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競技大会

翌日から競技大会が始まった。

かけっこや壁登りみたいな普通の競技もあれば単位時間あたり何人のケガ人を治せるかという治癒力の競技もある。

これは聖女ルシーダの独擅場と言ってよかったけれども。

罠解除の試合では高木さんとジャファリくん、東北の女の子がデッドヒートを繰り広げて場内の歓声を呼んだ。


初日のラストは魔弾レースである。

これは一年から三年までの代表がリレーでトラックを走りながら的に魔法を当ててゆくというものである。

的は前の方からランダムに上がるので前にいる方が有利だが、詠唱や照準に時間を取られると順位を落とすし、的を外すと高得点が得られない。その辺りの駆け引きが重要となる。

男女別で2レースやるのだが、俺は男子のスターターだった。

8チームが号砲と共に駆け出す。ケニア出身のアダンくんはめちゃくちゃ早い。

スタートダッシュでぶっちぎりの速さを見せたアダン君は、けれども自分の風魔法を的に当てるために詠唱するためにスピードを落とした。

その隙に俺が火の矢(フレイムアロー)を無詠唱で打ち込んだ。

俺がアダン君をかわしてトップに立ち、走るスピードをほとんど落とさずに無詠唱で魔法を打ち込んだ。的については探索を使って的が動いた時に反応するようにしたのでタイムラグなしに打ち込める。

最初の的だけはアダン君に譲ったが、その後はほぼパーフェクトで的に打ち込み、最初にバトンを高柳先輩に渡した。

高柳先輩は「ばっちこーい」と気合を入れて走り出した。

東京第一の2年生の選手とデッドヒートを行うが、俺のアドバンテージの分だけ有利に戦えているみたいである。


俺が必死でレースの行方を見ていると、後ろからポンポンと肩を叩く奴がいる。振り返ってみるとアダン君だった。

「よおっ」

俺がいうと、なぜか彼は呆れたような顔をして「お前、バケモノ。」と呟いた。

「褒めてくれてありがとう。」と返すとアダン君は

ニッと笑った。

3年生にバトンが渡ると、前生徒会長の本多先輩と東京第一の三年生に加えて九州の先輩が猛烈に追い上げてきて三つ巴の戦いになった。

抜きつ抜かれつのレースでほぼ同時にゴールしたが、写真判定の結果、九州の選手が一番最初にゴールインしたそうである。本多先輩は惜しくも二位だった。

けれども総ポイントでは俺たちがトップだった。

高柳先輩は「健斗のポイントを守り切れたみたいだな。」と言っておれのあたまをなでてくれた。


次は女子のレースである。

一年生はうちは清子で、キャシーも出場していた。

清子は手を振って「旦那様!」とこっちを見て呼ぶ。

ちょっと気恥ずかしいが、俺と清子の祝言のことを知っている関係者はこの中に少なからず存在している可能性に気がついて慌てて俺も手を振り返した。

ギャラリーからの視線が突き刺さってくるのを感じた。あっやっぱり反応しなければよかったか。


審判役の先生の持つピストルが高く差し上げられた。

キャシーが俺の方を見てニヤリと笑ったように見えた。その刹那、パンという乾いた号砲の音がして一年女子たちは一斉に走り出した。

トップはキャシーで、跳ね飛ぶように走って行く。空中でくるりと回転して的が上がればそこにアースバレットを打ち込んでいるようだ。

清子はキャシーの後ろにつけて後ろからアクアスプラッシュで的を狙っているようだ。

アクアスプラッシュはアースバレットに比べると射程が長いので後ろからでも狙えるわけで、少なくない的でアクアスプラッシュはアースバレットを弾き飛ばして的にヒットしていた。


