表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/71

新しいパーティ

俺が健斗にパーティについて頼むと健斗は「いいんじゃない?」とあっさり承諾してくれた。

ルシーダが健斗に「もうちょっと聞くこともあるんじゃないの?」と食ってかかっているが健斗は「はあ?師匠が俺たちに託したのならそれ以上何もないよ。大体勝太郎だって中に入っていないなら聞くだけ無駄じゃん。」と言うものだからルシーダはそれ以上何も言えなくなってプルプル震えている。

「健斗、すまん。」

俺はそう言ってルシーダの肩を優しく抱きしめた。

「勝太郎…」

ルシーダはうるうるした目で俺を見上げてきた。

「ルシーダ、俺のためにありがとう。」

いや、我ながらクサいセリフだと思うよ。けれども俺には他にどう言えばいいのかわからない。

キャシーは俺のそばにきて「二人の世界に浸っているところに悪いんだけれど、私たちも参加するからね。」と言う。

「あ、ああ」

俺とルシーダは見られていたことに気がついて思わずパッと離れてしまった。

「ハリウッド映画ではヒーローとヒロインがキスするのは最後って決まっているからね。」

キャシーは俺たちにウインクすると行ってしまった。

ルシーダは茹で上がったように真っ赤な顔をしている。俺も顔が熱い。


向こうではローラが「私も健斗とダンジョンに行ってキスするー」と言っているが、そばにいた侍女さんに「ローラ姫、お腹に大事なお子様がいらっしゃることをお忘れなきように。」とたしなめられている。ローラ姫のわがままは通常運転である。

健斗もローラのそばに行って「な、ダンジョンから帰ってきたら真っ先にキスするから、大人しく待っていて。」なんて言っている。

俺たちもバカップルなんだが、向こうは数段上ではないかと思う。

ちょっと健斗とローラ姫のやりとりを見つめてしまっていたら、二人の女子が近づいてきた。清子と瑠美ちゃんである。

清子は一人っ子なのであるが、もう瑠美ちゃんを妹分のように従えている。どちらも健斗の嫁志願者である。

二人とも健斗とローラ姫のことは目に入れていないようで、むしろキラキラした目で瑠美ちゃんが「お父様に私もダンジョン探索に行っていいと言われました。私も連れて行ってください。」と言ってくる。

師匠の相馬先生がOKしているのに俺が断る理由もない。

俺が頷くと瑠美ちゃんの後ろから清子も顔を出して「私も行きますからね。」と言う。


清子にも頷いたが、俺は清子がローラ姫と健斗を放置している理由がよくわからない。ローラ姫が妊娠するまでは清子とローラ姫はお互い正妻の座を争っていがみ合っていたである。


俺は何も言わなかったがルシーダは清子に「あれは大丈夫なの?」と聞いている。

もちろん、ルシーダが見ている方向にはローラ姫と健斗の姿がある。ローラは健斗とイチャイチャしている。


「あっ、あー、あの、まーね。」

清子は歯切れが悪そうである。

「ローラにも元気な子を産んでもらわなきゃってことよ。」

清子は押し出すように声を出したあと、瑠美ちゃんに向かって「さあ、ダンジョンアタックの準備に行きましょう。」と言うと、連れ立って向こうに行ってしまった。

(これで誤魔化せたはず。)


清子はルシーダの方を見ようともせずに逃げるように部屋を出て行くことにしたのである。

本当はローラにははらわたが煮えくり返っている。本来ならば健斗をローラから奪い去ってしまいたい。けれども健斗自身に清子と夫婦生活を送るのは高校卒業後だと釘を刺されてしまっている。

祝言も初夜も済ませたのに、ローラはすでに妊娠しているのに、自分だけは置いてけぼりを喰らっているのである。けれどもそんなことを言うわけにはいかない。私にだってプライドはある。それに、教室ではクラスメートが聞いていないとも限らない。そんなところで秘密を話すわけにはいかない。



俺とルシーダは呆気に取られていたが俺が「じゃあ俺たちも準備するか。」と言うと、ルシーダも「そうね。」と言うのでもう教室から出てゆくことにした。


♢♢♢


翌朝、俺がルシーダと朝食を食べているとキャシーがやってきた。

「もうヴィークルは来ているから行きましょう。」

「はあ。」

少し急いで朝食を食べ終えて部屋に戻ると、俺は探索用の装備を身につけた。本当は聖剣を抜きたいが、コントロールできない可能性を考えると他の剣を使わざるを得ない。

今はkatana of generalを使っている。防具も装着して寮から出てくると、ルシーダと清子が出てくるのに落ち合った。三人で校門まで来ると、キャシーが早くおいでと手を振っている。


