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ダンジョン探索再び

夏祭りも終わり、俺たちは再びダンジョンアタックを再開することにした。

清子は既に寮に戻っていたので、勝太郎とルシーダ姫の様子を聞くと「うーん微妙」ということだった。

あの夏祭りでずっと二人でラブラブしてたんやないんかい。


俺はちょっと不安だったが二人に連絡するとダンジョンアタックに来るという返事だった。


当日は勝太郎と清子とルシーダ姫の3人でうちに来たのである。

勝太郎とルシーダ姫はやっぱりギクシャクしていた。

清子は「私もいろいろ言ってみたけれどこの子達はこれでいいみたい。」と言う。

ルシーダ姫に聞いてみるとモジモジしながら「え、あ、はい」と返事をした。

勝太郎はずっとそっぽを向いている。


少しため息をつく清子に俺はよく頑張ったよと褒め言葉をかけてよしよししてあげるしかなかった。


みんなで久しぶりにダンジョンに入ると既に調査の人が入っていた。

彼らは俺たちに「ギルド証を見せてください」と言う。

ギルド証を見せると、「今日はダンジョンですか?」と聞いてきた。


俺が「はい」と答えると、「今後はハルシュタット側に向かうにはパスポートが必要になりますから注意してくださいね。」とその人は言った。

「ローラやルシーダは?」と聞くと、その人は「王女殿下は顔パスかも知れませんが、今後王国側からパスポートが発行されるかも知れません」と言う。

「わかりました」とにこやかに手を振って俺たちはダンジョンの奥に降りてゆくことにした。


ダンジョンの中は以前と変わらない。

ボス部屋まで行って宝箱を開けるのである。

ゲットしたお宝はとりあえずは俺のマジックバッグに入れた。


大体、俺とローラと清子のグループと勝太郎とルシーダのペアで固まって戦うことが多いのだがお互いに視線を合わせないはずの勝太郎とルシーダのペアはかなり息が合っているのである。大体勝太郎がアタッカーでルシーダがサポートに回っているが、二人で大物を倒すシーンが珍しくない。



以前到達していた地下10階を超えて地下11階のボスの五つ首ヒュドラを勝太郎がルシーダとあっさり倒してしまったので俺たちはもう地下12階に到達している。快進撃と言っていいのでここでお昼ご飯にした。


お昼ご飯を食べながら勝太郎に「調子いいじゃないか」というと「ああ」と曖昧な答えしか返ってこない。向こうで清子がルシーダをいじっているみたいで、ルシーダは「はわわ」と言って目をぐるぐるさせている。

「彼女のせい?」と聞いてみると勝太郎は「彼女とはそんな関係ではない。」とプイッとしてしまった。


食事の後、清子にルシーダ姫のことについて聞いてみると、どうやらルシーダ姫は勝太郎を見ることが恥ずかしすぎるらしい。それでついつい目を逸らすのだそうだ。

「そこまで恥ずかしがることないのにねえ。」

俺がそういうと清子も頷く。

「けれどもあなたは逆の方で大概だからね。瑠美ちゃんまで毒牙にかけて。きちんと責任取れるの?」

それはひどい。瑠美のことは大事に思っているし、夏祭りの時は瑠美の気持ちを聞いたというべき。

もちろんこんな本音を話しても理解されないだろうからうへへって笑いで誤魔化すしかないけれども。

休憩が終わると、とにかくダンジョンの奥に向かってゆく。

今日は地下15階まで進んだ。地下15階のボス(丘の巨人だった)を倒した先に小部屋があって、そこのポータルが起動すると地上階に戻ったのである。地上階の部屋は隠された部屋で、そこにもポータルのスイッチがあり、地下15階まで移動することができた。

今日はそれでダンジョンを出て家に戻ることにした。

夕食は瑠美が来ていてくれて作ってくれていたのでみんなで食べることになった。


食後にはお互いにそっぽを向き合っている勝太郎とルシーダ姫、相変わらずニコニコしながら歪みあっているローラと清子が居て、そのエアポケットのように一人で座っていた俺の背中にもたれかかってきたのは瑠美だった。

ちょっと体を硬くした俺に瑠美は背中から滑り落ちるようにいきなり俺の太ももに頭を乗せてきた。

「健斗は私の健斗だもん。」

すると間もなくローラと清子がやってきた。

「瑠美ちゃん、抜け駆けはちょっとどうかと思うよ。」

「私も膝枕して。」

「じ、じゃあ私は健斗のお腹に頭を乗せたい。」

「重い」

俺は三人の奥さんにのし掛かられて潰れるしかなかったのである。


勝太郎たちはそのままうちに泊まったので朝早くからダンジョンに潜ることにしたのである。

瑠美も行きたがったが、さすがに高レベルダンジョンである。しかも未踏破であるため情報も少ない。

俺は心を鬼にしてダメだということにした。

すると瑠美はあろうことが俺にキスしろなどと言い出したのである。

ローラも清子も「「そりゃキスするべきよ。」」と口を揃えていった。

しかもローラと清子の見ている前でキスしろというのである。瑠美も自分の唇を指さしている。

(本来俺は純情ボーイなんだぞ。)

