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魔法使いの断末魔  作者: 鯖承まどか
魔法使いの終結譚:第三章 氷術の君主編 前編
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ヤキザケ村と頼陣家⑤-020

第二十話:ヤキザケ村と頼陣家⑤

 

 裁判は閉廷、俺の拘束は解かれた。牢屋にいるのは変わらないが…。


「それで…なんだあの切り抜け方は!」


 牢屋の外にはワーズと詩姫…。


「僕も驚いてるよ…まさかあんな展開になるとはね…。こんなことしてたら、妻にもキャバクラ禁止されるか…。」


 ワーズはケラケラと笑う。浮気者がなにを言っているんだか…。

 妻がいるのにキャバクラ……。クズだな。



「浮気者に封薇は渡しませんからね?」


「わ、わかってるよ!弓構えないで!」


 ふざける猶予は俺にはない…。


 あの裁判の後、ワーズは無罪、俺は有罪のまま裁判は続行という形になった。


 第二回目は明日の昼。今は牢屋で詩姫が見張についているが、一応村の中であれば外出はしてもいいらしい。


「それよりも、フィナシェくん…。詩姫ちゃんに君主のことを説明しなくていいのかい?」


 ワーズは俺にそう言った。


「それもそうだ…。詩姫…話を聞いてくれ」


「え、は、はい…。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「とにかく、詩姫…説明で不十分なところはあったか?」


 今話が終わったところだ。詩姫は真剣な眼差しで言う。


「いいえ、不十分です」


「そ、そうか…逆に清々しい…」


 無理もない、これほど胡散臭い話はないからな。


「とても壮大な話で登場人物の生い立ちの説明が不十分です!」



「いや…この話を理解してくれればいいんだが…」


 話を聞いた限りだと詩姫とラテはやはり繋がりがあったそうだ。

 

「ラテ様に最後にあった時は、一年ほど前でしょうか…。こんな村に訪れる人なんかいませんでしたから…。幼い時は遊んでもらっていました。」


「そうか…それで、君主にはなってくれるか?」


 これが一番の疑問…詩姫は氷術の君主、これで決まる


「そうですね…私が魔王を…しばらく考えさせてほしいです…」


「分かった…。」

 

 急がせてはいけないことは分かっている。


 それじゃあ、先にやることは無罪の証明だ。

 ワーズの場合、村長の娘に好かれたと言っても…これほど怪しい奴をこうも簡単に無罪にするだろうか。


「謎すぎる…。「


 眉間にシワを寄せる俺に、ワーズが一言。


「この裁判で、わかったこともあるだろ?」


「わかったこと?」


 ワーズは笑みを浮かべて言う。


「この村に法なんてものは通用しない、頼陣家たちが僕を気に入って無罪にしたみたいにね」


 たしかに…。あの呪いを解かなかったらおそらく二人とも有罪だった。



 ように頼陣家たちにとって、俺たちが使えるかどうかで判決が決まると言うわけか。



「ふっ、たしかに法なんてものはないな…」


 詩姫は下を俯き、ヤキザケ村の歴史を口に出す。


「村の起源は、百年以上前のナズーク王国内での抗争がきっかけなんです。

初代頼陣家当主は、法の縛りを嫌う人物だったらしく王国に叛逆…。

ナズーク王国は勝利したものの大損害を受けました。結果、頼陣家初代村長は死刑…。

その数年後に初代当主の墓があるこの森に、その息子がこの村を作ったそうです。」



「初代村長、とんでもない奴だな…だが、なぜ

ナズーク王国はこの村をほっといているんだ」


「いえ…そこまでは…私たち頼陣家は大人になるまでをこの村で過ごすという決まりがありして…」


 一生をこの村で過ごす……。ということは、詩姫は村の外の世界を知らないということなのだろうか。


 そんな話をした矢先、今の話を全否定するようにワーズは言った。


「率直に言うけどそんな歴史真っ平な嘘だ。」


「え?」


「この村の歴史は長くても二十年やそこら、詩姫ちゃんやその兄弟が生まれた時期だ」


「じゃ、じゃあ、この村の村民は…」


「君たちもわかるだろう?この村には若い人間がいない。年寄りばかりだろう?」


 それもそうだ。俺が見たのなんてハルキィくらいしかいなかった。

 年寄りばかり…。弱い人間をなにかに利用していると言うことか?

 

 するとワーズは自身のバックから何かを取り出した。

 緑のコート…初めて会った時に身につけていた魔法衛兵隊のコートだ。

 

「最初に君たちと会った時に僕は魔法衛兵隊と言ったよね?

