぶことで攻撃方向が揃い背後を取られ難くすることにあった。一緒に戦っている男に

「彼女の少し前まで下がりましょう」

と声を掛け少しずつ下がる。男も合わせるように下がる。ケモノのなかに、自分たちを回り込むヤツや、戦闘を抜けて村に入っていくヤツはいない。

「このまま2人で壁になります。」

サッカーと違い、ゴールではなく人を目掛けて攻撃してくる。スペースを使われる心配はない。

「私と武器が当たらない程度に近づいて、振り回さないで!」

「お嬢さんはそのまま、一匹に決めて球を投げて。そっちには向かわせません。」

結果として、直線ではなく三角形になったがうまく前衛と後衛の形ができた。このままいけば応援がくるまで耐えるのは難しくないだろう。

「防具がないから、噛まれたら終わりだぞ!」

隣で戦う男が言った言葉を疑う。確かすでに数ヶ所噛まれていたが、彼が冗談を言っているようには見えない。なにか病気にでも感染するのだろうか。

「噛まれたら?」

男に尋ねる。

「痛みで気を失うか、保ててもとても戦えなくなる」

やはり彼の言うことはおかしい。全然、戦えている。そうこうしているうちに、村から新しい3人が弓を持って応援に来た。すでにケモノは娘が一匹、男が二匹倒していた。3人が放つ矢は、それぞれ火、氷、石の矢になってケモノを襲う。人が数で逆転すると、さすがにケモノたちも森に引き返していった。驚いたのは、逃げるケモノを斬撃の一撃で倒してしまったことだ。確か最後のヤツにはほとんどダメージが入っていなかったはず。まだ分からないことが多いが、この後半戦は見事にチーム力で圧倒した。


これは「サッカー少年団の高校生コーチが、異世界転移して最高のギルドを作る」話だ。


1話目、読んでいただきありがとうございます。

次回以降、キャラクターの名前を出して書く予定です。応援よろしくお願いします。

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