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契約

夕食を食べ終わると、羽野郎はお腹をポンポンにしてテーブルの上に座り、「ふーっ、もう食べられない」と言っている。

どう考えてもあいつの手は砂糖でベタベタであろう。

俺はウエットティッシュを一枚取り出して「ほら、これで手と口を拭け。」と言ってやった。

羽野郎は「ここにいればこの氷砂糖とか、もしかして金平糖もくれるのか?」と目をキラキラさせて言う。


「欲しけりゃそれくらいはやるぞ。」

彼の両目がピンクのハートマークになっている。

「よし、決めた。それならボクはここにご厄介になることにする。」

「えっ?」


羽野郎はテーブルの周りを飛び回るとテーブルが薄赤く輝き出した。

「では契約の時だ。健斗、君の右手を出せ」


俺が言われた通りにテーブルに右手を出すと羽野郎はその上に乗り、「我に名付けをせよ!」と言う。

(えっ?名前?)

「えっと、火の精、じゃあ、サフルだ!サフルにしよう。お前の名前はサフル!」

「契約は結ばれた。」

その言葉とともにテーブルの輝きは消え、サフルは「も、もう一個氷砂糖を食べていいかな?」と言ってきた。

「いいけれど、食べ終わったら口と手はきちんと洗うんだぞ。」

そう言って俺は袋からもう一個氷砂糖を出してサフルの前に置いてやった。

サフルはもう幸せいっぱいの顔で氷砂糖に齧り付いたのである。


サフルに鑑定をかけてみると


名前 サフル 種族 火妖精サラマンダー レベル 中妖精 称号 海崎健斗の契約者


という表示になっていて、羽野郎には無事に名前が入っていた。俺との契約者という称号も新しく付け加わっていた。


もう疲れていたのでシャワーを浴びて眠ることにした。

サフルも喜んでシャワー室に入ってくる。火の妖精なら水と相性悪いんじゃないのかと聞いてみたが、どうやらシャワーはお湯なので火の成分が入っているから大丈夫ということだった。


サフルは散々にふざけ回ってお湯を跳ね散らかしたがまあ風呂場の中のことなので大きな問題はない。風呂から上がるとサフルにはハンドタオルを巻き付けてやった。

俺も寝巻きに着替えて布団を敷き、眠ることにした。


サフルはふわふわと飛び回っていたようだったが、疲れていた俺はそのまま寝てしまっていた。


翌朝起きるとサフルの姿が見当たらない。

(いきなり逃げ出したのか?)

そう思いながら台所に行くとなんとサフルはお茶碗の中で眠っていた。

口から涎を垂らして可愛らしいイビキをかいて、鼻提灯すら出しているサフルは昼間のイタズラぶりにも似合わず可愛らしい寝姿をしていた。


朝はご飯と味噌汁、目玉焼きとソーセージがメニューである。

重々と卵を焼いているとサフルも起き出してきた。

ソーセージのかけらを出してやるとおとなしく食べ始めた。


食事を終えるとスーパーに向かう。田舎のスーパーは朝早くから開いている。

俺はそこで金平糖を買い、また、他に必要物品を買い足して行ったのである。

ヘッドライトの電池や軍手、厚手の上着などを確保していった。


家に帰ると、サフルはいきなり金平糖に齧り付いていた。「うむうむ。やはり金平糖でないとな。」と一人で頷きながら金平糖を齧っている。

俺はその横を通って庭に出て、あらかじめ切って乾燥してあった樫の木の枝を見繕った。その枝の先に買ってきた包丁をくっつけて枝と包丁の柄をビニールテープで巻き付けてぐるぐる巻きにし、動かないように固定した。