実のところ、この二年間は魔法衛兵隊にこっそり入隊してたんだ」


 ワーズは笑いながらそう言った、どれだけ暗躍しているんだこの男は…。


「よく、入隊できたな…指名手配犯の姉を持つのに…」


「偽名を使ったらすんなり入隊できちゃったんだよねー、僕の顔そんなに特徴ないかなーって思ったけど」


 魔法衛兵隊って、そんなものなのか…。厳格なイメージがあるが…。


「ま、ここで話すのもなんだ…裁判の証拠探しというのを口実に外に出ようじゃないか」


 詩姫もワーズに賛成するように言う。


「そうですね、一応フィナシェ様には証拠を探す権利がありますからね」


 そう言って、牢屋から出た。出る際には一度村長に顔を合わせ、見張りをつけるというルールだったが。

 急用かなんかで村長は村にいなかった。


「頼陣家は村の外に出ていいという決まりは、村長には関係ないのか?」


 村を歩きながらワーズは詩姫に言った。


「そうですね、お父様はこの村で特別な存在ということなのです」


 ますます怪しいな、頼陣羅雲…五十代そこらであの風格を出せるということは、只者では

ないだろうな。

 すると、大男が見えた。


「よぉ、クソ片目…」


「げっ、お前か…」


 目の前に立つのは、やはり頼陣武楼であった。

 弱者を虐げるこいつは俺とは絶対に合わない気がする。


「武楼、ハルキィの件でお前をまだ許したくなくてな…一発殴らせてほしいのだが?」


「はっ、いいなぁ、やるか!」


 武楼は構えた。まだ殴り足りない…これからもこいつは同じことを繰り返し、多くの犠牲が出るだろう…。


 戦いが始まりそうになった時、ワーズと詩姫は俺たちの間に入った。


「ワーズ君!これ以上罪を増やしてどうするんだ!」


「そうです、武楼様も挑発に乗るなんて頼陣家失格ですよ!」


 …危なかった。武楼は不貞腐れたように構えを崩した。

 俺の悪いところだ、後先を考えない猪突猛進的な考え方。


「ちっ、どう言おうが頼陣家に楯突くんじゃねぇぞ!!」


 そう言い、武楼はその場を立ち去った。


「すまない、ありがとう二人とも」


「いえ、私もフィナシェ様と同じ気持ちです。ですが今は落ち着いてください、兄様たちの思う壺です」


「そうだよ、ワーズくん、今調子に乗ってる奴らに後でカウンターパンチを繰り出してやろう!」


「ほら、僕たち仲間でしょ?仲間としてよろしくね、二人とも!」


「私も…ですか?」


「もちろん!」


 仲間…。たしかに…仲間というのはいくつも持っていいのか。

 すこし、気持ちが軽くなった。


「そ、それはそうと、ワーズ様。先ほどの話ですが…」


「あー、ごめんごめん。なんのためにこの村があるのか…。それは、村長…頼陣羅雲がナズーク王国の〝王国大法卿〟という地位にあり、呪いの実験としてこの村を作ってたからさ。

王国大法卿というのは、簡単に言えば…王国の法を司る地位…」


「羅雲が…ナズーク王国の!?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ナズーク王国…。王の玉座


「村の村民たちに無自覚な支配をすることで、ナズーク王国の戦力とする…。ずいぶん酷いことをするじゃないか…。」


「それはもちろん、村民たちにはもちろん嘘の歴史を教えたよ…この王国大法卿…羅雲がな」


 ーーナズーク王国の国王は二年前に死んだ。

マリーが指名手配になった即日にだ…。

 ナズーク王国の国民は、国王の死に涙を流した。だが前国王の息子が国王に就任し国は活気を取り戻した。ーー 【世界歴史書引用】


 黒い外套を羽織った男は振り向き、言う。

「まあ正直…。呪いだなんだなんて俺には興味ないがな。」


「頼陣家の者たちは全員…特異魔法を摂取する実験に成功しましたよ。本当にあなたのおかげだ…。。」


 王の玉座には血が滴れる。

 そこには、床には倒れる王の護衛ども。剣で首を壁に張り付けられた使用人たち…。


 新国王になってからのこと…。

 ナズーク王国の王宮には誰一人入れないと言う。


 この規則を破る国民がいないのは、誰にでも信じられる聖人のような現国王あってのことだろう。


「それはそうと…魔王を討伐する君主がこう早く現れるとは…。私も驚きだ」


「俺はとにかく早く強い奴と戦いたい…。このナズーク王国国王、…この大島がな。

オズの力で得たこの身体、思う存分使わせてもらおう」


 黒い外套をなびかせるその男は素敵な笑みを浮かべる。


つづく

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