第24話 見え隠れ
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そのやり取りもやはり気に食わないのか,青年二人は更に凄むように僕達を睨む。
「『ヴェレーノ』傘下の俺達を知らないとは,お前等終わったなぁ」
「……ヒロ君知ってる?」
少し表情が変わったヒロ君に問うと,彼は少し視線を下げた。
「……此処,皇帝直轄領ではそこそこ有名な犯罪組織だったはず」
(……あぁ,有名なんだ。サンクチュアリーとか相手してると,霞んで見えるなぁ)
若干浮かびかけた感想に気付いたのか,ヒロ君も微苦笑を浮かべている。
「流石に知ってるよな? 運の悪いことに,そっちはボスの腹心様だ」
そう言って可笑しそうに笑い,背後で沈黙を貫いていた三人目の青年を指さした。
視線を向ければ,その青年は蔑むような表情を返してくる。
別に特徴のある容姿ではないが,暗くてよく見えない顔は青白い。
何も考えずに凄んでくる三下よりも,正直余程親しみを持てる。
ただヒロ君はそうでもないのか,微妙な表情で拳を固めていた。
「……殴り飛ばして何事もなかったことに出来ないか?」
「後ろがいるなら,多分無理じゃないかな」
真顔でそう告げてきたヒロ君に微苦笑を浮かべつつ,僕は三人を見る。
本当に前で凄んでくる二人は取るに足らない感じだが,後ろの一人は慎重派のようで,隙が見えない。
『ヴェレーノ』という組織の規模や行いもいまいち知らないので,何とも言えなかった。
「……取り敢えず関わらなかったことにして帰る?」
少し考えてから,僕は少し大きな声でそう問う。
「おい,お前等わざと喧嘩売ってるんじゃねぇだろうな!?」
案の定,青年達が憤ったように殴りかかってきた。
(……おぉ,結構気が短い)
僕が対応しようとすると,ヒロ君が前に出て腕を交差させて防ぐ。
「……フレイム,大胆なこと考えるな」
ヒロ君は僕の意図を理解したのか,苦笑しつつそう言い,軽く力を入れて青年を弾いた。
本人は軽く力を入れただけなのだろうが,青年は後方まで派手に吹っ飛び,壁に激突して止まる。
「……え?」
此方を見ていた青年が,少し青褪めたように飛ばされた青年の方を振り返った。
「……彼奴は『イレックス』一の武闘派だぞ……!?」
(……いや,貴方達の組織弱すぎないか……?)
呆れて声も出ないと一瞬思ったが,よく考えたらヒロ君が強すぎるだけかもしれない。
ヒロ君は一応,というかちゃんと特殊魔術は「暴力」で相性抜群の【旅の武闘家】である。
料理や旅に適性があるといって,その手の人だと誤解してはいけない。
僕達のパーティーでは唯一と言っても過言ではない武闘派である。
(……僕も一応【旅の勇者】で剣士ではあるんだけど。純粋な剣技よりも,剣に纏わせた炎魔法が強いからなぁ)
自認はあくまでもリベやリリーと同じ魔術派だ。
正直なところ,炎剣は当たりさえすれば相手にダメージは与えられる。
剣術だって父上に扱かれていたから人並み以上には出来るが,どうしても自分より上の存在を知っていると,複雑な気分だ。
(……兄上が僕だったら,もっと楽だっただろうに)
ありえないようなことを考えながら,意識を戻す。
気付けば驚いていた青年も吹き飛ばされ,残る一人とヒロ君が睨み合っていた。
「俺を倒しても,無かったことにはならない。此処一帯は俺達の縄張りだ。ボスが知れば,黙ってはいないぞ」
青年が牽制するようにそう告げると,ヒロ君は判断を仰ぐように僕を見る。
「……良いんじゃない? なんかあったらその時に考えれば良いし」
さっさと片付けて,リアスさんを探したほうが良いんじゃない? と暗に告げると,ヒロ君は正しく読み取ったのか,小さく頷いた。
青年は対抗しようとしたようだが,特に武術に秀でているわけではないらしく,ヒロ君の綺麗な技を食らって呆気なく気絶する。
「……取り敢えず,なかったことにするか」
「そだね……」
短い会話を交わし,僕達はその場を離れて中央の通りに戻った。
「あ! 帰ってきた!」
僕達が中央の通りにつくと,先に戻ってきていたらしいリリー達が寄ってくる。
少し疲れたような表情になっていたらしく,リベが悟ったような目になった。
「……会ったんだ」
僕達が頷くと,リベは首を傾げるリリーに苦笑しつつ空に視線を投げる。
「前に私達が此処に来た時は,親切な人に教えてもらって左に行かなかったから会わなかったけど……何て名乗ってた?」
「……『イレックス』だったかな」
僕が記憶を掘り返して答えると,リベが頭を抱えた。
「うん。教えてもらった情報も『イレックス』。そこそこ迷惑で有名らしいんだけど……」
そこまで言って,言葉が途切れる。
リベは僕達を三度見くらいした後,若葉色の瞳を大きく見開いた。
「……二人共,さては倒した?」
「うん,倒したよ。ヒロ君が」
僕が最後を強調して答えると,ヒロ君がジトッとした目で此方を見る。
(……確かに倒して良いと言ったのは僕だけど)
証人がいないので,知らぬ存ぜぬで通るのだ。
そんな僕達のやり取りを眺めた後,リベは小さく溜息をつく。
「まぁ,この街の平和に貢献してるようなものだし……咎められることはないだろうけど」
呆れたようにそう言って,リベは門の方を指差した。
「……一応門番さんに報告しておきますか」
門に立っていた兵士に『イレックス』と遭遇したことを伝えると,彼は大層慌てたように詳細を尋ねてきた。
僕は特に嘘偽りを混ぜずに答え,左側の暗がりに放置してあることも伝える。
兵士は何度も感謝と労いを述べた後,数人の同僚を呼んで駆けて行った。
「……あ! フレイムさん達!」
不意に,聞き覚えのある声が響く。
門の前を離れようとしていた僕達に,ローブを被った少年が走り寄ってきた。
「……リアスさん? 何処言ってたんです……?」
まさかここで現れるとは思っていなかったので,僕は驚いてそう問う。
するとリアスさんも僕達に会うのは想定外だった,と言いたげな表情で口を開いた。
「フレイムさん達について行っている時に,クヴィンナさんの知り合いを名乗る方がいまして。皆さんに頼んでいるのに離れるのはどうかと思ったのですが……その方が少し急いでいるようだったので」
(……その手は基本犯罪で使われる奴では)
そう思ったのは僕だけではないようだが,どうやらその人物は本当に宿の主人の知り合いだったらしく,中央の通りとは別の道を使って彼女の宿に辿り着いたらしい。
(……リアスさんがいないってなった時,宿の中にいた可能性を考慮すれば良かったかも)
そんな事を考えつつ,リアスさんの話に相槌を打つ。
三人も深くは考えていないようだ。
僕と同じように考えないことにしただけかもしれないが。
ともかく,目的を果たしたリアスさんも見つかって,僕達はようやく皇族の住まう宮殿に向かうことが出来るようになった。
最後までご覧頂きありがとうございます。
一言:不穏が覗いたり引っ込んだり……。
これは世間ではもどかしいという奴ですね。
あ,活動報告は今回は書きませんが,次回も一ヶ月以内に投稿しますよ!