キャシーも清子も必死さが伝わってくる。お互いに牽制し合って魔法を打ち合っているが、そのすぐ後ろには各チームが集団になって迫ってきていた。

結局、最後のコーナーでキャシーと清子は集団に飲み込まれて団子のようになって二年生にバトンタッチすることになった。

高柳先輩は俺に「あの東京の留学生は体捌きがすごいな。もしかしたら無属性魔法かもしれない。」と言う。

「高柳先輩、無属性魔法ってなんですか?」

俺がそう聞くと、生徒会長は「ああ、魔力を体外に放出せずに体内で回し続けるものだ。そのことで術者は体の一部を鉄みたいに固くしたり体の一部の機能をドカンとあげたりすることができるんだ。戦士たちが無意識の間に使っていることもあるよ。」と答えてくれた。


横田先輩が二年の選手だったが、大きなストライドの走りで他の選手を引き離しており、魔法も巧みに的に打ち込んでいる。

封印されているとはいえ、サッキュバス恐るべしである。

結局女子はうちが一位になった。


1日目の中間結果ではけれどもうちはわずかに東京に届かず二位だった。


翌日も朝から競技が始まっている。


今日のメインイベントは団体戦である。

午後からは特設ステージで模擬戦の団体戦が開始される。

俺たちは勝太郎と清子と俺の順序で先鋒、次鋒、大将ということになった。

初戦は静岡の富士山麓にある高校との戦いだったが、勝太郎が難なく三人抜きをして早々に勝負を決めてしまった。


「布留那さんが先鋒なんて勝てるわきゃないじゃないですか。」

敗退した相手の選手たちからは泣き言が聞こえてきた。


「勝太郎、どうする?」

「そりゃ勝負は非情と言うしかないよ。どちらにしろ俺に勝たなきゃ次はなかったわけだし。」

「そりゃそうか。」

「だいたい健斗を先鋒にしていてもあいつらなら瞬殺だろう。」

「そう言われればその通りだけど。」

「負けた奴に無意味な慈悲を与えたって甘やかすだけにしかならん。『悔しかったら強くなって這い上がってこい。』と言うのが一番の言葉さ。」


勝太郎の言葉は激烈なように見えて一理あるから納得する部分が多い。

勝太郎はそのままルシーダ姫と食事に行ってしまった。

俺はこの結果は想定内だったけれどもルシーダ姫は勝太郎の勝利を願って勝太郎のいないところで色々と必勝祈願をしていたらしい。それなら勝太郎の前でやればわかりやすくていいじゃない。


そんなことを清子に言うと清子にジト目で見られてしまった。


けれどもこれは俺にだって言わせてほしい。あれだけベタベタにくっついているように見えるのに勝太郎とルシーダ姫とは単に留学生とそのお世話係という関係なのである。


いや、ローラを妊娠させた俺に何をいう権利があるのかと言われてしまえばそれまでなのだが、俺だって勝太郎とルシーダ姫とが幸せになってほしいじゃないか。

清子にそういうと清子には「それは余計なお世話なの」と冷たく言われてしまった。


それもわかるからこそ何も言っていないのだけれど。


二回戦はもう準決勝である。

次の相手は北信州の学校である。

そこはかの武田信玄と上杉謙信が戦った古戦場の側にある学校らしくて尚武を合言葉に武道に力を入れている所らしい。


選手たちも爽やかに挨拶してくれる気持ちのいい人ばかりである。


勝太郎も「こういう奴らにはきちっと稽古をつけてやらなきゃな」とやや上機嫌である。

「勝つことは確定なんだ。」

俺がそういうと勝太郎は「当然じゃないか」とあっさり答えた。


もう一方の試合は東京と九州の戦いらしい。


「向こうも瞬殺かな?」

清子がいう。

「偵察する時間が欲しい?」

勝太郎がそういうが俺はかぶりを振った。

「いや、俺たちは自分の力を素直に出すだけでいい。」


「そういうと思ったよ。」

勝太郎は笑顔で試合に臨んだ。


結果はほぼ瞬殺だった。

東京の勝利はそれよりも早かったらしいけれど。


彼ら北信州の子達は爽やかな挨拶をして去っていった。

素直な子達である。

「ああいう子たちは伸びるかな?」

「さあな」


次は決勝。東京第一高校との戦いである。

すいません。

今日はお盆前の進行その他で遅れてしまいました。

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