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決戦(2)

弟磯城の案内で俺たちは試練の洞窟に向かっていファイアで焼ければいいけれど、もし数多かったらもっと広範囲に魔法をかけるべきじゃないだろうか。」

「そうね。一撃で倒せないと突進して来られるから二撃目は撃てないかもしれないわね。」

「となるとやはり広範囲呪文としてはメテオか。あれなら効果範囲は広いぞ。」

「洞窟の中で使うと洞窟の天井から流星が落っこちてくるからシュールよね。でも、メテオを使うならこちらもブリザードを使うしかないかもしれないわ。」

「打ち込む場所に気をつけないとこっちにバックファイアが飛んでくるかもしれない。」

「そこは聖女の結界と瑠美ちゃんの破邪パワーで相殺してもらうしかないかもね。」

「うん。洞窟だとパワーが逃げる場所が2箇所しかないから注意しないと味方に被害が出かねないよ。」

ルシーダは美しいカーテシーをして「お任せください、健斗様」と言う。隣で錫杖を鳴らしながら瑠美ちゃんも「大丈夫ですよ、任せて。」って胸を張っている。ルシーダも瑠美ちゃんもお行儀が良い。

そんなこんなで次第に遠くに洞穴が見えてきた。

見る限りは自然にできた洞窟のようだ。


「ここからは長髄彦に見つからないように大声や大きな物音は避けてくださいね。」

弟磯城がみんなに注意した。

幸い、洞窟の外には見張りのようなものはいない。

ゾロゾロと洞窟の入り口に近づくと、人が5〜6人ほど横並びに歩けるくらいの大きさだった。恐らく、踏みならされているようで地面の凸凹も少なそうである。

洞窟の中に入ってみると、曇っていたとはいえ、明るいところから急に暗いところに入ったので最初は目が慣れなかったが、慣れてくると結構壁が光っていることに気がついた。

「ヒカリゴケっていうんでしょうかね。壁が光っているので松明はなくても大丈夫なんですよ。」と弟磯城は言う。

この奥に広まっているところがあって、その大広間みたいなところに長髄彦とその手下たちがいることが多いらしい。

「大広間か。」

「やはりメテオとブリザードの合わせ技がいいかもしれないわね。」

健斗と清子はお互いに頷き合っている。

隊列は俺とタケヒビが先頭を歩いて警戒し、しんがりは鈴木くんがやってくれることになった。

弟磯城によると通路に罠はないらしい。

「だって普段ボクたちが使っている通路ですよ。そこに罠を仕掛ける意味ってないですよね。」

ごもっともである。

ということで俺たちは淡々と洞窟の奥に進んでゆくことになった。

5分ほど歩くが幸いにも敵との遭遇はない。

「まさか長髄彦はどこかに行ってしまったのかな?」

「そんなはずはないと思いますが。でもそろそろ大広間ですよ。」

弟磯城が答えてくれる。

高さ2m以上ありそうな大きな観音開きの扉が奥にある。

「この扉の先が大広間です。」

この奥に進むには扉を開けざるを得ない。俺とタケヒビが扉の両側をグッと力を込めて押すと鍵はかかっていなかったらしく、重い音を立てて扉はゆっくりと開いた。

通路と違って中は真っ暗である。

弟磯城は「おかしいな、大広間はいつも魔法で灯りがついているんですけれど。」と首を捻っている。

と、その時、部屋の奥の方にパッと明かりが灯って一人の男が立っているのが見えた。逆光なので顔はよくわからない。ただ筋骨隆々としているのはわかる。細マッチョというよりやはり筋肉ダルマだろう。

