表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/10

クソみたいな人生からの解放

「アルト、悪いが今日でクビだ。……いや、パーティから『追放』と言ったほうが分かりやすいか?」

 冒険者ギルドの最高級個室。

 豪華な革張りのソファに深く腰掛けた勇者・ゼクスが、俺の顔に数枚の硬貨を投げつけた。

 チャリン、と虚しい音を立てて床に転がったのは、わずかな手切れ金。

「理由は分かっているな? お前は器用貧乏なだけの『万能職』だ。攻撃魔法も回復魔法も中途半端。俺たちSランクパーティに、平凡な人間は必要ないんだよ」

「……俺がやっていた、魔力の供給バフと魔法の軌道修正はどうするんだ? あれがないと、ゼクスの大魔法は命中率が三割を切るはずだが」

 俺が淡々と問い返すと、ゼクスは鼻で笑った。

「ハッ! あんなの気休めだろう。俺の実力があれば、お前の小細工なんてなくてもどうにでもなる。これからは『本物の魔導師』を雇うことにしたんだ」

 背後に控えていた他の仲間たち——剣聖のマイアも、聖女のクラリスも、申し訳なさそうな顔ひとつせず俺を見下している。

「分かった。……今まで世話になったな」

 俺は床の硬貨を拾うことなく、席を立った。

 本当は言いたいことが山ほどあった。

 俺のスキル『自動最適化』が、彼らの荒ぶる魔力を裏でミリ単位で調整し、暴発を防いでいたこと。

 俺がパーティを離れれば、彼らの装備も魔法も、本来の「粗悪な出力」に戻ってしまうこと。

 だが、もういい。

 毎日「給料泥棒」と罵られながら、仲間の機嫌を取るために魔力を使い果たす生活には、もう疲れた。

(……ようやく、自分のために魔法を使えるな)

 ギルドの扉を押し開けると、外には抜けるような青空が広がっていた。

 とりあえず、人里離れた森でゆっくり野宿でもしよう。

 そう決めた俺は、指先で少しだけ空間を叩いた。

『——自動最適化:発動。目的、目的地までの【最短・最速・最高効率】の移動ルート構築』

 その瞬間、足元に現れたのは、本来なら伝説の賢者しか使えないはずの「神速転移」の魔法陣だった。

「……あ、少し出力を上げすぎたか。まあ、いいか」

 俺の体が光に包まれ、驚愕するギルドの冒険者たちの前から、一瞬で姿を消した。

 これが、後に世界を揺るがす「真の賢者」による、気ままなスローライフの始まりだとは、この時の俺はまだ知る由もなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