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エピローグ的なもの

ここはどこなんだろう。多分、この世とあの世の境なのだろう。

そこにはイワナガ姫と朝顔ちゃんが倒れている。

タケヒビみたいな男がいて何か呪文を唱えた。

すると、灰色の煙がそれぞれの体からモヤモヤと湧き出てきた。

「なんてピュアな負の感情なんだろう。」

少しの感嘆を含んだ声で独り言のように言った男は懐からガラスの瓶を出し、その灰色の煙を瓶の中に全て吸い込んでしまった。

「この子達にはもうこの負の感情は必要ないからね。」

彼はそのまま立ち去ってしまった。


♢♢♢


チュンチュン、ピーヒョロロ

何だろう、鳥の声が聞こえる。

「ピチャッ」

顔に水が掛かっている。

俺が目を開けると森の中で葉っぱから露が落ちてきたところだった。

「うーん」

起き上がって伸びをしてみるとどうやら富士山の見覚えのある森の中だった。

周りを見渡すとそこかしこにみんなが寝転んでいる。

「朝顔もいるじゃない。あ、イワナガちゃんもいるぞ。」

取り敢えず、ルシーダを起こしてみた。

「あ、うーん。あら、勝太郎じゃない。」

ルシーダと手分けしてみんなを起こして回る。

魔力を使い尽くしていた清子も復活している様子だった。

驚いたことに弟磯城も居た。

流石にあれは夢ではなかったということか。


みんなが起きてから状況の把握をしてみた。

イワナガちゃんは行方不明になってからの記憶を全部失っていた。俺や健斗については全く記憶にないというけれど、朝顔ちゃんについては何だか親密さが残っているようである。

朝顔ちゃんはイワナガちゃんに拉致されるまでの記憶は残っていたようである。

ルシーダは朝顔ちゃんを自分の侍女として召し抱えると言う。

朝顔ちゃんはその記憶はあったらしくて「よろしくお願いします」とルシーダに最敬礼した。

ルシーダがいうには、エルフ族は繁殖力が弱いので、子供ができるまで下手したら100年くらいかかるというのである。

ルシーダによるとエルフ族はポコポコと子供を産む獣人とは違うのだということである。

エルフ同士の結婚ならそれでも問題ないが俺は人間である。100年も待っていたら人間の寿命は尽きてしまう。そのため、一般には人間とエルフが結婚する時には側室を持って子孫が絶えないようにする風習があるそうである。

それでルシーダは朝顔をその側室候補に考えていたようである。でも、ルシーダにしてみれば、俺と朝顔がくっついて自分が捨てられることに不安があった。けれども、俺が朝顔よりルシーダを選んだということが大きな決め手になったみたいである。

俺がおどけて「じゃあキスしていい?」ってルシーダにいうとふざけんなって言われたけれど。

ルシーダは朝顔に「あなたはあまりにも礼儀作法がなっていないし常識がないので自分がきちんと教育する必要がある」というのである。

朝顔は俺と離れなくていいのならそれが幸せということでルシーダの申し出を受けるつもりみたいだ。

どうやら朝顔は俺たちの生活に入ってくるようである。

考えてみれば朝顔は異世界から来た子ということになるので現代日本には戸籍はない。そうであればエルフの眷属というのは現代の社会にうまく馴染む方法であるのかもしれない。


咲耶は弟磯城を抱きしめて、自分の親族として高校に編入させると鼻息が荒い。

えっ?あの男嫌いの咲耶が?って驚いたが、咲耶に聞いてみたところ、どうやら一目惚れらしい。彼女によると弟磯城は理想の彼氏であって運命の人らしい。

咲耶にアプローチされた弟磯城の方も満更ではなさそうである。

こうなったら何か言ったら馬に蹴られる話かもしれないので俺もルシーダも微笑するだけにしている。あの男嫌いの咲耶にも幸せが来そうでめでたいことである。


もう一人、タケヒビは何故か鈴木くんの尻を追いかけるようになってしまった。

彼によると、鈴木くんの魂は弟橘姫なので彼は女性の魂が男性の体に入った変性男子だから自分はド・ストレートであると俺に力説してくる。

いや、その話は鈴木くんにするべき話だと思う。


鈴木くんはいくら自分の魂が女性であったとしても今は男なんだから男性と付き合うことはできないと何度も断っているみたいだけれど、タケヒビには全く通じていないようである。

俺は鈴木くんには「タケヒビを京都に連れて帰ったらまあ冷却期間になるはずだから」と言っているけれど、タケヒビは「京都に帰っても縮地方を使って会いにくるからね。」と言っているらしい。まあ、タケヒビは神様だからなあ。色々と規格外なのは仕方がない。


富士乃下高校に戻ってみると、すでに二週間が経過しており、合同合宿は最終日になっていた。

俺たちの行方不明の間も捜索届けは出されていなかったみたいである。富士乃下高校の校長にはいうだけ無駄だと思うが、うちの引率が何もしなかったのは何故だったのか。

俺は引率の早川先生に何故何もせず待っていたのか聞きに行った。


「そんなの魔王様と勇者と神様がいるのに私たちごときが手を出せるわけないじゃない。」

早川先生はあっさり言った。

「結果的に無事に帰ってきたしね。カカセオの陰謀を打ち砕いたのは流石だわ。」

「え?カカセオ?それって誰?」

「あら?あなた方、無自覚に解決しちゃったのね。おほほ。さあ、帰りますからお土産を買いに行かなくっちゃね。」

早川先生はあからさまに誤魔化して逃げていってしまった。


今回は俺たちは解決していないものね。

解決したのはイワナガ姫である。

多分俺たちを元の世界に送り返した爆発はそのカカセオという奴とイワナガ姫の激突だったんだろうと思う。

あの後、カカセオや星の精がこちらに来ていないということはイワナガ姫が勝ったんだということなんだろう。

岩永さんの記憶が失われたことはある意味その代償だったのだろうと思う。


けれどもなぜそのことを早川先生が知っているのかは謎である。


俺に限って言えば聖剣をコントロールできたというのは大きな自信になった。メテオとブリザードという上級魔法のコンボでも倒せなかった星の精を聖剣は後も簡単に切り捨てることができたのである。


その後、清子に聞くと、咲耶と弟磯城との交際は順調に進んでいるということである。岩永さんも夏休みの間にイケメン彼氏をゲットしたということらしい。鈴木くんは縮地方でタケヒビが何度か行っているみたいで、ちょっと大変みたいである。もっとも、タケヒビは無理やり迫ったり暴力を用いるわけではないのでまあ、鬼ごっこをやっているだけとも言える。


朝顔はルシーダと一緒に過ごすことになった。

朝から晩までしごかれまくっている様子である。何だか、頭に本を載せて歩かされたり、ご挨拶の仕方やカーテシーの仕方、読み書きそろばんなど多岐にわたって教わっているようである。

いつも顔色を青くしながら厳しい指導に耐えている様子である。

ある時は本当に倒れそうな顔をしていたので思わず朝顔の頭を撫で撫でしてしまった。

朝顔は俺の方に体重を預けてきた。瞼はもう垂れ下がってきている。

あ、眠ったら転んじゃうからどうしようと思っていたらルシーダが現れた。

「朝顔さん、さあやりますよ。そこでサボっている暇はありません。」

「おい、ルシーダ。朝顔、もう倒れそうじゃないじゃないか。」

「いえ、朝顔は水準以上にきちんとできるようにならなければなりません。さもないと落伍者です。」

「やりすぎじゃないか?」

「勝太郎様、朝顔は頑張ります。」

そう言ってフラフラの朝顔はルシーダについてゆくのだった。

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