次に持ち手の部分にもビニールテープを巻きつけた。そのあとは枝の全体にビニールテープを巻いて簡易手槍の完成である。


木刀にも傷が結構増えているのでビニールテープを巻いて補強した。

そのあと、リュックの中の細かな宝石を厚手のビニール袋に入れて金庫に保管した。

からになったリュックには昼ごはん用のサンドイッチと緊急用に栄養補助食材を入れておく。ポーションは二つ残っているので一つだけリュックに入れることにした。


そうして再び迷宮に挑むことにした。


迷宮内は昨日あれだけ俺がモンスターを倒しまくったおかげか閑散としている。

そのため、俺はほとんど戦闘することなく昨日のボス部屋までたどり着いた。

「えいっ!」と扉を開いた。


ヘッドライトの明かりにキラキラと輝く糸が漂っている。

俺は手製の槍をグッと引き寄せて左手で「ファイア」の呪文を唱えた。

キラキラした糸が片っ端から燃え上がっている。

奥の方へ進んでみたが、昨日のように天井から吊り下げられた獲物は見つからなかった。


カサカサという音がした。

見ると昨日よりもやや小ぶりな大グモが近寄ってきている。

俺は手槍をグッと掴むと間合いを測って、やっ!と気合いと共に突き出した。

結構包丁は切れ味が鋭く、クモの眉間にずぶりと突き刺さった。

クモは手足を縮めるとコロッとひっくり返ってしまった。

手製だったけれども、手槍は結構有効であった様子である。


その奥を見ると、やっぱり宝箱があった。

宝箱を開けてみると、長剣が一振りと、ポーションが3個入っていた。

(へえっ?宝箱はボスを倒せば何度も出現するかもしれないんだ)

一回だけだからまだわからないけれど、もし何度も宝箱が出るのなら周回して何度も宝箱トライが可能なのではないか。


とりあえず、剣とポーションを鑑定してみた。

剣は「普通の長剣(耐久力は強い)」という結果だった。特に魔法がかかっていたわけではないが、今回はソロプレイなので、剣の耐久力が大きいことは嬉しい。


サフルは魔法を使えば一発だったのにというが、俺は地下一階のために魔法は温存しておきたかったのである。


結論から言うとどちらでもあまり変わりはなかった。

階段を降りた俺が見たものは大量に繁殖したクモであった。

壁一面にクモの巣が張り巡らされ、クモの卵が産み付けられており、そこから小グモたちが次から次へと生まれて行っていたのである。


ファイアで焼き払うと小グモも糸も焼かれるが、そうすると大人のクモが襲いかかってくる。それをあの自作の手槍で突いていたのであるが、20数匹目で槍の柄が折れてしまった。その時には包丁もずいぶん刃こぼれしていたのである。


その後は長剣で突いたりファイアボールで焼き払ったりしていたのだが、もう魔力も尽きつつあった。


もう体力的にも限界である。


奥にもまだまだクモたちがいるのはわかるのであるが、無理して先に進むと帰れなくなってしまうかもしれない。

と言うことで周囲に注意しながら撤退することになった。

数回、クモが退却路に回り込んできていて、ファイアボールで焼いて窮地を逃れることがあったが、なんとか上の階に続く階段の場所に辿り着き、もう一目散に出口に向かったのである。


家に帰ってきて鑑定を自分にかけてみた。


名前 海崎 健斗 種族 人間 レベル11 HP35/61 MP51/760 スキル 刀術Lv.3 剣術Lv.2 槍術Lv.2 鑑定Lv.1 火魔法Lv.3 称号 慈恩流免許皆伝、火妖精との契約者


レベルが3上がっているようだ。レベルが上がっている分HPとMPは上がっている。槍と火魔法を使いまくったせいかそれぞれスキルレベルが上がっている。


俺は自宅に帰り着くとやっと落ち着いた気分がして体力回復ポーションを飲むことにした。


シャワーを浴びてやっぱりカップラーメンをかきこんだ。サフルは金平糖を齧っている。


色々と後片付けをしようと思ったが、もう疲労の極致だったこともあり、俺はさっさと眠ってしまった。

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