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ダンジョンの踏破

俺はその後も迷宮の探索を続け、一階のマップを完成させた。

出てくるモンスターはあの3種類だったのでひたすら叩き潰すという作業であった。マップを埋めてゆくという快感を感じながら探索を続けていく。


迷宮の中はかなり高密度にモンスターがいた。あのダンジョンの外に出たモンスターは迷宮内の高密度に押し出されたのかもしれない。

ということはスタンピードの前触れだったのか。

このタイミングで迷宮探索したのは正解と言える。迷宮の一番奥には豪華そうな扉を見つけた。ボス部屋かもしれない。


いい加減疲れてはいたが、マップを完成させるためである。「えい!」と掛け声をかけて扉を開くと生臭い匂いがする。

よく見るとヘッドライトの光に淡く糸のようなものがキラッと反射している。

(疲れていて無謀に突っ込まなくて良かった)

もし何も考えずに突っ込んでいたらこの糸に絡め取られていたかもしれない。


糸の付着をよく見ると糸の配置には隙間があり、注意すれば奥に進んでゆけそうである。

ライトでよく見て、糸に触らないようにしてゆっくりと慎重に進んでゆくと糸でぐるぐる巻にされた塊が幾つか上から吊るされているのに気づいた。

リュックからライターを取り出して糸を焼いてみるとそれらはぼとぼとと地面に落ちた。


その辺にあった枝でぐるぐる巻きを開いてみると、それはコウモリの死骸であったりネズミの死骸であったりした。

よく見ると一つの塊だけ少し動いたような気がする。

同じようにそれを開いてみると中には小さな人のようなものがみえた。

そいつはぐるぐる巻きを開いたところからひょいと出てくると、その背中にある羽根でパタパタと飛んだ。

「ひえー、酷い目にあったよ。」とそいつは言い、俺の方を見ると「えー、人間?ボクって人間に助けられたっていうの?」

「悪かったな、人間で。お前はなんなの?」

「えーごうつくばりの人間には言いたくないです。」

その時、奥からカシャカシャという音が聞こえてきた。

「あっ奴が来た!」

「何が来たんだよ?」

俺がそちらを向くとヘッドライトの光に反射して最初は二つの丸い玉が見え、それは奴が近づくにつれてその周りに小さな玉が増えてきた。


俺は木刀を構えようとしたが、小さな羽のある相棒は「剣は糸に絡め取られるから魔法だ!」という。

「どうすんの?」と聞くとそいつは「魔力を手のひらに集めて」と言う。

「どうやって集めるの?」とさらに聞くと、そいつはイライラしたように言った。

「人間ならば臍の下あたりに魔力溜まりがある。そこから手のひらに魔力が移動するイメージをして!」

俺が言われたようにやると、なるほど手のひらがあったまった感じになってきた。

「魔力が集まってきたぜ。」

俺がそう言うとそいつは「ファイアの掛け声でその魔力を一気に放出して!」と叫ぶ。

よしきた!「ファイア!」

俺が魔力を放出するイメージで手を振ると周囲に一気に火が付いた。

大グモが張り巡らせた糸に火がついて燃えたのである。

クモは火が燃えている間はその動きを止めていたが、火が燃え尽きると再びゆっくりとこちらにやってきた。


俺は木刀を構えて一気に間合いを詰めて打ち込んだ。

けれどもクモは装甲が硬いようで木刀の一撃にも怯んだ様子はない。

「マジすか?」

俺は闇雲に撃ち続けたがクモは平然としており、糸を飛ばし始めた。

飛んできた糸に刀が引っかかると、強力な粘着力で刀を引っ張ってくる。俺は糸を切ろうとしたが、糸は鋼鉄のように固く、切るどころか力を緩めた瞬間に絡めとられた木刀は俺の手から離れてしまった。

