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第19話 日常

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 先日までの嵐が嘘のような快晴の日,僕達は華国ジャルディーノ華城ガルテンシュロスの前に立っていた。


「……本当に,良いのですよね?」


 徐ろにマリア様が問う。

 僕達が選んだ道__ 皇帝直轄領インペラーゼに行き,公認の対サンクチュアリー冒険者になる __のことだろう。

 ヒロ君は肯定するように首を縦に振った。

「これはオレ達が選んだ道です。後悔なんてしません」

 幼い頃生き別れた両親が今も何処かで生きていることを信じて,探し求めているヒロ君にとっては,サンクチュアリーは敵であり邪魔者なのだろう。大義名分は大事だし? と言っていた。

 僕だって別にサンクチュアリーに恨みとかはないけど,一応悪の組織らしいので敵認定される。実際アニメの主人公だって,サンクチュアリーに何かを奪われたわけではない。天性の主人公としての性格が,その道を選んだのだろう。全ては神と作者のみぞ知る,だ。

 リベとリリーに至っては,サンクチュアリーとどんな関係があるのかは知らない。けれど何か思う所はあるらしく,今回の話には乗り気だった。


「……重ねるようですが,本当に気をつけてくださいませ。相手は魑魅魍魎ですから」

 マリア様の言葉に思考を引き戻されて頷く。

 後ろに整列するメイド達も皆一様に不安そうな表情をしているが,ふと違和感を覚えた。

「……ミュリエルさんは……?」

 リベが呟く。

 確かマリア様はメイド総出で見送ります と言っていた。

 呟きを拾ったマリア様は少し困ったように柳眉を下げる。

「……あの子,あの日以来気落ちしているみたいで……。彼女も幼いなりにアゼリアの事を理解していたのでしょうね」

 ミュリエルさんは新米メイドを名乗っていたが,妾腹とはいえこの国の第三王女だ。異母姉であるアゼリアの事を何故忘れていたのかは疑問だが,今回の襲撃で彼女の事を思い出して,何か思うことがあったのかもしれない。本人に話を聞く時間もないので,憶測だけど。

 それ以上特に追求する気にもならないので,その話はそこで終わった。


「……では,行ってきます」

 僕達はマリア様に礼をして,華城ガルテンシュロスの前を離れる。

 長い間雨を浴びて再び輝き,咲き誇る花々を眺めつつ歩き,国境を通り,華国ジャルディーノを出た。

華国ジャルディーノともお別れかー……」

「また来たいね〜」

 戦闘を歩くヒロ君とリリーの会話を聞きつつ,僕の隣を歩くリベが「また来れたら良いね」と微笑む。けれどその瞳には既に,新しい目的地への好奇心が光っていた。


 何度か休憩を取りつつ,平坦な一本道を進む。

 森の中とは違い,あまり魔物が出ないので炎剣フレイムソードを使うこともない。

 食料に関しては,マリア様達が沢山持たせてくれたので,暫くは大丈夫そうだ。


「……退屈になってくるねー……」

 リリーがその辺で採った草を指先で弄びながらそんな言葉を漏らす。

「……皇帝直轄領インペラーゼまであとどれくらいかかるんだっけ……」

「……七日くらい……?」

 何処となく声が暗い。何かないものかと考えるが,良い案は浮かびそうになかった。


「あー! 何かあるー!」

 のんびり歩いていると,突然リリーがそう叫んで前方に走っていく。

 慌てて追うと,そこは大きく地面が抉れていた。周囲の木々が焼け爛れており,まだ煙が上がっている。

「……何事……?」

「……わかんない」

 先に立ち止まって眺めていたリリーも首を傾げ,周囲を見回した。

「うーん……誰かいたのかな……?」

 確かにこの空間には僅かに魔力の気配が残っている。

 けれどどれだけ辺りを見回しても人の気配はない。

 とりあえず見なかったことにして,僕達は先に進むことにした。


「……そろそろ夜だ」

 ふと空を見上げたヒロ君が小さく呟く。

 気づけば太陽が落ち,暗くなってきた空に星が輝き始めていた。

 テントを作り,火を起こす。

「何か焚き火も久し振りだね〜」

 リリーがテントの中から毛布を持ってきてくるまりながらそう言った。

「此処最近ずっとお城だったもんね」

 リベが頷きながら,肉を炙る。

彼処あそこのご飯美味かったなー……」

「それはわかる……」

 同じように肉を焼きながら,ヒロ君が思い出すように呟く。

「でも私はこっちの方が好きかな……」

 焚き火を眺めるリリーの声が,空に溶けて夜風に攫われていく。

 僕はヒロ君とリベと目を合わせて,小さく同意するように笑った。


 朝になった。

 リリーに起こされて身支度を済ませ,何故か外で寝ていたヒロ君を起こして朝食を用意する。

 朝食はよくわからない葉菜のサラダと,頂いたパンだ。もそもそと朝食を食べつつ,今日の道について話し合う。

「……えーと,後大体六日くらいかかるから……まぁ食料調達は大丈夫かな」

「魔獣を倒さなくても良いのは大きい」

 ヒロ君が在庫を確認して頷くと,リベが謎の液体を飲みながら頷いた。前に何か尋ねると,喉に良い奴 と言っていた気がする。

「……何か退屈凌ぎないかなー……」

 二人の話に飽きたのか,リリーが僕にそう訪ねた。リリーは唯歩いているだけでは本当につまらないのだろう。

「うーん……でも此処から皇帝直轄領インペラーゼまでの道は特に何もないからな……。近くなれば色々と村とかもあると思うけど」

「そっかー……じゃあ早く行きたいなー」

 興味を失ったように,リリーの視線が朝食に戻った。

 僕は朝食を片付けながら,周囲を見回す。


(……何か気配はするんだけどね)

 少し前から周囲を取り巻く魔力の気配を感じ取り,僕は静かに目を細めた。


最後までご覧頂きありがとうございます。

一言:あんまり変哲のない文章だとつまらなくなってしまいそうで……

   何かしら入れたがる女になっています。

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