響く戦火⑤-013
第十三話:響く戦火⑤
〝グシャッ〟
大量に滴る血……あんなにやったのにまだ生きてやがったのかよ。
「おぉっと、まとめて発見〜!」
「…魔族に九生あり…と言うだけあるわ…」
「それをいうなら…猫に九生ありだ」
魔族と言っても、あの師匠の魔法攻撃を喰らっているお陰で奴の体の大半はぐちゃぐちゃ…。
〝ゼビロボ〟…魔族を倒すため専用の魔法攻撃で多大なる致傷を与えることができる。
「そういえば…オズと同じくらいの強さと言っていたが…こいつは…」
「オズ単体が強いんじゃなくて、奴の特異魔法が異常っていうのもあるわ」
「でもよ…神に認められた〝君主〟が三人もいるんだから勝率の1%くらいはあるだろ!」
たしかに、魔王を倒すために選ばれた人間達が君主ならば…少しなら幸運値なんかも上がるのか?
「ちょっと…私を無視しないでくれない?…ほらもう、こんなに体も回復しているんだから…」
お相手は少し汗をかいているが余裕な表情だ…。
〝ザッザッ〟
「本当に…こんなに私の墓をボコボコにしてくれて……」
「な、なに…椿、ラテこの魔力って…」
「大魔法使い…いや、大賢者って」
なんだ、驚いた様子のみんな…魔力がどうとか言っているが…。
というか、まずい楽喜が完全再生している!?
「ちょっとぉ〜、私の戦いを邪魔しないで欲しいんだけど…」
透き通るような水のような青い髪色…そしてその表情…まあ只者ではないだろう。
その男はすでに、街を全て元通りにしていたのだから。
「ひどいなぁ、登場早々怒られるなんて…よし名付けよう…〝君たちを偉大なる墓荒らし〟として…私の名は阻止雨だ…」
その途端大気が歪み、先ほどの魔族の動きは止まった。
威厳のあるその風貌はまさに、その名の大賢者であった。
長いローブを着て、穏やかそうな顔つきの男だ、これが阻止雨…
「そういえば、ここって大賢者のお墓があるんだよね…じゃ、この人も殺しちゃお!!」
まずい楽喜の矛先が変わってしまった、大賢者とはいえ、厄介な魔族だ…すぐさま師匠は杖を構え魔力を溜める。
「おい、大賢者だか気をつけろ!」
〝ズガガガガガガガァッ〟
「ぐぅっ…」
「おっと、この方達を殺してはいけないよ?、魔王を倒す道を開く君主達なんだから…」
師匠ゼビロボと同じような気が感じられる、楽喜はそのビームのようなものに当てられる。
「若干二十歴の実力があるんだ…そのくらいには負けんよ………いない!?」
どでかいビームでカッコをつけたように思われたが、肝心のやつの姿がない。
「あ、あれれぇ…」
「おい、あれ見ろよ!!」
「な、なんだありゃぁ…」
ラテの指した先には一人の老人だ…その腕には楽喜を抱えている。
「ワシの孫を…よくも…」
「そこのジジイも魔族のようね…」
「覚えておれ、貴様ら…」
その老人は闇へと、吸い込まれ消えてしまった。
風のように現れ、風のように去っていった…孫と言っていたが楽喜の知人なのだろうか。
「はぁ、逃しちゃったじゃない!!」
「いや、本当にすまない…いきなり戦犯になってしまったよ」
その男は申し訳なさそうに言う、確かに取り逃がしたのはまずいが…。
「とりあえず…疲れたぁ」
「そんなので疲れているのか…ラテ…所詮は警備係止まりだな」
「はぁぁぁ、てめぇ!!」
衛兵隊同士は喧嘩しているし、もうどうすればいいんだ、それを割るように阻止雨が言った。
「……よし、気配が消えた…怪我人はー、そこの五将眼の二人…血だらけではないか、みなさんお詫びと言っちゃなんだけどうちに来てくれ」
少し場を離れ、大きい屋敷のような所へと連れてこられた。
どでかいそこは、阻止雨の家のようだ。
「まあまあ、適当なところに座ってくれて構わないよ」
かなり高そうな屋敷だが、人はいないようだ。
阻止雨という男は自分たちに菓子を出す。
「しかし、なんのつもりだ…急に現れて、魔王や俺たちのこと…」
「ラテ黙れ…俺から質問をする、おい賢者!!」
「待ちたまえ、衛兵隊はこれだから器が小さいと言われるんだ…」
呆れたような顔でそんなことを言った。
阻止雨は片手に菓子を持ちながら、俺たちに自己紹介をする。
「私は阻止雨…大賢者と言われている、久しぶりに里帰りに来たところだ」
「魔法衛兵隊の椿だ、右のはラテ…」
「私はマリー・ゼロウスよ…ま、知ってると思うけど」
ちょっと師匠は機嫌が悪そうだ、無理もないか…魔族を取り逃がしてしまって。
「俺はこの人の弟子のフィナシェだ…その、大賢者というがなんなんだ」
少し気になっていたが、賢者と魔法使いの違いを聴くことにした。
「おい、今聞くことかよ…」
聞きたいことはたくさんあるが、先ほどの魔法攻撃の威力を見るに、俺よりも上手…。
まずは敵対意識を見せない方が最適かもしれん。
「そうだな、まあ君の師匠が攻撃特化だとしたら、こちらは仲間を守る守備型かな?」
「その通り…大体学者なんかがなるものね、魔法の開発やら難病の治療なんかが主な仕事よ」
つまり、医者的なやつか…魔法使いやら騎士なんかは魔王がいなくなってから戦う必要がなくなり、かなり減ったと言われるが…。
そういった、魔法の開発や医学の進歩などに役立っているのか。
「俺たちが今聴きたいのは、そんなことではない…先ほど言っていた魔王を倒す鍵」
「まあ、待ちたまえ…衛兵隊くん、これからお話をしよう…魔王のことを」
つづく




