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【 まえがき 】
■転生したんだけども目立ちたくないぃ〜!と頑張る(笑)オッドアイエルフ主人公くんちゃんのお話
あるいは、我が道を突き進むお姉ちゃんに振り回される弟(転性したから妹)のお話
■一応は恋愛ファンタジーもの
主にお姉ちゃんカップルと弟(妹)カップルの二組がわちゃわちゃしております
■いろいろご都合展開だと思われます
少しでもお楽しみいただければ幸いです
2023.10.29
オレを庇ったお蔭で全身血塗れになってしまった姉ちゃんを見た――見てしまった瞬間に、躯が動いた。吹っ飛んでいった場所まで瞬時に移動出来るのは、魔法が存在している世界にいるからだ。そこは素直に感謝しかない。ないのだが、痛みは感じるんだよ、ちゃんとさ。
「姉ちゃん!」
「ふーちゃんは、怪我、ない……?」
「それはこっちの台詞だろ!」
抱き起こした姉ちゃんはへらりと笑ったが、戦いの最中とは思えない表情だ。遠くながらも剣戟の音は聞こえていると思うんだけども。
「やー、ふーちゃんが怪我するとすっごく煩く泣く人がいるからさあ。私も嫌だしねぇ」
咄嗟に躯が動いちゃったーとカラカラ笑う姿に、怒りが湧く。嫌なのは姉ちゃんだけではないんだから。
「バカ! オレだって嫌だよ!」
「へへ、ふーちゃんは優しいねえ。お姉ちゃんはふーちゃんが大好きだよぉ」
よしよしいいこいいこと頭を撫でてくる姉ちゃん。オレには『冬夜』という名前があるのに、いつだって姉ちゃんはふーちゃんと呼んでくる。ずっと『なんだその小動物みたいな名前は』とは思っていたんだけども、少しも譲るつもりはないらしい。まあ、いまは『冬夜』ではなく、姉ちゃんが「妹最高!」と、声高らかに嬉々として命名した『冬花』という名前になっているんだが。
思い浮かべば、オレはいつだって姉ちゃんに振り回されているんだよなあ。呆れはするんだけど、心の底から嫌ではないのは家族だからだろうか。パシられてはいるが、危ない目には遭わされていないからでもあるのか?
そんな考えを巡らせる傍らで、頭を撫でられた事が引き金となったのかなんなのかは解らないが、鍵が開いた気がした。固く閉ざされていたものが――封じられていたものが、溢れてくる。急激でもありゆっくりでもあるのは、高次元の存在――いわゆる女神様が施したものだからだろう。オレたちをこの世界へと導いた人が。
「はいはい、言ってろ。――姉ちゃん、オレは行くから」
「うん、解ってる。でもふーちゃん、怪我はしないようにね?」
「いまの姉ちゃんだけには言われたくない」
「ひどいっ」
姉ちゃんは渋い顔をしたが、その怪我もすぐに治るからいいか。なんといっても魔力豊富なエルフなんだし。しかも女神様謹製! 半神だからなオレたちは。姉ちゃんは姉ちゃんが出来ることをするだろうから、オレはオレのやるべきことをやろう。
「――ヘルガっ! このくそ駄竜!」
遠くで魔法を操る長身痩躯なくそイケメンに向かって叫ぶと、男が目を見開いた。気がする。男の目元は銀色の仮面に覆われているからか、どうしたかは解らないが、なんとなくそう思ったんだよね。
ヘルガは文字どおりすっ飛んできた。オレの目の前に。転移出来るのは強いわやっぱり。
「私の名を呼ぶということは、思い出したのか?」
「まあね」
短く返して顎で示した先、そこには強敵がいた。攻撃が通り難い厄介なやつ。実体がない影――思念体らしいドラゴンなのだから、攻撃が効かないのも納得だが。しかし、それを覆せるかもしれない者がここにいる。
オレとヘルガ。身長差があるので、見上げるしかない男はいつの間にか仮面を外していたようだ。宝石にも似た美しい銀色が現れている。灰色にも見えなくはないが、白銀色が正しい。この男は、思念体ドラゴンの母体とも言える存在だった。本体と思念体とでは魔法耐性が違うのかなんなのか、魔法が効きづらいのが難点だが、やるしかない。でなければ、破壊されるだけなのだから。
「受け入れるでも倒すでもいいけどさぁ、オレは平穏にすごしたいのよ」
「解っている」
「ならいいけど。――ほら、ヘルガ、したいんだろ?」
腰に伸ばされた手を素直に受け入れると、強い力で抱きしめられる。と、軽く、本当に軽く、唇を押し当てられた。あの無理やりマンが、ここまで我慢できるようになるとはな。
「あんなもんを残すなんてお前は本当に駄竜だよな」
「アレは私とは関係ないが」
「お前の残り香に惹かれた負の感情だから関係あんの! はい、早く行くぞ!」
こっちはちゃっちゃと決着をつけて平穏に溺れたいわけよ。三食昼寝の食後には甘い物付きで、たまーに冒険者活動のぐーたら生活がいい。口をへの字に曲げたままのヘルガの背中を強く叩いて、「続きがしたいのなら頑張るしかねーからな」と囁いてやる。背伸びをしても耳には届かないから無理やり屈ませてからだけど。
私をなんだと思っているんだと細められた目が物語るのだが、オレとしては『捻くれ一匹狼タイプドラゴン』としか言いようがない。闇属性で生まれたというのにひとりになって、負の感情に飲まれて暴走していたんだしな。寂しがり屋のくせしてさ。まあ、強い思いに絆されてしまったオレが一番ヤバいのかもしれない。このままでもいいかなーと思っているわけだし。いろいろしてくれた姉ちゃんには悪いんだけど。
いやだって、思い思われるというのは悪くないからね。元男だとか、人化したドラゴンに抱き潰されたとか、そういうモヤモヤをふっ飛ばすくらいには。
――やっぱりオレという人間は、世界が変わろうが『なにも変わらない変わり者』なのかもしれないな。賢い姉ちゃんとは違って。
【 あとがき 】
開幕クライマックスとネタバレをかましましたとさー。
あとは過去から現在へと話が進んでいく(はずです)
皆でオッドアイエルフ主人公くんちゃんを愛でようぜ〜!!(ゲス顔)
▼本文の加筆修正
3回目:2024.02.05/月
2回目:2023.12.04/月
1回目:2023.10.31/火




