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野外演習(3)

そうこうしている間に野外演習の日になった。


朝から教室はザワザワしている。

一応、俺はいつもの長剣を持って来ていたが、念の為、侍の刀も袋に入れて用意している。ローラにはいつもの二刀流ナイフと短弓である。こちらには短弓の矢なんてなかったけれど、ローラの実家の城には山のように矢は蓄えられていたのである。

そういうことで矢筒に20本ばかりの矢が補給されている。


勝太郎も北畠も刀を持って来ていた。


俺たちはグループに分かれて学校の裏で野外演習をすることになっている。

学校の裏は俺の家と同じように裏山があり、そこで演習を行うのである。

山の中腹に御堂があり、そこでお札を取ってくればミッションクリアということになっている。なんだか肝試しみたいだが、演習は昼間に行われるから肝試しの要素はないはずである。


一応、グループに一つづつGPSが渡されており、ギブアップの時には救援隊が駆けつけてくるらしい。


くじ引きでグループの出発順を決めた後、インターバルをとって各グループが出発してゆく。


俺たちは黒井のグループの後に最終組として出発することになった。

黒井が何か言ってくるかと思ったが、やはり皮肉な笑みを向けられただけだった。


10分のインターバル時間をとった後、俺たちのグループは出発した。

スタート地点が見えなくなるといきなりローラが俺の手を握ってきた。

それを見た北畠がすかさず俺の反対側の手を握ってきた。

二人は俺のそれぞれの腕を握りしめて視線をばちばち言わせている。

はあっ。

俺はため息をつくが、勝太郎は俺に視線を合わそうともせずにスタスタと山道を登っていく。ゴールデンウィークの時の怪我も随分良くなっている様子である。


「おい、道標があるぞ。」と勝太郎が俺に声をかけた。

「どちらの道?」俺が聞き返すと勝太郎は「左だ」と言って左の道を進んでいった。

俺は前日のオリエンテーションの時の話では右じゃなかったっけとは思ったのだが先に行く勝太郎についてゆくしかなかった。

本来なら別れ道から進んでゆくと丘陵地に出て、そこでモンスター狩りをするのだが、俺たちはどんどん奥に進んでしまったようだ。

もう時間はお昼時であり、お腹も空いてきた。

目の前には洞窟がある。

「いくらなんでもダンジョンクエストはないだろう。」と俺が言った。

「そうだな。今日は野外演習のはずだ。」と勝太郎が言う。

「やっぱりあの標識が間違っていたんだよ。」

「そうかもしれない。」

痛恨のミスである。

「降りたとしても演習には間に合いそうもないね。」と北畠が言う。

「じゃあお腹も空いたしここでご飯にしましょう。」

ローラだけはご機嫌なのが救いである。

「そうだな。じゃあお弁当を出そう。」

俺はそう言って担いできた荷物からお弁当を出した。

こうなれば楽しんだものが勝ちである。


こうして俺たちはお弁当を食べることにした。北畠と勝太郎の弁当は寮の標準の松花堂弁当だったが、俺の弁当はローラの希望通りステーキ重弁当とすき焼き風弁当であった。

お互いに料理を交換して食べたので北畠も勝太郎も涙を流さんばかりに喜んで食べたのである。


食事を終えた頃、向こうから数人の人影がこちらにくるのが見えた。

(誰だろう?)

