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魔法使いの断末魔  作者: 鯖承まどか
魔法使いの終結譚:第三章 氷術の君主編 前編
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ヤキザケ村と頼陣家④-019

第十九話:ヤキザケ村と頼陣家④


 大きな和室の中心に俺とワーズは縛られた。

 着物を着た者たちが部屋に集まってくる。

 俺たちの横に立つのは弓を持つ詩姫とハルキィを痛めつけた大男。


「はっ、ざまぁみろ…頼陣家に楯突いたからな…きっと死罪だぜ?」


「武楼兄様、お静かにしてくだい…父上が参ります」


 かすかに足音が聞こえる。


バッ!


 襖が思い切り開けられる音がする。

 豪華な装飾を施された着物を着た男が入ってきた。

 長い白髭は刃のように鋭い…。


 あれが…頼陣家のトップか?


「皆、よく集まってくれた…。さっそくだが裁判を始めよう」


 不気味な笑みを浮かべるその男はそう言った。


「裁判官はこの私…村長の頼陣羅雲が務めよう…」


 頼陣羅雲…それが村長の名…そして頼陣家のトップ…。


「率直に言おうか…そこの二人死罪だ…」


 指をピシッと指す。当たり前だが俺たちにだ。

 やはりイカれていた…裁判が始まってすらないのに…。


「いやー、重いね…罪」


 まるで茶道をしているご老人…。危機感や恐怖がないのだろうか。


 俺は羅雲に言う。


「…頼陣家への叛逆が俺たちの罪か?」


「その通り…だが…もう一つあるな」


 もう一つ?…頼陣家の人間に危害を加えた他になにかしたか?

 

 悩む内に隣のワーズが答える…。


「ちょうどこの村では、結婚争奪戦ならぬイベントが行われているようですね。裁判が行われたことでそのイベントに支障が生じるからですか?」



「ほぅ、当たりだ。」


 結婚争奪戦…そういえばそんなのがあったのか…。知らぬ内にもう一つ罪を重ねてしまっていたようだ。


「頼陣家の女が十八の誕生日を目前にこの結婚争奪戦が行われる。結婚が一日でも遅れれば…」



「遅れれば…?」


 息を呑む。


 羅雲は鋭い目で俺たちを見て言った。


「頼陣家一族の呪いが起きてしまう。」


「一族の呪い?」


「見た方が早い、封薇…出てきなさい…」



 そういうと、陳列した人々の中から一人の少女が出てきた。

 

「……。」



「呪いにかかる前は元気で綺麗な子だった…」


 どうも静かな子だ…一言も喋らない…。


 少女は両腕に包帯を巻いている。それも右腕はなぜか短い…。

 腕がないのか…?。羅雲はその少女の包帯を取る。


「…なんだそれは…」


「これが一族の呪い…謎の病気…クロマゲだ…」


 少女の腕は黒い根のようなものが張り、目も当てられないような形をしていた。


 隣の詩姫は言う。


「私の姉は前年、男と駆け落ちをし、結婚の儀式を放棄しました。そしてその後、妹の封薇はこのように呪いにかかってしまいました。」


「…呪い…」


 呪いとは魔法とは少し違ったベクトルだと言う。魔王の呪いのように邪念や執念から生み出される無の魔力エネルギーらしいが…。


 そうすると、ワーズは羅雲に言った。


「それ…治せるかもしれません」


「無理だ…ナズーク王国の賢者にも頼んだが、無理だった…。特別な呪いらしい」



「ほー、これは辛いだろうに」


 一瞬、目を離したうちに縄を脱げだし、ワーズは少女の腕を観察していた。


「い、いつのまに!?」


 数人がワーズを取り囲み、武器を向ける。


「お、おい、男…封薇様に触れるんじゃないぞ!!」


「ちょっとまて…。」


 羅雲の鋭い眼差しで使用人の動きが止まった。


「綺麗だった…と言っていたが十分に綺麗じゃないか、大丈夫…ちょっといいかな?」


 少女は相変わらず喋らない。


 ハルキィをボコしてた武楼という男は言う。


「何言っても封薇は答えねぇぜ…。」


 封薇と言う少女はワーズをじっと見つめる。


「大丈夫さ…」


「……。」


 少女がそっとワーズに手を差し出した。


「お利口さんだ…じゃあいくよ…僕の特異魔法…〝電気蘇生〟(リサステーション・ザ・スパークル)…」


 バリバリバリッ!!


