迷宮実習
少し遅れました。
その後、俺は生徒会に行ったり、宮本先生の研究室に行ったりして時間を過ごしていた。
中間テストはやはり北畠が一番であったが、俺が二番、ローラが三番。勝太郎が五番と俺たちが上位を占めることができた。
休日にはローラと二人で裏庭のダンジョンの攻略を進めており、今は地下5階まで到達している。
俺とローラはついにレベル25に到達した。
名前 海崎 健斗 種族 人間 レベル25 HP152/152 MP1802/1802 スキル 刀術Lv.7 剣術Lv.5 槍術Lv.2 鑑定Lv.3 言語理解Lv.2 探索Lv.1 火魔法Lv.7. 風魔法Lv.1 称号 慈恩流免許皆伝、火妖精との契約者、ローラ王女の番、鴉天狗、火魔法の達人、鬼退治
名前 ローラ・ハルシュタット 種族 猫獣人 レベル25 HP215/215 MP125/125 スキル 短剣術Lv.7 剣術Lv.2 短弓術Lv.5 俊敏性Lv.2 宮廷作法Lv.3 言語理解Lv.3 称号 第一王女、二刀流短剣術の達人、海崎健斗の番、鬼退治
俺にはいつの間にか風魔法が生えていた。
もしかするとファイアストームと言う新しい呪文を習得したのでその時に炎を荒れ狂わせるために風を起こしたためかもしれない。あとは探索である。これを使うと一定の範囲内の敵の数や隠し扉がわかる。まだレベル1なので敵味方の区別いもつかないし、隠し扉を見つける確率も低いのだが。罠もわかるので宝箱に罠が仕掛けられているかもわかるそうだ。
ローラは俊敏性という新しいスキルが現れていた。
説明を見ても「うまくすばしっこく動くことができる」と書いてあるだけでよくわからない。ローラに聞いてみてもよくわかっていないようである。
これで相馬師匠のレベルに到達したわけであるがどうも実感が湧かない。
裏庭のダンジョン攻略は順調に進んでいるが、他人と比較したことがないからかもしれない。
北畠をうちのダンジョン攻略に誘おうかと思うのだが、まだローラと二人で十分進めているし、誘うなら勝太郎と同じタイミングでと考えると少し躊躇してしまっている。
勝太郎の骨折は驚異的な回復を見せて、普通の半分の一月半でもうギプスを外せるようである。
彼もウズウズしているみたいで他の筋肉を復活させるべくリハビリテーションに余念がない。
「ははは、あの時の回復ポーションがよく効いたんだと思う。」と勝太郎は俺に微笑みかけてくる。
むしろ俺的にはあそこできちんと治しきれなかったのが不覚であった。
中級ポーションがあればあそこで治しきれたかもしれないが、まさかそこまで必要になると思っていなかったのが不覚である。
どうやら7月の迷宮実習には参加できそうだと言うことである。
迷宮実習は俺たちが迷い込んだ洞窟のさらに奥にある迷宮で、そこを踏破できると探索者ギルドに登録できるという学校の持つ迷宮だそうである。
やはり4〜5人のパーティを組んで探索に参加して一定の探索成果を上げたら合格ということになるらしい。
高柳先輩は「いや、君たちなら別に探索に参加しなくても監視側に回ってくれてもいいんだが」なんていうが、せっかく勝太郎が復活してきたので、その腕試しも兼ねて生徒側で参加することにしたのである。
アタック順は一応、くじ引きで決められて、俺たちは二番目であった。
迷宮探索実習ではさすがに迷うこともなく、迷宮まで辿り着いた。もう黒井もいないので無茶をする奴はいなさそうである。
一番目のパーティが入って行ったあと、10分のインターバルで俺たちも迷宮に突入した。
通路を進んでゆくと、最初に入ったパーティがゴブリンと戦っている。
ちょっと苦戦しているみたいだったので「助けようか?」と聞いてみたが「助けはいらない」ということだったのでパスして先に行かせてもらうことにした。
時々スライムやゴブリンが出てくるが、もう俺たちの出番でもないので北畠と勝太郎に任せている。
彼らは実に楽しそうにゴブリンを屠って行った。
「後続のチームにも獲物を残して行ってやらなけりゃね。」北畠も余裕なことを言っていた。
勝太郎は骨折した右手を滑らかに動かすことに注意を砕いていてあまり話をせずに自分の動きを確認している。
俺たちは黙ってその後を後衛としてついて行っている。
時々コウモリが飛んできたりするので、それを俺の風刃やローラの短弓で撃ち落としている。
探索はフルタイムで活性化させているので周囲10mくらいのモンスターは把握できている。
地下一階のボスはホブゴブリンだったが、これは北畠と勝太郎が瞬殺した。