武器がなくなった俺は後ろに退却した。


あの羽小僧は「やはり魔法だよ。フレイムアローで行こう。もっと手に魔力を集めて!」という。

俺が「フレイムアロー!と叫んで魔力を放出すると、手のひらから燃える矢が一本出てきてビューンとクモのほうに飛んでいった。

炎の矢はクモの眉間にバシッと当たり、クモはその動きを止めた。


「よし、効いているぞ、じゃあ次は炎の球だ!」

羽野郎は調子に乗っているようである。けれどももはや残された攻撃手段は魔法しかないので俺は羽野郎の命令に渋々従うことになった。

「火の玉!」

バスケットボールくらいの火の玉がふらふらとクモの方に飛んで行き、ぶつかった。途端にクモの全身が燃え上がり、クモは足を縮めてひっくり返ってしまった。

「よしっ!大勝利!」と羽野郎は空中でトンボ返りして喜んでいる。

俺は木刀を回収し、雲がうこかないのを確かめて、奥の方を探索した。奥には宝箱があり、さらにその奥には下に続く階段があった。

俺はマップに記入すると、宝箱の前に立った。


では宝箱を開けよう。


俺は宝箱を開けることにした。


宝箱の中にはいくつかのポーションとスクロールが入っていた。

スクロールを見てみると、「鑑定」と言うタイトルがあった。最後まで読もうとすると、その字がバラバラと俺の方に流れ込んできた。

ふとみると全ての文字が俺に吸収されたスクロールは単なる白紙になってしまっていた。


どうやら艦艇のスクロールは使用してしまったらしい。

鑑定と念じると俺のデータが頭に浮かんできた。


名前 海崎 健斗 種族 人間 レベル8 HP23/45 MP263/550 スキル 刀術Lv.3 剣術Lv.2 槍術Lv.1 鑑定Lv.1 火魔法Lv.2 称号 慈恩流免許皆伝


へえ、俺の称号は免許皆伝者なのか。

そこの羽野郎はどうなのだろう。

鑑定してみた。


名前       種族 火妖精 レベル中妖精 


これだけが表示された。


そうか、こいつは火妖精だから俺が火の魔法を使えたということか。

しかし名前の欄が空欄である。なんて呼べばいいんだ。


羽野郎のことは一旦置いておくとしてポーションに鑑定をかけてみるとどれも「初級ポーション」ということで体力回復のポーションだったようだ。

試しに一本だけポーションを飲んでみた。

体が光るような気分の後、元気がみなぎってきた。

もう一度俺自身を鑑定すると、


名前 海崎 健斗 種族 人間 レベル8 HP43/45 MP263/550 スキル 刀術Lv.3 剣術Lv.2 槍術Lv.1 鑑定Lv.1 火魔法Lv.2 称号 慈恩流免許皆伝


お、確かにHPがほとんど回復したようである。初級ポーションはHPを20回復する効果があるということか。


さてどうしよう。

まさかこれほど広いとは思っていなかったので食料も食べ尽くしてしまった。

時計を見るともう午後5時である。このダンジョンの中が外界と同じ時間の流れをしている保証はないけれども。

けれども、ここで退却するとクモがリスポーンする可能性は高い。


「ここは撤退だな。」俺は独り言のように言った。


よし、帰るぞ。

俺は残った宝箱のポーションをリュックに詰めると帰り支度を始めた。


「お、おいどこに行くんだ。」

羽野郎が慌てて俺についてきた。


「どこにって家に帰るんだよ。」


「ふうん。」

羽野郎は俺についてくるようだったが俺はあえて無視していた。


地図通りもときた道を戻ると入り口まで辿り着いた。

外に出ると夕暮れの景色であり、時間がずれているようには感じられなかった。

「よしっ」


俺は家に帰って入ると置いてあったタブレットを起動した。タブレットの日付と時間は特にずれておらず、俺は8時間ばかりを迷宮内で過ごしたことになっていた。

「よかった。」

迷宮内で過ごした8時間がこちらで80年だったらもう浦島太郎である。


少し安心した俺は今更料理を作る気もなかったのでカップラーメンを食べることにして、戸棚から取り出してお湯を入れた。


(ツンツン)

誰かが俺の肩を叩く。

「なんだよ。」俺が振り返るとあの羽野郎が俺の肩を突いていた。

あ、忘れていた。というかこいつ俺について家まで来たのかよ。

「どうした?」

俺が羽野郎に聞くと「ボクの分の夕食は?ボクは高貴な身分だからそんな奇妙なものは食べないぞ。」と羽野郎は偉そうにいう。

「何が欲しいんだよ。」

「ボクが欲しいのは金平糖かな?」

「は?」

スーパーに行けば金平糖は売っていると思うけれど、流石にそんなものは買っていない。もっと早く言えよ。今からスーパーに買いに行くのはかったるいではないか。

「うーん」

俺はちょっと考えるとふと思い出した。氷砂糖ならどうだろう。

うちは親父が酒好きなので自宅で梅酒を作ったりしている。その時に使う氷砂糖なら家に保管しているはずだ。

戸棚の奥を探すと氷砂糖の袋が一袋出てきた。

そこから氷砂糖を一個だすと「ほら」とテーブルに置いてやった。

「金平糖は明日買ってきてやるから今日はこれで我慢しろ。」

羽野郎は遠巻きに氷砂糖を眺め、ややあって近づいてきた。そしてぺろっと氷砂糖を舐めると「おお、甘い。」と喜んだようだった。

氷砂糖を両手で持って氷砂糖を夢中で舐めている。


俺はそれを横目にカップラーメンを啜るのだった。

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