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After School Detective Club

作者: マーたん

満開小学校には、昔から語り継がれる不思議な噂があった。


それは「幻の5年生」と呼ばれる、誰もが一度は目にしたはずの姿。


しかし、その存在を見た者は必ず記憶から消え、まるで幻のように消えてしまうという。


さくら、蓮、詩織の3人は、好奇心と探究心に溢れた探偵倶楽部のメンバー。


彼らはこの謎に挑み、真実を明らかにしようと決意する。


果たして、幻の5年生とは何者なのか。


その秘密に触れるとき、彼らの友情も試されることになる――。


満開小学校の静かな教室に、また新たな冒険が始まろうとしていた。


5年生の噂


夏休みが近づくある日の放課後、満開小学校の図書館には、いつもより静かな空気が流れていた。


4年3組のさくら、蓮、詩織の三人は、次の探偵倶楽部の活動のために資料を探していた。


「ねえ、これ見て!」

詩織が埃をかぶった古い冊子をテーブルに置く。


それは満開小学校の昔の記録や伝承が綴られたもので、中には不思議な言葉が書かれていた。


『満開小学校には、時折“幻の5年生”が現れる――』


さくらが目を丸くして訊ねた。

「幻の5年生って、なに?」


蓮は冊子の文字を指でなぞりながら答えた。

「昔から言い伝えられている話だ。ある時、学校に姿を見せる5年生がいるらしいけど、目撃した人はその存在をすぐに忘れてしまうんだって」


「幽霊みたいなもの?」詩織は少し怖そうに言った。


「でも、ぼくたち探偵倶楽部がいるんだから、謎の真相を解明できるはずだ」

蓮は目を輝かせた。


三人は冊子を読み進めながら、学校中で語り継がれる“幻の5年生”の噂について調べ始めた。


すると、こんな記述があった。


『幻の5年生は、昼休みの図書室や校庭の裏門付近で姿を現すという目撃証言が多い。だが、見た者はその記憶を失い、まるで存在しなかったかのようになる。』


さくらは少し不安そうに言った。

「でも、そんな子が本当にいるのかな…?」


詩織は力強く答えた。

「いるかどうかはわからないけど、私たちが確かめないと!」


蓮も頷き、三人の決意は固まった。


「よし、まずは目撃者を探して話を聞こう」


こうして、満開小学校探偵倶楽部の新たな謎解きが始まったのだった。



目撃者の証言


翌日、探偵倶楽部のさくら、蓮、詩織は学校内で幻の5年生の目撃情報を集めることにした。


「最初は図書室近くから聞いてみよう」

詩織が提案すると、三人は昼休みに図書室へ向かった。


図書室には、5年生の翔太が本を読んでいた。

「翔太くん、ちょっといい?」

さくらが声をかける。


翔太は驚いた顔で顔を上げた。

「うん、どうしたの?」


「最近、図書室の近くで誰かが歩いているのを見たって話を聞いたんだけど…何か知ってる?」

蓮が聞くと、翔太は少し戸惑いながらも答えた。


「実はある日、昼休みの時に図書室の前を通ったら、誰かが急に通り過ぎたんだ。

でも振り返ったら、誰もいなくて…なんだか変な感じだったよ」


「その人、どんな人だった?」

詩織が興味深げに訊ねる。


「うーん、はっきりは覚えてないけど、なんとなく5年生っぽかった気がする。

でも、あんまりはっきり見えなかったんだ」


「それってまさに“幻の5年生”みたいだね!」

さくらが目を輝かせた。


次に三人は校庭の裏門付近へ向かい、そこで遊んでいた3年生の子たちにも話を聞いた。


「こっちも不思議な影を見たって言ってる子がいるんだ」

蓮が言いながら、数人の子供たちに話を聞く。


「夕方、遊んでたら校門の近くに黒い影が見えたの」

3年生の女の子が話す。


「でも近づいたら消えちゃったんだ」


「誰も知らない5年生の子かもしれないよね?」

詩織が微笑む。


情報はまだ断片的だが、確かに“幻の5年生”らしき存在が周囲にいることが浮かび上がってきた。


三人はさらに証言を集め、謎の核心に迫る決意を新たにした。



待ち伏せと遭遇


昼休みの図書室近く。


さくら、蓮、詩織は慎重に周囲を見渡しながら待ち伏せを始めていた。


「今日は絶対に幻の5年生を見つけるんだ」

蓮が静かに言う。


3人は息を潜めてじっと待つ。


時間が経ち、周囲の声も少しずつ遠ざかっていく。


そのとき、薄暗い廊下の角から、ゆっくりと誰かの影が現れた。


「来た…!」詩織がささやく。


影は静かに歩みを進め、姿が徐々に見えてくる。


その人物は、見知らぬ5年生の女の子だった。


「…え?」さくらは驚きを隠せない。


女の子は目を伏せ、小さくつぶやいた。


「ごめんなさい…驚かせて」


三人はそっと近づき、声をかけた。


「あなたは…?」蓮が優しく尋ねる。


女の子はしばらく黙っていたが、やがて口を開いた。


「私は真希。最近この学校に転校してきたの。みんなと仲良くなりたいけど、まだ怖くて話せなくて…」


「だから、誰にも気づかれないように隠れていたんだね」

詩織が微笑んだ。


しかし、三人は彼女の存在が“幻”と呼ばれる理由が、それだけではないことを感じていた。


