第17話 其々の
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その後,マリア様が解散を告げ,僕達は客室に戻る。
ミュリエルさんの数歩後ろを歩きながら,リベが話しかけてきた。
「そういえば,アゼリアと戦ったんだって?」
「あ,うん。僕じゃ相手にならなかったけど……」
「マリア様くらい強い人と戦って生き残れるだけで凄いし……! フレイム君って実は強い?」
リベがそう言って目を輝かせる。
けれど対する僕は疑問符が浮かんで消えない。
(……僕自身別に対して強くもない普通の冒険者なんだけど……強いているなら剣術の心得があるくらい?)
「……うーん,アゼリアが僕を格下だと認識して手加減していたからじゃないかな? 彼女の実力に比べれば僕なんて足元にも及ばない」
僕が苦笑しつつそう答えると,リベは少し不満そうに眉を顰める。
「……謙遜なんかしてても良い事ないからね……?」
別に謙遜じゃないんだけどな……という言葉が,口から出ることはなかった。
「……そういえば,ヒロ君は何で傷だらけなの?」
会議中も,廊下を渡っている際もあえて触れていなかったが,ヒロ君は僕よりも傷があり,疲労を隠しきれていない。
「……オレさ,シェイラと戦ったんだよね」
「え?」
思わず聞き返すと,ヒロ君は苦笑交じりに語り始める。
僕と別れたあと,ヒロ君は誰も通っていないのに明らかに変わった気配がしている廊下に行ったらしい。
そこでは案の定,何やら不審な動きをする黒い影を見つけたそうだ。
とりあえずヒロ君がその影を殴ってみると,その影はシェイラだということがわかり,戦闘を開始。
序盤は優勢だったが,徐々に実力で押されていったそう。
けれど突然シェイラは何かに呼ばれたのか,走り去ってしまったらしい。
時系列的に,アゼリアが僕達の前を去った直後だ。
「あのシェイラって女,かなり強い。どんな理屈なのかわからないけど,いつもと戦ってる時の感じが違った」
何が違うのかよくわからないが,それくらい彼も混乱しているのだろう。
拳を握ったり開いたりを繰り返し,眉を寄せる。
「……僕等も強くならないとね」
「そうだな」
翌日。豪雨。
「……見事なまでの土砂降りだね」
「……華国では珍しいな」
「……何ででしょうね。本当に」
呆然と窓の外を眺める僕等の背後で,ミュリエルさんが放心したように答えた。
「……華国には女神様のご加護がありますから,雨は兎も角此処までの土砂降りなんて滅多に見られない筈なんですけど……」
朝食後,メイドに呼ばれて小さな会議室のような場所に行くと,正面に座っていたマリア様が苦笑気味にそう言う。
「女神様のご加護?」
リリーが出された茶菓子を口に入れながらそう問い返した。
「我が国はこの大陸の神である双子神の妹君の庭と呼ばれているのです。その為か,この国の天候が荒れることは稀で,害獣等が現れることもないのですよ」
(……大陸の双子神……? 聞いたことあるような,ないような……)
記憶を探ろうとすると,マリア様の視線が此方を向いていることに気づいた。
けれど僕と目が合うと,素早く視線を逸らされる。何だったんだろうか。
「……私達が此処を出るのはもう少し後にした方が良いって事ですか?」
何故呼び出されたのかを彼女なりに思考したのか,リベがそう問う。
「そうです。流石に荒天の中,皆様を放り出したりするのはあれですから」
マリア様が苦笑しつつそう告げ,窓の外に視線を投げた。
庭には激しい雨が打ち付け,花々は弱々しくその身を伏せている。
「……あの子は天候すらも操るのかしら」
小さな呟きは,轟々と響く雨音に掻き消された。
「……さて,フレイム。どうする?」
部屋に戻って早々に,ヒロ君が僕にそう尋ねる。
何故かついて来たリベとリリーにお茶を出したミュリエルさんが部屋を出ていった後,僕は微妙な表情で溜息を吐いた。
「……何でそれ僕に聞くかな」
「え? だってフレイムがリーダーじゃん」
「そんな記憶はないよ」
「リーダーっぽいよ?」
「いやヒロ君の方がリーダーっぽいでしょ」
僕が反論すると,リリーが頷いた。
「それはわかる」
「いやわからなく良いから」
間髪入れず突っ込んだヒロ君は一度ゆっくりと息を吐いた後,青い瞳で僕を見据える。
「フレイムは強いし,何よりオレ等を纏めるのが上手い。それに一歩下がって冷静に状況を分析できるし」
「えー……でも,この旅の目的はヒロ君じゃん」
「……まぁ,それもそうか」
まだ何処か不満そうだが,一応納得したようだ。
「えーと,話を戻すけど。この後どうするの?」
リベがそう簡潔に述べ,僕達は考え込む。
「……まだ周辺に彼等がいたら,不用意に動き回るのは危険だよね」
「かといって安全が保証されるまで此処にいるってわけにもいかないしな……」
「どうしよーね」
特に何も考えていなさそうなリリーが茶菓子を堪能しつつ,首を捻って見せた。
「……あのー……今宜しいですか?」
突然声をかけられてそちらを向くと,居た堪れなさそうに入口付近に佇むミュリエルさんと目が合う。
「良いよー」
リリーがニコっと笑うと,ミュリエルさんはホッとしたような表情を浮かべた後,口を開いた。
「マリア様が,サンクチュアリーに関する話がある……と」
今度は会議室ではなく,マリア様の執務室らしき部屋に通された。
正面の大きな執務机に座ったマリア様はメイド達に人払いを命じた後,僕達に向き合う。
「……皆様は本気でサンクチュアリーに対抗しようと思っているのですか?」
ヒロ君が一瞬視線を僕達に向けた後,しっかりと頷いた。
マリア様は少し表情を緩め,口を開く。
「では,皇帝直轄領に向かってはどうでしょう?」
最後までご覧頂きありがとうございます。
一言:物語がようやく動き始め……そうです。