宝箱を見つけたが、探索で罠発見だったので俺が長剣で横から鍵を叩き潰した。
その瞬間に矢が飛び出てきてだれもいない空間を飛びすぎていった。
中にはスクロールが入っていた。見ると「言語理解」である。
俺たちはもう持っているので北畠と勝太郎がじゃんけんして勝太郎が勝ったので読ませることがした。
スクロールの文字が勝太郎の体に吸収されて消えていった。
「なんだか変わりがないなだけど。」
勝太郎は狐に摘まれたような顔をしている。
「まあ。今は実感がないだろうけれど。」
俺は勝太郎を鑑定してみた。
名前 布留那 勝太郎 種族 人間 レベル18 HP158/162 MP 53/53 スキル 刀術Lv.4 剣術Lv.2 体術Lv.3 言語理解Lv.1 称号 布留那一刀流嫡男、鬼退治
勝太郎はきっちりと言語理解を獲得していた。
ついでに北畠を鑑定してみると、こうなっていた。
名前 北畠 清子 種族 人間 レベル16 HP97/97 MP 159/159 スキル 刀術Lv.5 剣術Lv.2 体術Lv.1 水魔法Lv.1 称号 無想神念陰流後継者、鬼退治の一員
レベルが1上がっているのに加えて水魔法が生えていた。
これは帰ったら水魔法を特訓しなければね。
地下2階もまだまだ勝太郎と北畠で十分だった。
ホブゴブリンやスネークなどをぶった斬って行った。
さっさとボス部屋に行くと、ウルフたちが出てきた。
ウルフたちはすばしっこいので北畠も勝太郎もなかなか苦戦している。
ローラがウズウズしているのがよくわかる。
「よし、ローラ、行ってこい。」
俺がそういうと、両手にナイフを構えたローラが舞うように攻撃してオオカミたちの首筋を切り裂いてゆく。
時間がかかるようならばフレイムアローを使おうかと思っていたけれど、そんな暇もなく戦闘が終了してしまった。
地下3階はウルフたちやオオガエルたちが徘徊していた。
ウルフはローラと俺が倒し、オオガエルは勝太郎と北畠が担当した。
オオガエルを攻撃すると粘液が飛び散ることになる。もう足早に通り過ぎたのだけれど、ボス部屋の前に来る頃には勝太郎も北畠も粘液でベタベタになっていた。
「最悪だわ、もう。この粘液が気持ち悪いったら。」
北畠は不機嫌の極みである。
俺はふと思いついて行ってみた。
「北畠、一度、手から水が出てくるイメージを思い浮かべながら『クリエイトウオーター』って唱えてみて。」
「はあ?まあいいわ、やってみる。」
北畠は自分の手のひらを少し見つめていると、やおら「クリエイトウオーター」と口にした。真面目に唱えたが少し恥ずかしかったのかもしれない。耳の先が赤くなっている。
途端に彼女の手から透明な水が溢れだした。
「キャッ」
北畠は驚きのあまりか尻餅をついた。
「健斗、これ、どういうこと?」
「どういうことって、水魔法さ。」
「………」
ややあって北畠が言った。
「私って水魔法が使えるの?」
「どうやらそうみたいだな。」
するといきなり北畠が俺に抱きついてきた。
「えっ?私も魔法が使える。」
彼女の体はオオガエルの粘液まみれだったがこの際そういうことは我慢せざるを得ないだろう。
ローラも「私が正妻よ。」って小声で言っているが粘液まみれの北畠の体に触りたくはないようで少し距離をとってしまっている。
「健斗、魔法を使えるようにしてくれてありがとう。」
「い、いや、それはその。」
どうやら北畠は俺が彼女の魔法を使えるようにしたと思い込んでしまったみたいだ。
彼女は真っ赤な顔をしておずおずと俺のほっぺたにキスをした。
まだ他のパーティはここに到達していないとはいえ大胆すぎる。
ちらっとローラを見ると俺たちの方を指さして口をぱくぱくさせている。
北畠は俺の耳元で「これからは北畠じゃなくて『清子』って名前で呼んでね。」
そう言って抱きしめていた腕を解いて向こうに行ってしまった。勝太郎のやつは声を殺してヒーヒー笑っている。全く友達がいのないやつである。
すると、ローラがきて清子がキスした上にキスしてきた。
「ローラ、どうしたんだ?」
「消毒です。」
「は?」
ローラもツンとした顔で向こうに行ってしまった。そこにいた清子と中良さそうに話している。清子は出した水で体を清めているようだ。
「そろそろ行かないか。」
俺がそういうと、彼女たち二人は仲が良さそうに手を繋ぎあって「「さあ行きましょう」」と俺を無視してボス部屋に向かった。
俺はなんだかよくわからないまま二人について行ったのである。