真希には何か秘密がある。


そう確信しながら、探偵倶楽部はこれからの調査にさらに熱が入った。



真希の秘密


真希は薄暗い図書室の隅で、小さく震えていた。


「どうしてそんなに隠れていたの?」

さくらが優しく尋ねると、真希は小さな声で答えた。


「みんなに怖がられたり、変な噂を立てられたりするのが怖かったの。

それに、私、存在がだんだん薄くなっていくみたいで…」


「存在が薄くなる?」蓮が眉をひそめる。


真希はうつむいたまま話を続けた。


「学校の図書館にある、古い本に書かれている“呪い”のせいで、私はここにいるはずなのに、誰にも気づかれにくいの。

話しかけられても、みんな私のことをすぐに忘れてしまうの」


詩織は驚きのあまり声を失った。


「そんなことが…本当にあるの?」


「私も信じられなかったけど、確かに何度もそうなった。

だから、私は自分のことを“幻の5年生”だと思っている」


蓮は深く考え込みながら言った。


「よし、僕たちがその呪いを解いてみせる。真希、君は一人じゃないよ」


さくらと詩織も力強く頷いた。


探偵倶楽部は、真希の秘密の呪いの真相を探るため、学校の古い歴史や伝承を調べる決意を固めた。



学校の呪いを解く旅


翌日、探偵倶楽部の3人は、真希の呪いを解く手がかりを求めて、学校の歴史を紐解くことにした。


「まずはこの図書館の古い資料を全部調べてみよう」

詩織が決意を込めて言う。


さくらは資料の山を整理しながら言った。

「呪いの原因がわかれば、きっと真希ちゃんも普通に過ごせるようになるはず!」


蓮は慎重に古文書を読み解く。

「満開小学校の敷地には、昔、争いごとがあってな…。その時代の祠が今もどこかに残っているらしい」


3人はその祠の場所を探すため、校舎の裏庭や周辺の森へ足を運んだ。


やがて、苔むした小さな祠を見つける。


「ここが呪いの発端かもしれない」

蓮がそう言って祠の周りを調べる。


詩織は祠の中に手を入れ、小さな巻物を見つけた。


「これは封印の文書みたい。中に呪いを解く方法が書いてあるかも」


さくらが興奮気味に言った。

「でも、読むのは慎重にしないとね」


三人は祠の封印を解く方法を探しながら、呪いの謎を解く冒険を続けることを決めた。


新しい仲間と未来へ


祠の巻物に記された封印の解除方法は、仲間同士の強い絆と、心からの願いが必要だった。


さくら、蓮、詩織は、真希の手をしっかり握りしめて言った。

「真希、僕たちは君のことを忘れない。君は大切な仲間だよ」


静かに祈りの言葉を唱えながら、3人は強い友情の力を込めた。


すると、祠から柔らかな光が溢れ、空気が澄んでいくのを感じた。


真希の体がふわりと輝き、その存在感がはっきりと増していく。


「わあ…これで、私の存在がみんなにちゃんと届くんだね!」

真希は涙を浮かべ、笑顔を見せた。


翌日、真希は堂々とクラスに溶け込み、さくらたち探偵倶楽部の新しい一員となった。


「もう、誰も“幻の5年生”なんて呼ばせない!」

さくらは誇らしげに言った。


こうして、満開小学校の謎は解き明かされ、友情が新たな絆を紡いだのだった。


番外編 真希と放課後の秘密基地


真希が探偵倶楽部の仲間になってから数週間が経ったある放課後のことだった。


いつものように、さくら、蓮、詩織と一緒に学校の廊下を歩いていると、真希がぽつりと口を開いた。


「ねえ、みんなに見せたい場所があるんだ」


「見せたい場所?」詩織が興味津々で尋ねる。


「うん。私だけの秘密基地なんだ」


三人は目を合わせ、わくわくしながら真希の後をついていった。


校舎の裏手にある古い倉庫の扉の前で、真希は小さな鍵を取り出した。


「ここ、誰も知らないんだよ」


扉を開けると、中は意外にもきれいで、木製の机と椅子が並べられ、本棚にはマンガや雑誌、そして手作りのノートや文房具が整然と置かれていた。


「わあ…すごい!」さくらが目を輝かせる。


「ここなら誰にも邪魔されずに、ゆっくり考え事ができるよ」


蓮も感心して頷いた。


「これからはここを僕たちの作戦基地にしよう!」


3人は賛成し、秘密基地は探偵倶楽部の新たな拠点となった。


その日から、毎放課後、4人はここに集まって新しい謎解きの作戦を練った。


真希は徐々に自信を取り戻し、仲間との絆も深まっていった。


ある日、詩織がふと尋ねた。


「真希ちゃん、この秘密基地を作ったのはいつ?」


「学校に転校してきた日の夜、一人で来てみたんだ。寂しくて、ここだけは私の場所にしたかった」


「そんな場所を教えてくれてありがとう」


さくらが優しく微笑んだ。


「私たちも、真希の秘密基地を大切にするね」


秘密基地は、ただの隠れ家ではなく、4人の友情の証となった。


そして、彼らの冒険はまだまだ続いていく。



終わり。





友情があれば、どんな謎も解ける。

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― 新着の感想 ―
後半にかけて、感じられる暖かな表現が良かったです
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