ザ・オークション①-003
第三話
街をしばらく歩きかなり大きい建物がならんでいる。
街なんて半年ぶりくらいだろうか。
「ほら、フィナシェどうよ、この変装!」
師匠は一応世界では犯罪者で通っている、そのため、せめて変装でもしろと言ったが…
「髪を下ろしてサングラスをかけるだけで、こんなに変わるとは…」
意外に別人に見えるものだ。
「師匠、このオークションというやつで何をするというんだ」
「まずオークションというものを教えないとね、商品に一番でかい金額を提示した者がその商品を買えるって感じかしら」
……多分省略しすぎな感じだと思うが、すると師匠が商品表を指で指す。
「これが狙いの代物よ」
「……棒?」
「杖よ!、これがあれば旅がもっと楽になると思うの」
「杖なんて、なくても魔法は使えるんじゃないのか?」
「は?、杖がなくても魔法が使える……?」
魔法使いのイメージは、手から炎を出したり飛んだりだと思うが、今の言葉は魔法使いにとってかなりの地雷だったようだ。
「あんたね、杖があるのとないのとじゃすごい差があるのよ!」
まずい、キレさせてしまった面倒臭いな
「稀にいる天才以外の魔法使いにとっちゃ杖は必需品…まあ魔法を使わないあんたにはわかんないだろうけどね!!」
少しキレ気味の大声…完全に注目の的になってしまっている。師匠の後ろからコソコソと人々が言う
「ちょっと…喧嘩かしら?」
「怖いわねえ」
「あー、もういいわ準備しに行くわよ!」
驚く師匠に手をひかれる。
着いたのは街の銀行…師匠は窓口で金を下ろしている、印鑑はナディリアという偽名を使っているらしい
「金貨あるだけ下ろしてちょうだい!」
なにか、すごいことを言っているな師匠は…
「おい、いいのか?そんなに使ってしまって、というか…なぜ偽名の口座でそれだけの金があるのだ」
師匠はニヤニヤとこちらを見て、自慢げに言う。
「王国外に隠し財産があったから、数軒の銀行に預けてるの」
隠し財産か…だがそれほどあるわけでもないだろう。
「金貨三万枚になります」
「三万枚!?」
おい、流石に金持ちすぎるだろ確か、金貨百枚がダイヤモンドと同じ価値だったような…
とりあえずそれだけで人生何回か働かずに生きていかれると思うが!?
「これしかないんだっけ、まあいいわフィナシェこれで綺麗な服買ってきなさい!」
どっさりと金貨を俺の手に渡す、凄すぎるもうこのまま持って逃げていきたいくらいだ
「じゃ先に会場行ってるわよ、逃げたら呪いかけるからねー」
「……あ、ああ」
そして、服屋に行き適当なスーツを買い、身だしなみも少し整えた、新品でとても綺麗なのだがスーツというものはどうも暑苦しい。
「よし、じゃあ行くか…」
「おい待てぇ!!」
後ろから大きな怒鳴り声が聞こえる。
そこには右手に袋を抱え、どこかの店の店員に追われている男がいた。
「まったく盗みか……俺がどうにかすることじゃないな」
ズザッ
砂の擦れる音がした、走る男の目の前にその音の正体が前に立つ。
「な、なんだお前は!!どきやがれ!」
「なんだとは、こりゃ失礼なこった…」
男は刀を持ち、その追いかけている店員までもが立ち止まった
「…まさかその…その緑のコートの紋章は」
「あ?、まあそうだな魔法衛兵隊…って言えば誰でも俺が何者なのかわかるな」
魔法衛兵隊…世界の秩序を守ると言われる組織のことだよな
こんな街にいるものなのだろうか。
「ちっ、魔法衛兵隊だろうがぶっ殺してやる」
「黙れ、ほら早くお縄になれ」
……!?、自分が見ていたのは男の前に立つ魔法衛兵隊だったと思うが…
なぜだ衛兵隊がすでに男の持った袋を持ち男は倒れていた。
「何が起こった?」
盗んだ男は何が起きているか分からない状況だった
「ちと、急所をつついただけだ、店員さんこいつキツく叱っとけよ」
男は風にコートをなびかせ去っていった。
「あ、ありがとうございます!」
なんなんだ、あれは風のように現れ去っていったが…そして向かったのは会場の方向だ
「一応師匠に知らせておかねばな…」
とりあえず、用事はもうない…早く師匠の元へ急ぐとしよう。
「やっときたわね、ほら入るわよ!」
「おう、師匠そういえば先ほど魔法衛兵隊がいた少し警戒しておけ」
「魔法衛兵隊ね、なぜこんなところに…わかったわ気をつける」
それにしてもこんなに広い建物に入ったのは初めてだ。
数回ほど街に繰り出したことはあるが、まるで屋敷のような広さだ。
「そのオークションというのは金持ちの遊びみたいなものなのだろうか」
「そうだと思う、私も競売にはそんなに詳しくないけど庶民がやる者じゃないと思うわ」
「そうだ、師匠これからは偽名のナディリアと言わせてもらうぞ」
「そうね、頼むわ」
「おっと、ナディリアさんこんにちは」
早速と誰かが師匠の偽名で呼んできた。
「げっ……」
後ろから男声がして思わず振り返る。
そこにいたのは金髪でタレ目の男…師匠は何か苦い顔をしているが知り合いか?