声にはとても出せなかったが俺の真実の気持ちである。

俺は三人の視線を浴びて心を決めて瑠美の口にチュッと軽くキスをした。

途端に三人からダメ出しを受けた。

キスが軽すぎるというのである。

二人の言葉に瑠美もうんうんと頷いている。

もうヤケである。

ブチュッとキスしたら瑠美も驚いていた。

「健斗、嬉しい。」

もう何が何だかよくわからない。


瑠美は喜んで留守番に残ってくれた。

ということでポータルから地下15階に飛んで探索を再開した。

俺は調子が上がらずにいて、勝太郎のペアやローラ、清子に助けてもらっている感じである。ギルドショップで防具を買っておいて正解だった。


なんとか敵を倒しつつ奥に進んでいった。地下16階を突破して地下17階に行く。地下16階の宝箱からはミスリル・チェインが出てきた。

これは家に戻ってから誰が使うか決めないとなあ。

今の所、あの透明な防具が有効なのでミスリル・チェインはマジックバッグに収納しておいた。その辺りから俺もいつもの調子が戻ってきてガンガン敵を倒しまくれるようになった。


17階を突破して地下18階に到達すると、そこはアンデッドの巣だった。

高位のアンデッドである。ヴァンパイアをはじめ、マミーやスペクターなどの強力なアンデッド達がわらわらと出現する。

これにはルシーダの癒し手パワーで対抗することになった。ルシーダのヒール魔法はアンデッドにダメージを与える。それに俺たちの刀の魔力で倒してゆくのである。


ハックアンドスラッシュとはかくやという勢いでアンデッドを倒しまくった俺たちはボス部屋に飛び込んだ。


そこには大きなベッドがあり、妙齢の女性が体を起こしている。ちょっと肌の色は悪くて不健康そうだが、なかなかの美人である。


今までモンスターを切り飛ばしてきた俺たちはあまりの違和感に呆然と立ち止まった。

「あらあいらっしゃい。ハンサムボーイもいるじゃない。ここでいいことしない?」

明らかに「魅了」の術である。

俺はなんとか耐えたが、勝太郎はフラフラとその女のいるベッドの方に向かおうとしている。

「ルシーダ!魅了だ!勝太郎を止めろ!」

俺がそう言うとルシーダは勝太郎の後ろから抱きついた。

勝太郎はそれでも抵抗しようとしていたがルシーダが「勝太郎、行かないで、私はあなたのこと好きよ。」と言ったのが解呪になったのだろうか。勝太郎はピタリと動きを止めた。

自分に抱きついているルシーダを見て顔を真っ赤にしてアウアウ言っている。

「魅了」は解けたみたいだが挙動不審なのは変わらない。


女はチッと舌打ちして「私の前で何イチャコラやってんのよ!」と小声で言うと気を取り直したように俺に向かって「じゃあそっちのお兄さんでもいいのよ。」と俺を手招きした。


ローラは「悪食ね。」と吐き捨てるように言った。

悪食ってあれを食べてもいいのか?

俺は魅了にかかっているわけではなかったがエヘヘっとだらしない顔をしながらその女に近づいて行った。

その時清子が「あーあ、瑠美ちゃんを泣かせちゃうんだ。」と言うものだから俺はピタッと止まった。俺の奥さんは俺のトラウマをえぐるのが上手である。


女は「ええい、ここまできたのだからおとなしく食われてしまえ!」とベッドから飛び上がると俺に襲いかかってきた。

俺は剣の柄で女の鳩尾を強打した。

俺は剣を抜き放って「かわいい奥さんに怒られたからもう切るね。」と剣を突きつけた。

「けほっけほっ、ま、待て。ど、どうだ魔王様にお仕えしないか?お前ほどの実力なら幹部も夢じゃない。」

え?魔王軍のスカウトが来ちゃいました。

「えー魔王って怖そうじゃない。」

「そんなことないわよ。魔王軍は高給、残業なし、福利厚生完備のホワイトな職場なんですよ。」

「奥様に睨まれているからそろそろ決着をつけよう。」

俺が女を両断すると、女は風船みたいにパチンと弾けてしまった。

遠くから「あははは、魔王軍に入りたければ入れたげるからサッキュバスのエレノーラの所にいらっしゃい!」と言う声が聞こえた。

見ると、そこにあった豪華なベッドは消え去り、宝箱がポツンと残されていた。

宝箱の中には「魔王軍入会案内」と書かれたパンレットが一セットの装備とともに入れられていた。

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