ダンジョンに行こう③-011
第十一話
「なに? 触手は全部切ったはずじゃ…」
〝グハァッ〟
佑月は体を貫通され、重傷を負った。
「大丈夫か、佑月! 今すぐ行く!」
触手は、大島を目がけて襲いかかってきた。
だが、大島は魔力を込めるのに、なぜか手こずっていた。
――そう、ドラゴンとの戦いの時、喉を切ってしまったのだ。
魔力は呼吸を通して練るもの。呼吸がしづらい状態の大島は、うまく魔法を使えなかった。
「クソッ……アコウカ!!」
近くの物体と自分の位置をすり替える魔法――アコウカ。
「しょうがない、自分が受けなければ」
2人の位置が入れ替わった。
触手がイラアに向かって迫る――その時、1人の人物がイラアの前に立ちはだかった。
彼を守ったのは、見知らぬ女性だった。
「大丈夫かしら?」
その女性は眼帯をつけていた。
そして、静かにその眼帯を外した――そう、彼女は五将眼だった。
その瞬間、イビルの触手が3本、彼女に向かって襲いかかった。
〝ズバババッ!〟
「あなたは…その目は……」
「そう。五将眼……君もか」
イラアは、自分以外の五将眼の持ち主に会ったのは初めてだった。
「離れてください!」
大島が叫び、魔法を放った。
「デッドパヒューム!」
死の香りを放つ魔術――デスパヒューム。
その魔法はイビルを包み込み、イビルは消滅した。
イラアは、すぐに佑月のもとへ駆け寄り、安否を確かめた。
「よかった……息はある。回復魔法を使えば大丈夫だ」
大島が口を開いた。
「あなたは……」
「私はトワール。15歴ほどの冒険者だよ」
イラアは尋ねた。
「なぜ自分たちを助けてくれたんですか? 五将眼とわかっていて、守ってくれたんですよね?」
「仲間を救っていたからだよ」
彼女はそれだけを言った。
イラアたちは、トワールの協力もあり、無事にダンジョンから抜け出すことができた。
「じゃあ、私は先に行くよ。近くに宿があるから、そこで休みなさい」
「ありがとうございます。どうかご無事で」
イラア一行とトワールは、こうして別れた。
そして夜――彼らは宿で静かに休むことにした。
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