しかし、その人影が近づいてくると、凶悪な面構えをしているのが見える。とてもじゃないが人間ではない。

「オーグルか」

俺たちは全く隠れようともしていなかったので向こうからは丸見えである。


近づいてきたオーグル達はさっさと武器を構え始めている。

幸い棍棒や剣ばかりで飛び道具はなさそうだった。

「とりあえず話しかけてみる?」

俺はオーグル語で「こんにちは、いい天気ですね。」と話しかけてみた。

すると奴らの一人が「ここにいい晩御飯の材料がある。ニンゲンのミンチ肉は美味しそうだ。」と返事してきやがった。


もう交渉の余地はなさそうである。俺は小声でみんなに「戦闘準備」を告げた。

オーグルの数は5匹である。俺たちより1匹多い。

俺はみんなとオーグルの間に立つようにした。

一番前にいたオーグルは「お、おい、うまそうだな」と言うなり持っていた棍棒を振り下ろしてきた。

俺は転がって棍棒の一撃を避けた。

素早く立ち上がった俺は用意していたファイアボールの呪文を唱えた。

火の玉はちょうどオーグル達の真ん中で爆発した。

炎に塗れたオーグル達は煤で真っ黒になったが戦意は衰えていないようである。

素早くローラが2本の短剣を構えて1匹のオーグルに切り掛かり、負けじと北畠も別のオーグルに切り掛かった。

その北畠を狙って別のオーグルが攻撃しかかったのは勝太郎が防いでくれた。

残りの2匹については俺がフレイムアローを撃ち込んで牽制した。

その2匹は俺に向かってきたので俺は長剣を抜いて2匹同時に相手をした。


そのうちにローラがオーグルを片付けた。

「旦那様、次はどれを?」

「北畠の援護に向かえ。」


ローラは嫌な顔をするかな?と思ったが、彼女は素直に「はい」と言って北畠の救援に向かった。

俺は目の前の2匹を倒した後、勝太郎の援護に向かった。

その時には北畠の前のオーグルはもう倒れそうだった。

勝太郎は新しい傷を負ってはいたがまだ持ち堪えていた。

俺の顔を見ると「何しにきた。他の敵を倒せ。」と言う。

俺はにやりとして「こいつが最後だ。痩せ我慢は無用だ。」と声をかけた。

勝太郎はそれ以上何も言わなかった。

程なくして横で「きゃーやったあ」「敵を倒せたよね。」という黄色い声がした。

北畠とローラの声である。


「さあこっちもさっさと片付けなきゃね。」俺がそう言うと勝太郎は黙って剣を振り下ろした。

このオーグルも倒れ、全てのオーグルを片付けてしまった。

ダンジョンの外なので死体の消失はゆっくりだったが、既にローラは魔石をいくつか回収しているようだった。

それに付き添っていた北畠はまだ魔石の回収に離れていないと見えて「うへえ」と言いながらローラについて行ったようだった。

俺も倒したばかりのオーグルの体から魔石を抉り出した。

勝太郎は「随分手慣れているな。」という。

俺はそれには答えずにオーグルの持っていたナイフに目を留めた。

鑑定をかけてみると「貫きの短剣」というもので結構性能が高いものだった。

「ローラ、こんなナイフがあるぞ!」と俺が言うとローラも「こっちにもう一本ありまーす。」と言う。

急いでそちらに行って鑑定をかけてみると同じ性能のナイフであった。

「にゃにゃにゃ、ナイフが2本あれば二刀流ができますね。」

ローラはご満悦である。


一段落すると「はい全員集合!」と俺は全員を呼んだ。

みんなが集まってくると「ケガの程度を自己申告してください。」と聞いた。

勝太郎は結構外からでもわかるくらい派手に怪我をしていたので初級ポーションを一つ飲ませることにした。

勝太郎は「俺は大丈夫だ。」と最初は抵抗していたが、無理やりに飲ませてやるといきなり傷が治ったので驚いている様子だった。

北畠については俺が直接確認するわけにもいかないのでローラに一つポーションを渡して「女の子同士でそのポーションを分け合って。」ということにした。


戻ってきた北畠は「この薬は異常によく効いたのだけれど、どこでこんな薬を手に入れたのよ。」と俺に聞いてきた。


「えーっとお」

俺が答えられずにいると、ローラが横から口を出して「私の国に来る途中で手に入れたのよね。」と言ってくれた。

「そ、そうだね。」と俺が相槌を打ったがまだ北畠は納得していない顔である。

嘘はあまり言っていないぞ。


「それで、この洞窟に入るのよね。」

北畠が言う。

「そのつもりだが。勝太郎も行くよね。」

勝太郎も黙って頷いた。

ローラには目で合図したらこくこくと首を縦に振ったので問題ないだろう。


遅れてすいません。

仕事が押してしまいました。

いつも読んでいただきありがとうございます。

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