第22話 一期一会
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新しい朝がやって来た。
主人の女性に礼を言って宿を出て,改めて人混みを眺める。
まだ朝は早いのに,昨日の夕方と変わらない活気が満たしていた。
「……ヒロ君,寝れた?」
ずっと眠そうに目を擦っているヒロ君に視線を向けると,彼は小さく首を振る。
「夜中まで騒がしいのは,本当に慣れないんだよな……」
夜が深くなっても収まらなかった喧騒を思い出して,僕は苦笑を浮かべた。
「……で,どうするんだっけ」
此方も眠そうなリリーがそう問う。
「取り敢えず,皇族に会いに行かないといけないんじゃないかな」
僕が答えると,リリーは何度か瞬いた後,「なんで?」と首を傾げた。
「……オレ達が,何だっけ……? そうだ。公認の対サンクチュアリーの冒険者になる為に,許可を貰わないといけないんだ。マリア様が」
最後に小さく付け足しつつ,ヒロ君が簡単に説明する。
若干疑問符を浮かべつつ,リリーは納得したように頷いた。
「……貴方達,対サンクチュアリー冒険者なの?」
不意に声がかかる。
驚いて振り向くと,宿屋の主人が立っていた。
「……えーと,どうして此処に?」
「どうしてって……ずっとうちの前にいるから,何かと思って」
ハッとしたように謝罪するリベに頷きながら,彼女は首を傾げる。
「……近い内に対サンクチュアリー冒険者が来るって聞いていたけど,随分と若いのね……?」
不安と疑問が混ざったような表情でそう呟いた。
「……そもそも,どうしてサンクチュアリーの事を……」
普通の国民はサンクチュアリーの事を知らないとマリア様は言っていた。
そういう意図を込めて問うと,彼女は表情を僅かに陰らせる。
「……私,元々冒険者だったんだけど……。大切な人を,サンクチュアリーに殺されてしまったの」
リリーとリベが息を呑むのがわかった。
ヒロ君があからさまに衝撃を受けた顔になり,数瞬の間にサンクチュアリーに対する怒りに変わる。
僕達が何も発せずにいると,彼女は「気にしないで」と軽く手を振った。
「あ,引き止めてごめんなさい。……頑張ってね」
祈るように言葉を続けて,宿屋の中に戻っていく。
深い茶髪が揺れる後ろ姿は,何処か儚く,不気味に思えた。
それから僕達は,皇族の住まう宮殿に向かった。
皇帝直轄領の中心部にある為,門から歩いていくのには少し時間がかかる。
けれどこれまでの道程とは違って,退屈はしそうにない。
中央の道を真っ直ぐ進むだけだが,リリーとヒロ君がいなくなる可能性は高いだろう。
リベとそう話し合って,出来るだけ二人の視線が店に向かわないように歩いていた。
「ねー見て! お花屋さん!」
「あ,防具が売ってる!」
「こら! 寄り道しないの!」
(……お母さんかな?)
内心苦笑しつつ,三人のやり取りを眺める。
此処では僕達のような冒険者は珍しくないのだろう。
擦れ違う人や,店の人は皆微笑ましそうな視線を向けていた。
若干僕の視線が逸れた時,前から来た人影とぶつかる。
「あ,すみません」
僕が咄嗟に謝ると,ぶつかってきた人影は慌てたように周囲を見てから,僕の方に顔を向けた。
「……ん? 冒険者の方……?」
人影は,僕達と同じか,少し上くらいの少年だった。
顔と全身を覆い隠すような青いローブを纏っている為,表情は判別できない。
僕が問いに肯定すると,少年は少し視線を彷徨わせた後,頭を下げる。
「えっと,ぶつかってすみません。それで,その……僕はリアスといいます。貴方は?」
「……? ……フレイムです」
僕が困惑しつつ答えると,リアスと名乗った少年は少し落胆したような雰囲気を一瞬だけ纏った。
「……あ,失礼を。……少し,人を探していまして」
慌てたように再び謝罪を述べた後,少し視線をずらす。
僕が何となく視線をそちらに向けると,三人が興味津々という目で此方を見ていた。
「……あー,人探しでしたら,手伝いましょうか?」
三人に期待されているであろう言葉を述べると,リアスさんは顔を輝かせる。
「良いんですか!? ありがとうございます!」
明るく輝く東雲色の瞳を見れば,断ることは出来なくなった。
そこまで先を急いでいるわけでもないし,人助けくらいは問題ないだろう。
僕はそう考えて,三人に取り囲まれたリアスさんから話を聞くことにした。
「……えーと,僕は……一応此処の住人,です。少し前に知り合った方に,連絡を取る為にこの付近に住んでいるという方と合流して欲しい,と言われて。予定は明日なんですが,先にいらっしゃるところを確認したいと思って,今日来ました」
落ち着いた口調でそう述べて,リアスさんは僕達の反応を伺う。
(……何か色々引っかかるけど,まぁスルーで良いか)
人の事情に首を突っ込んでも,碌なことにならない。三人もそう思ったのか,軽く流しているようだった。
「……要するに,人探しってことだよね?」
「どちらかと言うと,その方が住んでいる所……ですかね」
リリーが要約すると,リアスさんは補足しつつ頷く。
「うーん,その人の特徴とかって……?」
取り敢えず人探しの基本として尋ねてみると,リアスさんはローブの内側からメモのような小さな紙を取り出した。
「えーと,クヴィンナという三十代の女性で,この辺りで宿泊業を営んでいるみたいです。瞳の色は黄土色で,髪は黒がかった茶色……らしいです」
(…………ん?)
「なるほどね〜……どうやって探す?」
「取り敢えず宿泊業……宿屋さんを一個ずつ?」
リベとリリーが話し合っているのを聞きながら,僕は思考を整理する。
「……ヒロ君」
「ん? どうした?」
そっとヒロ君に話しかけると,何か考えていたらしいヒロ君が振り向いた。
「……その人,何処にいるかわかるかも」
「…………え?」
その声が聞こえたのか,リアスさんも驚いたように此方を見る。
「……僕達その人に,多分会ってるんだよね」
記憶の中にいるあの女性は,外見特徴が全く同じだ。
僕は今まで歩いてきた道をそっと指差す。
かなり小さくなっている門が見えた。
「……あ」
三人のうちの誰かが,小さく漏らす。
リアスさんは困惑したように,視線を門の方と僕達を行き来させていた。
「……僕達が泊まった宿の主人の女性。そういう外見をしてませんでした?」
最後までご覧頂きありがとうございます。
一言:人助け回ですね。多分。新キャラ続々で楽しいです。




