第20話 同類
誤字,脱字報告受け付けております。見つけた際は遠慮なく報告して頂けると幸いです。
感想,レビュー等大歓迎です。
ブックマークも是非お願い致します。
平坦な一本道を進み,ひたすらに皇帝直轄領を目指すこと二日。
朝から,というか昨日の昼くらいからかなり機嫌の悪いリリーを宥めつつ,周囲に何か無いかを探す。
「……うーん,清々しい程何も無いね」
呆れたような,疲れたような声が空に響いた。
「ねーリベ姉,何か無い? 地面が抉れてるとか,変な魔獣に会うとか」
(かつてない程リリーの思考が物騒になっている……)
「____変な魔獣はいないけど,面白い子に会えたのね」
突然,背後に気配を感じて振り返る。
誰もいない,ように見えた。
「……子供?」
ヒロ君が呟く。
声の主は,リリーと同じか,少し下くらいの少女だった。
ヒロ君の金髪よりも遥かに薄いクリーム色の髪に,桜の花弁を水で薄めたような淡い瞳。
全体的に儚げな雰囲気を纏う少女だが,眼光は鋭く,口元には勝ち気な笑みが浮かんでいる。
「えーと……誰?」
全く警戒する様子を見せないリリーが問うと,少女は思い出したように笑みを深める。
「そうね。挨拶をしないとなのね。レーツィはレーツェル・センティーレ。妖精の血を引く人間なの」
その言葉に,世界観に関する記憶が掘り返された。
妖精。
この世界に数多くある種族のうちの一つで,最も儚い種族と呼ばれている。
ちなみにこの世界__この大陸を生きる種族は,「人間」「エルフ」「ドワーフ」「獣人」「妖精」の五種類。
最も多いのは人間で,大陸の端の方に広がる森にはエルフの王国があり,その近くの地底にドワーフの国がある。前世のファンタジー物の例に漏れず,エルフとドワーフは非常に仲が悪く,他種族を巻き込んで戦争する事もあるそうだ。
ヒロ君曰く,現在は停戦中らしい。
そして妖精もファンタジーのお決まり通り,幻想的で魔術に長け,独自の国や文明を築かず,大陸各地に散っている。
但し繁栄力や種としての力が弱く,今は他の種族とのハーフが殆どだ。
そして何より,小さい。
ドワーフも身長が低い種族だが,比べ物にならないくらい小さい。
国を築いていないのに何故か存在している「純妖精の中で最も身長が高い」と言われる女王は,五歳の人間の男の子くらい。要するに,人間の成人の平均身長の半分にも満たないのだ。
目の前の少女も見た目は幼いが,妖精の血を引いているなら年齢はわからない。
表情や見た目は幼いが,瞳や口調は大人びている。
「えーと……レーツィさんって呼ぶね! 私はリリー。リリカル・リュールング!」
「宜しくなのね,リリー。そっちは?」
リリーと半妖精のレーツェルさんが自己紹介を終え,僕達を見た。
まるで今まで此方が視界に入っていなかったかのような態度だが,妖精は不思議な所が多いので特に疑問には思わない。
「えーと,僕はフレイム・カリエールです」
「フレフレと呼ぶのね。何だかオレンジなの」
(……オレンジ? 見た目が?)
若干腑に落ちない中で,ヒロ君とリベも名乗る。
レーツェルさんは,ヒロ君を「黄色」,リベを「青みたいな薄い緑」と言った。
「……何となく,リリーに似てる?」
「うーん,雰囲気からして,リリーの同類なのかもね」
初対面である筈なのに親しげに話し始めた二人を横目に,リベと会話する。
「リリーは結構人見知りなの。だからあんなにすぐ懐いてる人は初めて見た」
僕の知るリリーはあまり人見知りという感じはしないが,リベは彼女の姉だし,僕等の知らない一面を見ているんだろう。
「成る程なのね。皇帝直轄領に向かってるの。んで,飽きちゃったと」
リリーから事情を聞いたらしいレーツェルさんが鈴を転がすように笑った。
「うーん,でも何で,使わないの? 君,レーツィの同類なのに」
可愛らしい仕草で首を傾げ,リリーを見上げる。
(……同類?)
僕達が疑問符を浮かべているのに気付かないのか,それとも別の所に引っかかったのか,リリーはレーツェルさんと同じように首を傾げながら口を開いた。
「……? 何を使うの?」
「あーそっか,使わない人もいるのね。『転移魔術』なのよ」
「……転移魔術!?」
「……フレイム,知ってるのか?」
思わず叫んでしまい,慌てて口を塞ぐ。
知っているも何も,転移魔術はファンタジーの常連というか,まぁ……あるよね,くらいの認識だ。
アニメの中では登場していないが,あることは知っている。
けれど転移魔術はこの世界では特殊魔術に分類されており,使用者が少ない為絶滅寸前らしい。
「……えーと,レーツェルさんは転移魔術の使い手なんですか?」
「レーツィは違うのね。でも使えるのよ。ね,リリー」
「うーん,そうなの?」
「そうなのね」
何と言うか,噛み合わない会話だ。
「まぁ要するに,レーツィは転移魔術っぽいのが使えるのね。見せてあげるの」
そう言って,レーツェルさんは勝ち気な笑みを深める。
耳につけていたオパールのような虹色の宝石の飾りが手元に移り,細い棒状に変化した。
「それ……杖?」
リベが興味深そうに尋ねると,レーツェルさんは軽く頷いて肯定する。
次の瞬間,彼女の周囲を虹色の光__魔力が渦巻いた。
魔力の渦は次第に大きくなり,僕達をも包み込む。
「この事は他の人には秘密なのよ。レーツィは君達を信用するの」
不意に,レーツェルさんの声が陰った。それに疑問を感じるまでもなく,周囲の風景が消える。
「わぁっ……!」
切り取られたような虹色の空間に,興奮したような声が響いた。
(眩しっ……)
思わず目を閉じる。
「ほら,目を開けるのね。皇帝直轄領についたのよ」
レーツェルさんの声が聞こえて,目を開けた。
「えー……そんなことある……?」
リベの呆然としたような呟きが聞こえる。
「……凄い……」
僕達は,皇帝直轄領の代表的な入口『ポルタール門』の前に立っていた。
最後までご覧頂きありがとうございます。
一言:新キャラ登場です。これからは恐らく新キャラフィーバーです。




