かぐや姫のお弁当は、無理難題
なろうラジオ大賞6 参加作品。
テーマは「お弁当」2巡目です。
セレブ達の通う名門高校。
ここに一人のお嬢様がいました。
名を香綾という絶世の美少女。その彼女には毎日求婚者が絶えません。
金持ちのボンボンや、親の七光の息子、コネだけで入学、政治家のドラ息子、顔とルックスだけのクズ男と、さまざまです。
本人には婚約の意思は全くありません。
しかし親同士の体裁もあり、無下に断ることもできませんでした。
ところが、遂に我慢の限界を超えた香綾様。
一計を案じ、無理難題を押し付け、求婚者を退けることにしました。
しつこく付き纏う男子5名を呼び出し、ある条件をクリアしなくては、お付き合いしないと言うのでした。
「私の舌を唸らせるほどの、最高のお弁当を5人協力して作ってください。
それぞれ食材と料理は指定します。」
一、日本一の銘水の湧水で作られた“コシのこまち”を、国宝級のダイヤと呼ばれる備長炭を使い、かまどで炊いた白米。
一、アンデスで無農薬栽培したトマトとキャベツのサラダ。
一、幻の鳥と呼ばれる“トッ鶏”の初卵で作った卵焼き。
一、その自然飼育された“トッ鶏”の雌の若鶏の唐揚げ。
一、50年に一度できると言われている“紀州北低梅”の梅干。
「それぞれ手に入れて一つのお弁当を制作して下さい。
課題の至高の食材を手に入れ、一番美味しいと感じた方と、私はお付き合いしましょう」
実在するのかどうかも定かではない食材。不可能な無理難題に、5人とも諦めて去っていくのでした。
こうして昼休み、邪魔者を追い出して独り教室に佇む香綾様。
そこへ一人の男子生徒が近づきます。
「お嬢様」
「校内でその呼び方は辞めなさいと言ってますよね」
「失礼しました、香綾様」
この者は香綾様の屋敷の執事です。
身を隠して同じクラスの生徒として通っているのでした。
「その様な嘘をつかれて、後々大変ですよ。
なんです? コシのこまちって?
トッ鶏?北低梅?
そのようなもの、あるはずないでしょ」
「いいのよ、あんな奴ら」
「あまり無茶ぶりするのは、どうかと思いますよ」
「それよりも……」
「お持ちしてありますよ」
執事が取り出したのは、一つのありふれたお弁当。
「やはりこれに限るわね」
「ご希望される食材は使用されてませんが?」
「そんなの関係ないわよ。だって、あなたの作る料理は全て美味しいのですから」
「お褒め頂き、光栄です」
「この調子で、毎日お味噌汁、作ってくれればいいのに……」
「今、お作りしましょうか?」
「そういう意味で言ってるんじゃないわよ!」
これを書くために、「竹取物語」と「美味しんぼ」を読み返しましたよ、ええ。