「ははは、よく来たな。兄磯城を一撃で葬り去ったそうじゃないか。だが、この長髄彦様はそう簡単にはいかないぞ。」

自分で長髄彦と言ったのだから自己紹介なのだろう。

俺たちはまだ大広間には入っていない。

「どうする?」

健斗は苦々しそうな声で「あのエビ野郎はいなさそうだな。」と囁く。

清子も「兄磯城との戦いでこちらの手の内がバレちゃったかな。」とため息をつきそうである。

長髄彦は俺たちの話を聞いていないかのように高笑いして言った。

「貴様ら臆病者ならば今すぐ回れ右して帰れ。逃げる臆病者には命までとりはしないさ。」

わかりやすい挑発である。


健斗は「にゃにおう!」といきなり飛び出しそうだったので羽交い締めにして押さえつけた。

「バカ。お前が出ていってどうする。お前は切り札なんだからまずは俺とタケヒビが行く。」

俺は清子に健斗が暴走しないように抑えておくように言って、タケヒビと目配せをすると、2人で前に出た。

長髄彦の手下たちはどこかに書かれているのかもしれなかったが、とにかく今の所は影も形も見えなかった。


俺はタケヒビに目で合図すると二人で長髄彦に向かった。

俺は長髄彦の右側に、タケヒビは左側である。

辺りにはエビの怪物の姿は見えないが気配はビンビンに感じる。恐らく隠れているのだろう。

長髄彦は「弱虫どものくせによくぞかかってきた。俺の刀の錆にしてやろう。」と言って俺たちに切り掛かってきた。

長髄彦は台のような場所に立っており、そこから動く気はない様子だった。

俺たちが左右から切り掛かってゆくと、彼は左腕に盾を現出させ、タケヒビの打ち込みを防いだ。

「貴様らの鈍刀などに負けるわけではないがな。」と長髄彦は笑いながら言う。

実際、俺が両手で振った渾身の打ち込みを長髄彦は片手持ちの刀で軽々と弾くのである。

タケヒビの方も同じようで、息を合わせて2人で打ち込んだ攻撃もあっさりと弾き返されてしまった。

どうしよう。これはまずい。俺たちは長髄彦を台から転げ落とすどころかただの一歩も動かせていないのである。

そのとき後ろから「勝太郎さん、しっかり!」という声がかかった。ルシーダである。

「勝太郎さんには聖女の祝福を!」とルシーダがいうと彼女の手からキラキラしたものが俺の方に飛んできた。そのキラキラしたものを浴びた俺は体の内側から力が湧き上がってきたのを感じた。体もよく動く気がする。

「タケヒビさんには破邪の祝福よ!」と言ったのは瑠美ちゃんである。

瑠美ちゃんの錫杖から光が発せられ、タケヒビを包み込んだ。

光が消えるとタケヒビが「おおう、体が軽い。」と言いながらさっと立ち上がった。

俺はルシーダに手を振った。

「やるか!」「おう!」

俺たちはさっきより力強く、素早く打ち込みを始めた。

長髄彦に致命傷を与えることはできなかったが、長髄彦は俺たちの勢いに一歩後ろに下がったのである。

「チィッ!」

思い切り舌打ちした長髄彦は「制限解除!」と叫ぶと手足を広げた。彼の全身から輝きを発した。

「うおっ。」

俺は無意識のうちにその輝きから目を逸らした。

輝きが収まると長髄彦は普通の腕の下にもう一体の腕を生やしていた。

「ワハハ、どうだ。これには勝てまい。」

長髄彦は二本の剣と二枚の盾を器用に扱って俺とタケヒビに迫ってきた。俺の攻撃は盾に受け止められ、その上で剣で攻撃される。

なんとか飛び退いて剣の攻撃を避けるが、明らかに形勢が逆転してしまった。タケヒビも劣勢に追い込まれている。

「わははは。俺に制限解除させたのはお前らが初めてだ。そこは褒めてやる。だが、これで終わりだ。覚悟せよ。」

長髄彦は必勝の笑みを浮かべて台を降りると俺たちの方に迫ってきた。

その時、ビシッという音がして長髄彦の盾に矢が突き刺さっていた。

咲耶が矢を射たようだ。

「小癪なり。飛び道具とは卑怯であろう。」

咲耶は「そんなの腕が四本もあるのこそ卑怯でしょう!」と怒鳴り返した。

「くっ。ではまず貴様らから血祭りにあげてやる。」長髄彦は俺たちを無視して後ろの弓矢隊の方に向かおうとした。

「待てや。お前の相手はこっちだろう。」俺は素早く立ち上がると長髄彦の首に刀を突きつけた。

長髄彦はこちらを見ることなく、その腕がスルスルと伸びて俺の刀を打ち払った。そのまま俺の脳天目掛けて刀を振り下ろしてくる。俺は長髄彦の一撃を転がって避けると長髄彦の背中に向けて一撃を振り下ろす。その一撃はあっさりと長髄彦の刀に受け止められてしまったけれど。タケヒビも起き上がって俺と同じように攻撃を再開した。

相変わらず有効打は与えられないが長髄彦の足は止まった。

射撃の数は明らかに増えているので昨夜だけでなく清子や他の射手が打ち方開始したのであろう。

俺とタケヒビの打ち込みには二本の剣を使い、弓矢の攻撃に対しては目まぐるしく盾を動かして対応している。

再びの膠着状態になった。


結構戦闘が長くなってきているので疲労がたまってきている。まだ息が上がったりはしないけれども。弓矢部隊も村を出る時に大量の矢は補充したとはいえ、これだけ使ったら随分残量は減ってきているだろう。


その時、健斗が「これならどうだ!ファイアジャベリン強化版!」と言って呪文を唱えた。

それはランスじゃないかというような二本の巨大なジャベリンが健斗の手から出現し、俺たちの方に向かって飛んできた。俺とタケヒビが必死で身を躱した先には長髄彦の刀がある。

そのランスのようなジャベリンは長髄彦の刀に過たず命中してボキッという大きな音を残して刀を真っ二つに両断してしまった。


長髄彦だけでなく目前で刀が折れるのを見た俺とタケヒビも呆然とそれを見ていた。


我に返った俺は素早く刀を長髄彦の胸元に突き刺そうとした。ところが、カキンと乾いた音を立てて俺の刀は弾かれてしまった。長髄彦の体には何の傷もない。


「頃はよし。ホロゴンども出てこい。侵入者どもを血祭りにあげよ。」

長髄彦がそういうと、あちこちからあのエビの怪物、ホロゴンが実体化し始めた。それも十匹や二十匹ではない。大広間中に満ちているので少なくとも数百匹はいるだろう。千匹を超えていても何の不思議もない。

「ヒェッ!タケヒビ、これは逃げよう。」

俺たちはまだ実体化しきっていないホロゴンたちの間を縫って、もしくは実体化したホロゴンの頭の上を転がるようにして逃げ戻った。

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