第7話 華の国
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(……えー。女王様来ちゃったよ。なんでまた森の中に?)
「えーと,女王様なんですか?」
ヒロイズムがやや胡乱げな目で問いかけると,マリアさん……女王なのでマリア様というべき? は艶然と微笑んで「そうですわ」と答えた。
(……うーん。アニメには華国に新しい女王がいるって話は出てたけど,出会ってないし……こんな最初の方は影すら無かったと思うんだけどなぁ)
けれどここが本当にアニメの世界かはわからないので,決めつけるのは良くないだろう。
そう思って,そこは深く考えないことにする。
「女王様ってことはー,このお花の国で一番偉いってことー?」
リリーがいつもの口調でそう聞くと,「ちょっ,リリー不敬!」とリベが焦ったように止める。
そんな二人を微笑ましそうに見つめたマリア様は,小さく頷いて口を開いた。
「お聞きしていた人数とは違いますけれど,そこのお二人はフレイムさんとヒロイズムさんでお間違いないかしら?」
「え? ……えーと,誰からお聞きに?」
一瞬困惑してそう返答すると,マリア様は笑みを深めて裾の長いドレスを翻した。
バサッと大きな風の音がして,突風が吹き付ける。思わず目を瞑ると,次の瞬間,急に視界から緑が消えた。
「え? ……森が……無くなった?」
高い気が乱立していた森が元から存在していなかったかのように,僕等は華国の長い道の真ん中に立っていた。その先に,美しい花々に囲まれた美しい城が見える。
「このようなところでの立ち話はなんですから,我が城にいらっしゃい。我が華国は貴方達冒険者を歓迎いたします」
よくわからないまま僕等はマリア様についていく。
何と言うか,貴婦人らしさを象徴するようなローブ・ア・ラ・フランセーズはものすごく動きにくそうなのに,長旅で足を鍛えているはずのヒロイズムと同じくらい速い。
マリア様だけがそうなのか,前世でローブ・ア・ラ・フランセーズを着ていた人もなのか知らないが,もしかしたら見た目に反して動きやすいんだろうか。
徐々に,白塗りの壁に金や紅,躑躅色の模様が描かれた城に近づいていく。
「少しお待ちくださいな」
門の前に立ったマリア様はそう言って艶のある焦げ茶色の門に触れて,何かを唱える。
「わぁっ……!」
門に描かれた複雑な模様が段々深紅色に染まっていく。いくつもある模様の真ん中に嵌め込まれた魔石が順番に光っていく。全てが光った瞬間,門全体が強く光った。
そして,ゆっくりと内側に開いていく。
「「「「おかえりなさいませ,女王陛下」」」」
マリア様が一歩足を踏み入れた瞬間,控えていた彼女の側近達が一斉にザッと跪いて声を揃えた。
「マリア様,こちらへ。そちらの方々は彼女について行ってくださいませ」
茶髪を後ろで一つにまとめた三十路手前くらいの女性が側近の間から進み出てきて,城に入っていくマリア様の後ろについていく。
「……え,えっと。わ,私に,つ,ついてきてくださいませ……!」
彼女の後ろから出てきたのは,腰くらいまでの金髪のおさげが特徴的な僕等と同じくらいの少女だった。
茶髪の女性と同じメイド服(?)を着ているので,メイドだと思う。見習いとかだろうか。
おどおどとした雰囲気で,桜色の瞳が周囲を探るように小さく泳いでいる。
「えーと,メイドさん?」
「ひゃうっ! はっ,はい! メイドでございますぅ! 新人ですっ!!」
(とんでもなく声が裏返ってる。なんで……?)
「ミュリエル! おかしな発言をするのではありません!」
「もっ,申し訳ございません!!」
ミュリエルと呼ばれた(自称)新人メイドが先輩と思われるメイドの叱責に肩を震わせて謝る。
「……あの,大丈夫ですか? えーと,ミュリエルさん?」
リベが心配そうに城に向かって歩き始めたミュリエルさんを見つめる。
ミュリエルさんは桜色の瞳に涙を溜めていた。
「こっ,こちらが応接間になります。 しょ,少々お待ちくださいませ! お,お茶をお持ちいた,いたします!」
ミュリエルさんはそう言って,脱兎の如く去っていった。
「……なんで,あんなに怯えてるのかな? それにマリアさんも本当に事情を説明してくれるの?」
赤い布に金の刺繍がされた豪奢なソファに座って,リベが呟く。隣に座ったリリーも頷いた。
「……マリアさんは悪い人には見えないけど……あの後ろについてった茶髪の人は明らかにオレ等に好意的じゃない。あと,ミュリエルさんだっけ? を叱ってたメイドさんも,オレ等に関わりたくないって感じが見て取れた」
(それは僕も同感。茶髪の女性なんて,僕等を振り返った目に,明らかな蔑みの光があった。ミュリエルさんの先輩メイドみたいな人も,僕等のことを鬱陶しそうに見ていたし)
「えっ,えっと,我が国のお茶で,ございますっ!」
赤い花が描かれた白磁のカップを4つ並べて,よく似たデザインのポットからお茶を注ぐ。かなり零れているけれど,気にしない,気にしない。
「えっと,まっ,マリア女王陛下はっ,もう少しお時間がかかるそうでそうです!」
言い切ったミュリエルさんが頬を真っ赤に染めて顔を伏せる。かなり噛んでいた。
「あの,ミュリエルさん。今,特にやることないのでミュリエルさんの話,聞かせてくれないですか?」
ヒロイズムの申し出に,ミュリエルさんは鳩が豆鉄砲を食ったような顔で僕等を見た。
最後までご覧いただきありがとうございます
一言:書き終わって読み返してみると,ほとんど物語が進んでいませんね。第2.5話と同じような(?)感じですかね……(-_-;)