頂点を欲す者①-030
第三十話:頂点を欲す者①
鳥は鳴き、風の音が響く。空は静かではない…。
この浮く地に立つ俺たちは目の前の魔族を倒さなければならない。
「どこからでもかかってくると良い…。」
漆黒の目を光らせ、俺たちにそう言った。
言われなくてもわかる…。魔族になる呪いを自ら二回も受け、先ほどとは比べ物にならないくらい強くなっている。
俺は足を一歩踏み込む。
「やってやる…」
「跳んだか……。今の私は魔族の魔法を扱える。第六魔法戦術…。レビリオ」
〝スドッ〟
腕で防ぐ…。焼けるほど痛い。
「おらぁぁぁっ!!」
「ほう、殴りで魔法を跳ね返すか…」
魔法攻撃を破り、そのまま拳を羅雲に向ける。
打ち込む…死蔵を…。
「死蔵…っな!?」
…壁を蹴ったような感覚…。
びくともしない…。
「言っただろう?私は超越魔族だ。」
〝ドスッ〟
「ぐぁっ!!」
腹に刀を刺された。というか…動きが早い。
避けることができなかった…。これが超越魔族。
楽喜との戦いを思い出した。
「こいつ…俺一人じゃ倒せないやつだ…」
力が入らない…。なんだこの感覚は。
「刀に毒を塗っておいて良かった。君の体じゃ数分間はその状態だ…。」
笑い俺を見下ろす。まずいぞ…。師匠、ラテここに来てくれないと全滅だ。
「サリム!!ラスティと逃げろ!!」
俺は後ろの二人にそう呼びかける。
「いいや、その必要はないぞ!!」
立っているのは、長身の男。
赤い髪を風で靡かせ、剣を持っている。それに緑色のコート…。ラテと同じ服装…。
魔法衛兵隊だ。
「誰だ…知らぬ間に…」
「俺の名はラスティだ!!」
ラスティ…どういうことだ。
「フィナシェ、ここは俺が食い止める!!サリム、回復魔法で回復してやるんだ!!」
「は、はい!!」
その男…いや、ラスティは剣を構える。
「はぁっ!!!」
〝ガキィンッ〟
「ふっ…筋がありそうな奴だなぁ…」
羅雲は右手の刀身で、ラスティの一撃を受け止める。
「そちらの刀はナマクラのようだな!!」
「はぁ?」
〝パリィィィンッ〟
羅雲の刃は真っ二つ。
「本撃が来るぞ!!」
〝スッ〟
「なんだと…ぐぁぁぁぁ!!」
斬撃が遅れてやってきた。
「なんだ…あれ…ラスティなのか?」
「い、今の…魔法でも加護でも何でもない素の状態であの斬撃…。〝龍殺し〟だ…。」
サリムはラスティの剣技を見てそう言った。
「龍殺し?誰だそりゃ…」
「人名じゃなくて、西部に伝わる伝説の剣技です」
羅雲はラスティの奇妙な剣技に驚かされる。
「何なんだ…何をした!!」
「遅い斬撃と早い斬撃を成しただけだ!!」
輝くような笑みでラスティは言った。
意味がわからん…。早すぎる斬撃で後から相手が切り付けられたのか?いや反対か?
「どんどん行くぞ!!」
ラスティは剣を振るう。
羅雲は切り落とされた右手の刀身をすぐに復活させ、身を守る。
「遅いぞ、羅雲!!」
羅雲の後ろへ滑り込み、足を絡め体勢を崩す。
「ぬっ…」
刀を羅雲の首に突きつける。
「…いいや…まずはこちらからか…」
刀を胸へと運び、すぐさま二回ずつ両胸を刺す。
「ぐぁぁぁぁぁ!!!貴様ぁ!!!」
羅雲は大きく叫び、大量の血を流す。
ラスティは後ろに体を退き、俺たちの目の前に立つ。
「フィナシェ、大丈夫か!!」
「ああ、回復は十分だ…それよりも…あれは」
「ああ、奴は超越魔族と言っていた…。超越魔族には心臓が三つあると聞いたことがあってな。おそらく二つは壊すことができた!!」
ラスティは刀を振り、羅雲の血を振り落とす。
ラスティは俺の手を取り、引き上げる。
「今日あと人間になれるのは五分間…。後五分で決着をつけねばならない…いけるか?」
状況は全く飲み込めないが…一人では部が悪い。
ラスティが人間状態のうちに決着をつける。
「わ、私も…援護攻撃をするので…」
「頼んだ、サリム!!」
「こ、小賢しい…小賢しいぞ、クソどもぉぉぉ!!!」
ラスティは素早く剣を振う。羅雲は気づいたのか、身を屈む。
「もう、後ろから斬っている…」
〝シャキン〟!!
静かに羅雲の背中を切り裂く。
「がっ…強化魔法か…」
「止まっている暇はないぞ…死蔵!!」
「ぐぁっ!!」
死蔵が入った…サリムの強化魔法でかなり技が強くなっている。
羅雲はかなりのダメージを負うが、すぐに再生を開始する。
「強化したのならば…こちらは防御力を上げるとしよう」
羅雲は魔法で皮膚が硬化する。
「第九魔法戦術っ!!ロード・オブ・デザート!!」
羅雲は砂の攻撃を放つ。だがこちらにも魔法使いはいる。
サリムは魔法を言い放つ。
「ウォーター!!」
サリムの水魔法で砂は固り、無効化される、
羅雲は苛立ちを隠せず、魔法攻撃をやめない。
「…うぉぉぉぉぉぉ!!!」
魔法陣からは一度に数十発の攻撃が繰り出させれる。
だが、そんなものは奴に通用しない。
「ほら、ほら、ほら!!どんどん撃ってこい!!俺が全てを斬り裂く!!」
「くっ……フィナシェはどこだ!?」
「ここだ…死蔵…碧落…」
〝ズシャァッッ〟
俺の拳は紫の光を放つ、五将眼の部位強化を最大限に活用した技…。反動はかなり大きい。
拳は羅雲顔面をメリメリと歪ませる。
「ごはぁっ……。なんだ…先ほどと比べ物にならない。回復が追いつかん…」
「心臓を二つも破壊されりゃ…回復能力も機能しにくくなるだろ…」
羅雲顔面はぐちゃぐちゃに…このままこいつを殺す…。
強烈な痛みが俺を包む。
「このまま……っがっ…ぐぁ!!なんだ、なんだこれは…」
「フィナシェ!?大丈夫か!!」
ラスティの声が遠のく…。早く…とにかく早く羅雲を倒さなければならないのに。
なんだこの苦しみは…息が…意識が…。
〝バタン〟
身体が倒れる音共に、またもや鳥の鳴き声が響き渡った。
「ふはっ…良かったよ……もう彼は蝕まれいている…私の呪いにな…。」
つづく