「ぬぁっ!!」


 一瞬のうち、光と共に電気の音が響いた。

 特異魔法と言った。これがワーズの力…電気の能力だろうか。


 一同たちが怯える先には、少女の手を持つワーズがいた。


「なに!?貴様何をした!?」


 少女のなくなっていた腕は復活していた。


「これが僕の力、なんでも治す特異魔法さ」


「すごい!」「賢者でさえ解けなかった呪いを!」


 歓声が上がる。


「なっ、ワーズ…これは」


「言っただろう、この通りさ」


 本当に賢者でも治せなかった呪いを…一瞬で。

 剣を使っていたから、てっきり攻撃系の得意魔法と思っていたら回復系であった。


 黒い根のようなものはなく、残ったのは傷ひとつない綺麗な肌であった。


「なんという力…」


 詩姫やその場にいるものたちは驚きを隠せない。一瞬のうちでこんな多くの者を引きつけるなんて…。

 特異魔法…電気蘇生。呪いと身体を回復させる電撃を放つのだろうか。

 

「あ…あ、あの…」


 すると先ほどまで一言も喋らなかった少女が一言…。


「なっ、封薇が言葉を!?」


 詩姫が驚く。


「あ…の…貴方のお名前を…」


 少女は目を大きく見開き、ワーズを見つめてそう言った。


「孤独の王…ワーズ・ホワイトだ」


 孤独の王って、その流れまたやるのか…。


 だが、周りの者たちはワーズという名に驚いている。

 もちろん羅雲もとても驚いていた。


「なっ、ワーズ・ホワイトだと…数年前シルバーレイク王国で死んだという!?」


「ま、そうですね…実は王国側にはこのこと隠してもらってるんですよね〜。今は色々と旅をしていまして…」


「いいや…待て、たしかワーズ•ホワイトは無法の使い手…魔法を模倣することが能力と聞いたが…」


 羅雲は無法の使い手と言った。魔法を模倣する…それが最初の特異魔法ということだろうか。

 ワーズは目を逸らしながら言う。


「いやぁーこれは…能力の応用というか…ほら!僕の特異魔法ってlevelごとに違う力を発揮するので、その一つなんですよ!」


 すると、俺の横にいた武楼が声を荒げた。


「じゃあ、聞くけどよ…なぜ不審な真似をしたんだ?」


「ギクっ…」


 ギクって、そのまま言葉にする奴いないだろ。

 だがたしかに…それは俺も知りたい。なぜあの時俺に毒をもったんだ。


「あぁ?どうなんだよ?」


「え、ええっとぉ…成り行き?っていうか…」


 嘘下手ということが今わかった。たしかに、特異魔法の違いでワーズのなりすましと勘違いされるかもしれん…。


 すると封薇がワーズの服の裾を引っ張った。


「ど、どうしたんだい?」


 ワーズは彼女の方を見る。そして彼女からは放たれる言葉は意外なものだった。



「あの…一目惚れしました!!結婚してください!!」


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


「ほぅ…」


 場にいる者は、全員目が飛び出した。


「ちょっと、封薇…何を考えているんですか!」


 詩姫はあわあわと混乱した様子で封薇の前へ駆け寄った。


「詩姫姉様…私は姉様と違って結婚する殿方は、私自身で決めたいのです!優柔不断姉様!!」


「ガーン!」


 かなり言葉に棘がある…今まで喋れなかった分、今発散しているのだろうか。


 というかガーンってそのまま言葉にする奴いないだろ。

 ワーズ本人は少し驚いているようだが、ほぼ苦笑いだった。


「お前のどこがいいんだか…」


「僕、謎に女の子にモテるからさ〜」


 ちょっとムカつく。


「私は本気なんです!既婚者だろうがなんだろうが私はあなたと結婚します!!」


 この少女…詩姫よりも頑固なんじゃないだろうか…


「いいでしょう、お父様!?」


「むぅ…そうだな…どうだワーズくん。この子の夫になる気はないか?そうすれば君の裁判は無かったことにしよう!」


 そのようなことを羅雲は言う。

 さすがに、妻がいるんだ…さすがのワーズも断るに決まっている。


「そうだな…いいでしょう!結婚しましょう!」


 ダメだった…常識を持っていると思った俺がバカだった。


「いいのですか!?」


 だが、ワーズはまだ言葉を続ける


「だが、僕にも一つ聞いてほしい条件が…」


「……なんだね?」


「この青年の裁判は王国と同じ三審制で行いましょう…」

 

 三審制…裁判を三回に分けて行う制度のことか…。たしかにそれならばマリーたちに連絡が取れるし証拠も手に入る。


 羅雲は少し考え、口を開く。


「……いいだろう…この結婚儀式の日までの三日間で三回裁判を行おう。」


つづく

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