ヤキザケ村と頼陣家⑥-021
第二十一話:ヤキザケ村と頼陣家⑥
「お父様が…ナズーク王国と!?そんなはずはありません!!」
詩姫はその真実に驚く。
「そうもなるよね、まずこの事実はナズーク王国国民は知らない。事実を知っているのは僕とある衛兵隊の一人だけだ」
ということは、羅雲は何をしたいんだ。
ヤキザケ村という小さな村を支配して、ナズーク王国と手を組む…動機がわからん。
「それより、そのある衛兵隊とは誰だ」
「そうだね、一応紹介しておくよ………」
ワーズは口を開る。
「おい、ワーズ…なにを…」
「ちょっと失礼…おぉっえ…」
ビチャ…。ワーズは白い毛玉を吐き出した。
「どうしたワーズ!大丈夫か!?」
「なんですか、というか…動いてません!?」
俺と詩姫は完全に動揺。気分が悪くなったのだろうか…いいや…違う?
その毛玉はピクピクと身を揺らした。生きているのか…。
「これが、僕の相棒…そして元魔法衛兵隊…指揮官の……」
その毛玉は立ち上がる。キラキラな目をぱっちりと開き、口を開けた。
「…指揮官のラスティ教官だっ!!」
「喋った!?」
はっきりと、そして生き生きとしたその声に驚く。なんだ…。猫??
「か、かわいいです…」
そのもふもふに詩姫は目を輝かせた。
「君がフィナシェ…そして君が頼陣詩姫か!
二人とも、ワーズがお世話になっている!!」
めちゃくちゃ元気…というか…めちゃくちゃ喋るなこいつ…。
「お、おい…そいつが相棒で…魔法衛兵隊?」
「ラスティは、色々あって今は動物状態だけれど、列記とした人間なんだ」
「そうだな…これを話すと長くなるが、あれば西の地方の任務でのこと…」
長ったらしい話が始まりそうな…。すると、ワーズが人差し指をラスティの口元に添えた。
「おっとー、それはまた今度ね…とりあえず、脱線しない程度に自己紹介と、近況説明ね」
「ああ!わかった!」
「よく喋る猫だな…」
謎の存在…ラスティは、その場からワーズの肩に飛び移り話を始めた。
「私はラスティ…。二年前までは魔法衛兵隊の指揮官だった、今はこのナズーク王国の謎と君たちの宿敵…魔王軍についてを調べている!」
「ということは…マリーや俺らのことも知っているのか?」
「知っているとも、君主の君達のことはワーズから聞いた、ぜひ俺も力を貸したい!」
「それは頼もしいのだが、ナズーク王国の事を…」
「安心しろ!!百パーセント羅雲が黒幕だ!!」
ドンと率直にラスティは言った。
「ちょ!ラスティ、言葉考えて!!」
「なぜだ?そうだろう!!」
「ここに羅雲の娘の詩姫ちゃんがいるでしょうが!」
詩姫は、下を俯く。
「な!!!すまない!!!、言葉を選ぶべきだった!!
だが根拠はある、私とワーズはこの目で見たからな…」
「見たって…なにをだ?」
「二年前のこと…ナズーク王国の国王は死んで、それから新たな国王と呼ばれるものが現れた。次国王は前国王の息子だったらしい。
その国王のおかげでナズーク王国は安寧を取り戻した」
「なんだ、それで終わりか?」
「いいや、ここまでは世間が知るナズーク王国の姿…ここからは俺とワーズしか知らない情報だ。
ある任務時、俺とワーズはナズークの地にいた。機密任務でなナズーク王国の魔導書を拝見しに城へ行った。
城は静けさに包まれていた。それもそうだ。城の人間は死んでいたからな」
「死!?、城の人間って…なぜその事を国民は知らないんだ!」
「ああ、二人を除いて全ての人間が殺されていた。そこで俺たちが見たのが羅雲…そして…」
ラスティの口が動く前にワーズが言った。
「僕の恩師…大島さんだ」
大島、マリーとワーズの師匠と聞く。なんだか最強なのだとか。最強なのだとか…。
「いや、なぜだ……いや…確か大島はオズに殺されたはず…」
「そう、フィナシェ君も、知っていると思うがオズの特異魔法によるものだろう。
名を〝クラウンブレイカー〟と言うらしい。」
オズの力は確か殺した人間を球体に封じ込め自分の配下にするというもの。
それも配下は学習していくというとても凶悪な力だ。
「正直かなりまずいよ、昔の力を使えた僕とマリーが一緒に挑んでトントンなのに。」
なんだそれ…絶対勝てないだろ。
ラスティは険しい顔で語る。
「それは酷いものだった、その場にいた俺たちはある事を聞いた。ヤキザケ村は呪いの研究のために作られた実験場と…」
呪い、この村の呪いのことか!?
そうなると、まさかこの村の呪い…
「…クロマゲ」
詩姫はそう一言。あの少女がかかっていた呪いか。
「簡単に説明すれば、羅雲はナズーク王国の人間。でっちあげの歴史を村民に刷り込ませ、
羅雲は都合の良い実験場を得た。その実験内容は強力な呪いの実験。
そしてオズが生み出した大島との関係を考えれば、魔王軍裏で繋がっている可能性がある。
「詩姫…別に俺らは羅雲を倒そうとは思っていない…だが奴が何か行動を起こせば俺らも戦うだけだ」
詩姫はなんとも言えない表情のまま、喋り始めた。
「正直…信じたくはありません。
前々から、頼陣家に全てを尽くすという村の方針はよくは思ってはいないです。
それでも私が暮らしたこの十九年の思い出は、どうしても捨てる覚悟がありません。」
詩姫はそう言った。おそらく本音なのだろう。十九年も共にした環境や親族を否定されたのだから。
「ですが、もっと私は新たなことを知りたい。この数日間で新たな仲間ができました。村の方々は行動が制限されています…。
だから、村の方々たちにも自由を取り戻したい…です。」
詩姫は自信を振り絞り、そう言う。
「村民のためか、うちのわがまま姉貴だったら絶対そんなこと言わないよ」
青い長髪をなびかせ、詩姫は少し微笑みながら、決意を表した。
「決めました。私は…魔王討伐の旅に同行します!!」
「詩姫…」
自身から微笑みが落ちたのがわかる。
ワーズも笑いながら言った。
「ようこそ、氷術の君主よ!!じゃあまずはフィナシェくん、今後の動向を!」
「ああ、この村を救おう。そしてナズーク王国の国民たちも!!」
つづく




