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今日の物語は少年の冒険を描いた小説。
いろんな人に裏切られて傷つけられてもそれでも前に進むことを決意した主人公。紹介分には「ハッピーエンドなんてものは存在しない」と書かれていた。
物語が進むごとに登場人物の心情描写に引き込まれる。そんな素敵な作品。
「遥稀、おはよう」
「あ、蒼、おはよう」
「今日も集中して読んでいたな。どんなの?」
「今、主人公が殺されかけてるところ。サスペンス?というより、ダークファンタジー?」
「へぇ、それはそれで面白そうだな。あ、これ読み終わったから」
「それじゃあ、次の巻も...」
「まじで?実は続き気になってたんだよな...。ちなみにどう考察した?」
隣の席の早緑蒼は、表紙を指さしながら言った。オカルトと謎解きが合わさったような内容の小説で、私が勧めた小説。蒼は現時点での考察を話せる程度には仲のいい友人だと私は勝手に思ってる。
とある理由で席替えの際最前列を指定して座る私とその隣か斜め後ろを指定する変わり者。
私が言えた口ではないが、前の席は先生からすぐに見える人気のない席なのにわざわざ指定するのは変わり者だと思う。
本人は授業に集中したいからと最もらしい理由を述べていたけどきっとそれだけじゃない。
これは絶対に女子と関わる機会を減らすためだ。
以前から下級生に呼び出されることの多く、よく告白されているのはよく知っている。何故なら呼び出すように頼まれるのは何故か私だから。そして、ある日困ったように「女子苦手...」と疲れた目でつぶやいていた。
イケメンって大変だな...。
「遥稀、どうした?」
「いや、もう少しで席替えだと思って」
「ああ、そういえばそうだな。今回も動く予定ないのか?」
「うん。見えやすいし、学級文庫も近いし、それに...関わる機会、減らしたい、し...」
「そっか。それじゃあ、俺も動くつもりないから、よろしくな」」
「え...」
「ん?どうした?」
「てっきり、今回はくじ引くのかと、思ってたから、」
「いや、そんな危険な博打はしないって。良い席になる確率低いし...。何より、わかんないとこきける博識もいるからな」
「博識...?あ。蒼、英語と古典苦手だから?」
「そういうこと。数学は教えるから、交換条件な?」
蒼は笑いながら言った。
話していると教室が徐々に賑やかになっていく。それに伴い、私の肩は強張っていく。
朝のホームルームまであと15分。私はその時間を気にしないようにするために本を開いた。