そこにはでかいアメ車のSUVが止まっていた。

運転しているのは明らかに軍服をきた若い米国人らしい男である。

どうやら舞鶴の海岸沿いには在日米軍の小さな基地があり、そこの所属の車を持ってきたらしい。キャシーは「早く乗って。」と俺たちを促した。

4人が乗った車は健斗の家に向かって走り始めた。


健斗の家の前には健斗と瑠美ちゃんがすでに待っていた。ローラもいる。

俺が窓を開けて手を振るとローラが気が付いたようで手を振りかえしてくれた。


車が止まると早速健斗と瑠美の二人が乗り込んできた。車は7人乗りなので定員一杯である。

「気をつけて!」と言うローラの声を後に車はさっさと動き出した。


健斗と俺と清子の防具は色違いで同じもので、大蛇や様々な魔獣の皮で作られている。金属部分が少ないので軽くて動きやすい。

ルシーダの防具はミスリルチェーンである。見えないように服の内側に着込んでいるようである。

キャシーは一見米軍の迷彩服の軍服のような服装である。材質はよくわからないが、おそらく見た目以上の機能があるのだろう。

瑠美はまさに修験者である。錫杖も持っていて本格的である。法螺貝なんかを吹いてしまいそうである。


車は隣町に向かった。福知山から山に入ったところに元伊勢の神社はある。


川沿いの道はいつしか山道になる。宮津に抜ける鉄道と川に挟まれた道をでかいアメ車で登ってゆく。

GPSで位置をチェックしていたキャシーが「この辺りね。」と言って車を止めさせた。

車を降りると神域らしい清々しい空気である。

「上から見る地形と地上から見る地形は見え方が違うねえ。」

俺がそういうと、健斗も「そうだなあ。多分、昔師匠とこの辺りも来たはずだと思うんだけれど。」と首を捻りながら荷物を下ろしている。

運転手の米兵はマイケル上等兵というらしいが、キャシーに「ご連絡をいただけましたらお迎えにあがります。」と最敬礼をして来た道を引き返していった。


「さあ、ここからはハイキングね。」

キャシーは相変わらず地図とGPSを持ちながら一行に山に入るように促した。


少しゆくと川沿いの岩の上に小さな祠があったのでみんなで急角度の岩肌を駆け上って無事を祈ってお参りしたのである。


それからはほとんど道なき道を切り開きながら猛スピードで山を登り下りして進むことになった。本当は飛んで行く方が早いのだけれど、まだ瑠美ちゃんには無理だろうということで地面をのぼり下りすることになったのである。


30分ほど道なき道を駆けてゆくと、見覚えのある場所に出た。周りは人っ子一人いない山の中である。

「この辺りだね。」

そうして手分けして辺りを探すと、俺が見た地下への入り口が見つかった。

見ると、瑠美ちゃんはこのハイスピードについて来れなかったのか、肩で息をしていた。

「瑠美ちゃん大丈夫?」

俺が気を使って声をかけると瑠美ちゃんはニッコリ笑ってグッとガッツポーズして「大丈夫です。」と言ってくれたが、健斗は「最初は瑠美と清子が先頭に立ってもらう予定だから少し休もう。」と言って無理やり休む事になった。

俺や健斗は慣れているので立ったまま周囲を警戒しているだけだが、女の子たちは「せっかくだからいいよねえ。」と言って持って来たお菓子を出していきなりお菓子パーティを始めている。


いきなり前衛を言い渡されて顔が引き攣っていた瑠美ちゃんもお菓子を食べているうちにリラックスして来たようである。


「そろそろ入ろうか。」

俺と健斗は女子たちにそう言った。

「じゃあ、清子さんと私が先頭ね。」

とは言っても女子から穴に入ってもらうのはアレなのでまずは俺が穴に入って安全を確かめる事にした。

穴の中は少しカビ臭い匂いがしたものの空気も流通しているみたいで危険はなさそうである。

ライトで周囲を照らして安全を確認した後、次々にみんなが縄梯子を降りてきた。

ダンジョンアタックの開始である。

夏休みが終わって時間がとりにくくなっているので更新頻度が少なくてすみません。

応援してくださる方には感謝しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