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「美穂おはよう。今日は早いね」
隣の家に住む大翔から声がかかる。
「おはよう大翔。ちょっと予習がしたくて早く学校に行きたいと思って。先に行ってもいい?」
いつもはこの後英二と璃子と合流していつも一緒に登校していたのだ。
「朝の自主練やりたかったし、俺も早くいくから一緒に行こう。英二たちにはメールしとく」
高校生の大翔は、未来の大翔とかわらず優しい。隣の家ということもあって赤ちゃんからの付き合いだ。
(このころから身長も伸びだして、もともとスポーツも勉強もできてたし、優しいし、顔は整ってるしでもてはじめたんだったなぁ)
一緒に登校し、美穂は教室へ、大翔は体育館へ向かった。教室で予習をしていると、
「美穂!」
振り向くと、息を切らした英二と璃子がいた。
「なんで先にいっちゃうんだよ」
英二が近付いてくる。
(怖い)
恐怖心がよみがえってきて体が固まる。
体が震えだし、今にも泣きそうにある・
「美穂?」
「美穂どしたの?」璃子も声をかけるが、璃子のあの時の軽蔑した目をさげすんでいた目を思い出すと体がこわばってしまった。
「あ、えっと・・・」
様子がおかしいと周囲が感じ始めたころ、大翔が朝練から戻ってきた。
このころは大翔はクラスでもお隣さんであった。
「体調悪そうだから保健室連れてくよ。英二も璃子もあとででいい?」
「俺も行くよ!」
「・・・いや、俺一人で大丈夫。ホームルーム始まっちゃうし、2人は自分のクラスに戻ってたほうがいいよ」
「そうだね、いこ英二」
璃子が英二を引っ張っていった。
保健室に向かう最中も震えが止まらない。
「・・・なんかあった?」
「っ・・・何でもないの。大丈夫。ごめんね大翔・・っえ」
ふわっと体が空に浮かぶ。
慌てて大翔にしがみつく。
「歩くの大変そうだからちょっと我慢して。誰も見てないし」
何も聞かずに、ただは大翔は寄り添ってくれていた。




