征服の能力①-017
第十七話
「よし、イラア。お前は一週間、阻止雨に稽古をつけてもらえ」
大島はそう言い残し、イラアの肩をポンと叩いた。
「あなたが……阻止雨さんか。よろしくお願いします」
イラアはまっすぐに手を差し出した。
「ん?あぁ、よろしく。イラア」
阻止雨も手を差し出し、二人はしっかりと握手を交わした。
「よしイラア、私と佑月はそこら辺で用事を済ませてくる。一週間、しっかり頑張れよ」
そう言って、大島と佑月はその場を離れた。
残された二人。阻止雨は微笑みながら口を開いた。
「イラア……今、君の手に触れてわかった。君、ものすごい量の魔力を持っているね」
イラアは驚き、身を乗り出した。
「なぜ分かるんですか!?」
「魔法の原理というのは、自分の血液の循環の速さに比例しているんだ。君の血の巡りは……異常なほどに早い。力を磨けば、君はもっともっと強くなれる」
イラアは拳を握った。
「ありがとうございます。では、修行をお願いします!」
「よし……じゃあまずは魔力の放出の仕方からだ。全力で来い!」
――それから、イラアの過酷な修行が始まった。
毎日毎日、魔力の制御、放出、攻撃、回避――すべてを叩き込まれた。
そして6日目のことだった。
一枚の葉が風に乗ってヒラヒラと舞っていた。
その葉が地面に落ちた――その瞬間。
〝ドゴロォッンッ!〟
空から雷が落ちた。葉はチリひとつ残さず、跡形もなく消え去っていた。
「よし、イラア。よくやった。……今のお前は、俺でも手に負えないくらい強くなったな」
「いえ、阻止雨さんの修行があってこそです!」
イラアは謙虚に頭を下げた。
そう、彼はこの6日間で圧倒的に成長していた。
そして――ついに、魔力階級 15歴級 に到達したのだった。
「イラア、お前は……15歴級になった」
「ということは、魔力量の上限まで到達したということですか?」
だが阻止雨は首を横に振り、優しく笑った。
「ふふ、それは違う。実はな、15歴の上には――まだ一つだけ、16歴という階級が存在する」
「16歴……!?」
「そうだ。だが、15歴と16歴の間には〝域〟という段階がある。域は1から10まであってな、ちなみに私は7域だ」
「……そうか。まだ上があったというわけか」
「だからこそ、最後の修行だ。――一万キロ先の街まで、ワープ魔法を使わずに行って、明日までに戻ってこい」
「はい!では行ってきます!――〝スペリディ〟(脚強化)!」
〝ダダッ〟
――2時間後。
「よし、着いた!……またすぐ戻るぞ!」
そう思ったイラアだったが、ある異変に気づいた。
「……なんだ? 街に、人っ子一人いない」
不気味な静寂が街を包んでいた。
その時――どこからか、太鼓のような音が響いてきた。
〝ドドン……ドドン……〟
イラアは音のする方向へと向かう。
そこは街の中心部――寺のような建物。
無数の人々が集まり、何かを一斉に唱えていた。
「皆、この村の女神――ゼロウス様を讃えよ!」
人々の上に立つ、一人の女性が言った。
「よしよし、そうだ。私を讃えなさい」
そう――その女こそ、カムイ七桀の一人。
麗桀ゼロウスであった――!
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