第3話 敵組織
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「……ということがあって……」
ヒロイズムがそう言って過去の話を締めくくる。
誰もが沈黙していた。
(……やっぱり,ヒロイズムが実家を出てきた理由にあのサンクチュアリーが関わってたかぁ)
サンクチュアリー。
一般には自然環境が保護される場所などの意味があるが,神聖な場所,避難所などの意味もある単語だ。
このアニメでは神聖な場所という意味で使われている。
このアニメにおいて,サンクチュアリーはいわゆる【敵組織】だ。
ヒエラルキー型組織で,下っ端構成員がおよそ2000人ほどと幹部が10人くらいいて,その中でもトップレベルで優秀な四天王と呼ばれる4人がいる。あとラスボスだ。
ここがアニメ通りかはわからないため,正しい数は決めつけられないが,2000を超えるのは間違いないと思う。多分。
「その……なんだっけ。サンサンアリーだっけ? その人達を探してるの?」
重い雰囲気を綺麗なまでにぶった切ったのは,ポジティブ思考のリリカルだった。
空気を読んでいるのか読んでいないのか,可愛らしい仕草でコテンと首を傾げる。
「サンクチュアリーな。そうだよ。アイツ等を見つけて復讐するってあの時誓ったんだ。だから,フレイムに協力してほしかった。それに,仲間がたくさんいた方がいいと思うから,君等にもついてきてほしい。……でも,だめだよね。そんな自分勝手な理由で,危険な相手に立ち向かわせるつもりはないから……その」
そう言って,ヒロイズムは辛そうに俯いた。
「いいですよ。ついていっても。リリカルもいいと言っています」
けれど,ヒロイズムの予想に反してリベラルは納得したように頷いてそう言った。
「……いいの? ほんとに? 危険なんだよ?」
「もちろんだよー。私達だって危険な旅は慣れてるもん。お安いごよーだよ」
「リリカルの言う通り,慣れています。……それに,わたしたちが伯母夫婦の申し出を断ってまで音楽の旅に出たのは……両親に何もできなかった後悔を……他の人が感じないように,楽しい気持ちになれるようにでしたから」
リリカルとリベラルは,小さく微笑む。
(アニメでも同じことを言ってたけど……アニメよりも感情が籠もってるなぁ)
「そっか! ありがとう! これからよろしくね! えーと」
「私はリリーでいいよ! リベ姉のことはリベって読んで!」
「ちょっ……まぁ,リベって読んで。敬語禁止ね」
「うん。わかりまし……」
「敬・語・禁・止・だよ☆」
「すみませ……ごめん」
「よろしい☆」
(__なんの時間?)
「さて。そんなわけでリリカ……リリーとリベ……が仲間になったけど,どこに向かう? さすがに目的地もないまま歩くわけにもいかないよね?」
僕が気を取り直して聞くと,ヒロイズムは笑みを浮かべて空を見た。
「オレ,フレイムの家に行く途中に,怪しい奴らを何回か見かけたんだ。そいつ等は皆同じ方向に向かっていった。気になってそいつ等について行ったら,美と花の国って有名な【華国】の森の中に入っていったんだ。僕はそこに絶対何かあると思う。だからそこに行きたい」
(華国かぁ。確かそこにはサンクチュアリーの幹部がいたような……)
「華国なら旅の途中に立ち寄ったわ。あそこでは良い曲がたくさんできたの」
「ジャルジャルってあそこでしょー? お花いっぱいあったところー?」
(……リリカ……リリーは確か12歳でこの中では最も幼いけど……12歳ってこんなだっけ?僕は今13歳だけど前は12歳だったよね。前の僕と同じ感じには見えないなぁ。まぁリリーの個性だと思えば納得だけどね)
「僕は行ったことないけど話は聞いたことがあるよ。美しい風景と花々が有名な国で,確か最近新しい女王が就任したばかりだよね」
(まぁほんとはヲタクとしての知識だけどね)
「そうそう。こんなかで行ったことないのはフレイムだけなんだな」
「そだね」
その事に気づいた僕はヒロイズムにつられて小さく笑った。
「じゃー,ヒロろん道案内してねー!」
「ヒロろん?」
(そういえばリリーってそういうキャラだった。誰にでも妙なあだ名を付けるタイプ)
「あー! なんでフレフレ笑ってるのー? なんか思い出したのー? 思い出し笑いー?」
「別になんでもないよ」
「嘘だー。絶対になんか思い出してたー」
「ほんとになんでもないんだよ」
「えー?」
(……不思議だな)
僕はそう思った。気づいたことがあった。
僕は,こんなに人と笑い合うのが好きだったんだ。
昔は,友人なんて人はいなかったし,そもそも同級生と当たり前のように会話したことはなかった。
自分は長い間,友情というものに憧れていた。
そして,自分でも呆れるくらい,その思いに気づかなかった。
そう思うと,なんとも言えない思いがこみ上げてくる。意味もなく苦笑いを浮かべた。
「フレイム,大丈夫か?」
「え?」
突然ヒロイズムに声をかけられて,驚いて前を見るとパチパチと爆ぜる炎の向かい側から不安げに自分を見つめるヒロイズム達と目があった。
「どしたのー? おなかすいたー?」
隣に座るリリカルが不思議そうに首を傾げて,生焼けの串刺し肉を差し出してきた。
「ううん。違うよ。ちょっと考え事してただけ」
僕は苦笑しながらその肉を受け取って,温かい炎にあてる。
「悩みがあるなら相談してね?」
リベラルが串刺し肉を頬張り,ゆっくりと咀嚼しながら呟く。
いつの間にかとてもフレンドリーになっている。
ちなみにリベラル達は旅の間,魔術でそのへんの魔獣を狩って食べていたらしい。
見かけによらずかなりワイルドだ。
つまりこの中で旅に慣れていないのは僕だけということでもあるのだが。
「さて,明日はいつもより長く歩くから,早く寝て体力を回復させよう!」
ヒロイズムがそう言って,自分のテントの中に滑り込む。
僕も姉妹もそれぞれテントを持っているので,各々テントを張り,潜り込んだ。
僕は寝る前に考え事でもしようと思っていたのだが,疲れていたのか,毛布を被った瞬間,眠りに落ちた。
最後までご覧いただきありがとうございます
一言:新しく旅のメンバーが増えました。男2人女2人です。
※これから先は今までより投稿頻度がかなり落ちます。