「おっと、君はナディリアさんのお連れ様かい?」
…とりあえず返事くらいは返したほうがいいのか?
「デ、デイビスさん、お久しぶりね!」
話そうとする自分の口を塞がれる。
「ナディリアさん、やはり目的はあの杖のようですね」
「あら、勘が鋭いんですね」
「いやあ、僕もあの杖を狙っていてね、あの杖は保持した者の魔力を最大限に引き出すことができるという」
あの杖かなり師匠には高価なものらしいなこいつも狙っているのかまったく困ったものだ。
「というか、あの杖のためだけにきている人も大勢だからねえ…」
少々ムカつく喋り方だ、だが確かに周りと比較すればこいつの服装やら装飾は金がかかっていそうだ。
「そうね、でも最後に残るのは魔法衛兵隊のお偉いさんのあなたくらい…だと思うわ」
魔法衛兵隊の人間なのか、こいつはまさかさっきの奴とも関係があるのだろうか。
とりあえず安易に信じられるやつではないな
「うーんですが、この間の魔導書の時のすごかったじゃないか、金貨二万枚だっただけ?、すまないねー勝手に見てしまって」
金貨二万枚って、この人…
一方師匠は盗み見されていてご不満そうだ。
「ふふ、そろそろ始まりますねー、少しおめかししておこうかしらー」
そう言い、どこかへ行ってしまうまったく俺を取り残さないでほしいな…デイビスと名乗る男はネックレスをジャラジャラと鳴らし自分に話しかける。
「君はナディリアの護衛さんかい?」
護衛か、少し違うが確かに金持ち女に付き添う男なんかボディーガードくらいであろう。
とりあえず怪しまれると面倒臭い今は護衛としておこう。
「ふっ、オークションが始まれば私たちは敵だ……これは君だけに教えてあげよう」
「なんでしょう…」
相手は地味にソワソワしている様子だ、少し自分に近寄り耳元で囁く。
「欲しいものはなんでも手に入れる…たとえ勝負で負けたとしても…」
「……」
「じゃあね」
そう言い残し、一人部屋に入っていった。
勝負で負けたとしても手に入れる…つまり師匠を殺してでもあの杖を奪う気か?
「本当に恐ろしい男ね…」
デイビスが見えなくなったと同時に師匠が現れた。
「会話聞いてたのか…というかあのデイビスという男はなんなんだ」
「ここで知り合った奴よ魔法関係に謎に詳しくて名刺をもらったの」
そう言い師匠はあいつの名刺を差し出した
名はデイビス・ネイラー魔法衛兵隊指揮官…と書いてある。
「指揮官といえば、あの組織の中でも結構な地位なはず…」
どうやら、彼は気に入ったものに名刺を渡しているそうだが…
それなりに財力もありそうだ。
「すまない、そこの人金髪で装飾がすごい男見なかったかい?」
肩をトントンとされ、声をかけられた。
「…あんた!?」
そいつは、街で見た刀を持った衛兵隊だ、思わず声に出してしまった。
「いや…すまないどこかで会ったか?」
それをカバーするように師匠が指を指しその男に言う。
「あ、デイビスさんよね、あっちにいったわよ!」
「本当か、すまんなお嬢さん」
男は刀をゆらゆらと揺らし師匠の指した方向へ向かっていった。
やはりデイビスと関係があったのか。
「危なかった、ありがとう師匠」
「それはいいけど、結構面倒なことになりそうね」
つづく




