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十二話 無駄な買い物

翌日の事だ。

翔太は、絶望感に浸っていたが気が済むまでわめいていたがその後は寝た。

意外と人間はこんな半分病んだ状態でも寝れるとわかった。


なんと今日は平日の月曜日だ…。

本当だったら、中学校に行かないといけない。

理由は『義務教育』だから。

国には流石に逆らえない。

話は戻って時刻は、午前9時だった。


「今日は意外と起きるの早かったな」


あくびをして、キッチンに向かって冷蔵庫を開けた。

中から、ミネラルウォーターを取り出す。

それを豪快に飲んだ。

冷たい水が喉を潤していく。

寝ているときに喉が乾燥してしまった為なのか喉が渇いている。

よく考えたら、昨日の行動はちょっと…キチ○イだった。

普通に考えて尋常な精神ではない人間とは違い。


「まだ…自分は正常だ…………………………頭はおかしくない‥‥‥‥」


そう願うしかないのだ。

自分がまだ普通なんだって…人に会わないくらいで狂ったりしない。

昨日の失態は、ちょっとした過ちだ。

そうに決まっている。

病んだりなんかしない。

平気だ、平気だ。



「俺って‥‥‥独り言しか言ってないよな‥‥」



悲しい。

それだけが脳裏を浮かんでくる。

悲しいという表現は間違っているな。

『虚しい』だ。

この四か月間は誰とも話していないのだ。

病的な想像だが事実だ。

孤独と虚無感が襲う…そんな日々に耐えられるのか?

無理だ。

中学生の翔太にはそこまでの精神力がなかった。


誰かと会いたい…。


画面でなく、自分の目で確かめたい。


あんなに人間を嫌ったのに。

あの、親は‥。


いや、考えない方がいい。

考えると怒りが大爆発するのだ。

辛い…辛い…。


心が死んでいく…。







翔太は着替えをして、気分転換に本屋に行った。


今日は身だしなみをしっかりとして出歩いた。


ヘッドフォンをして、ポータブルCDプレーヤーをしていた。

ジーンズを履いてしろい長袖を着ていた。

この服装はこだわりがない、特に気になることもない。


本屋に着くと、まずは雑誌コーナーに向かった。


人気と書かれた吊り看板に向かうと、何百冊の本があった。

情報雑誌や、ゲーム雑誌等々だ。


すると、ある雑誌を見つけた。


その題名は‥‥『災害への備え』という雑誌だった。

あまり見ない雑誌に興味を示して、手に取って読むことにした。

そこまで、災害への関心がなかったから余計に興味を持ったのかもしれない。

翔太は震災に遭遇したこともないから‥‥防災には無沈着だった。

気にもしたことがない。


「面白そうだな、読んでみよう」


1ページめくる。


そこには、1ページ丸ごと地震で崩壊した家が載っていた。

少し、ショッキングな内容だったが次のページも自衛隊のヘリが載っている。

そのページには『これは、あなたがいずれ経験するかもしれません』と書いてあった。


この雑誌にはかなりの興味を持てた。

なのでショッピングモールの中にあるベンチに座って読んだ。

別に、災害に遭って楽しいとかそういうサイコパスではないのだ。

何が面白いかと言うと、何をしたらいいのか?問いかけだった。

災害の備えの具体的な例や備蓄の選び方等々だ。

自分の為になると思った。

それは、いつ感染者に襲撃されても避難できるようにだ。

一応、強化ガラスだしシャッターも閉じてあるから多分平気だ…。

だが備えを怠らない…というわけでもない。



そして、こんな紹介もあった。


『災害時には、水が第一に優先である。

何故ならば人間は食べ物がなくても水があれば14日程度は生き延びられる。

それに、食料が無くても昆虫などを食べられる。

(注意)昆虫は火などで炙るなどしないといけない場合もある。

だが、食料を持っていれば生存期間も伸びられる。

主な例で挙げられるものは、乾パンや缶詰などのそのまま食べられるのがベストだ。

被災中はストレスや余震による大きなストレスもある。

なので持てる量の中で日持ちの良い羊羹(ようかん)や飴とかコーヒーなどの嗜好品も良い。』


と、書かれていた。

結構詳しく書かれていたのには驚いた。

昆虫などは食べたくないが、乾パンや缶詰は助かる。

幸いなことに、ここは何でもあるから全然大丈夫なのだ。

しかし、車の運転が出来ないのはネックだ。


「いつかは練習しないとな」


そうだ、まだ死にたいとか言ってる場合ではないのだ。

何とかして生き延びないといけない。

生存を‥‥。



食料の問題もあったが、こんな紹介もあった。


『大津波でインフラ設備が破壊されたら、大規模停電の恐れがある。

その為に備えることは電力の確保が必要なのである。

発電機を担いで移動する人はいないだろう。

だが、電力は簡単に確保できることもあるのだ。

店舗で買える物の例を挙げると、モバイルバッテリーだ。

災害時の前から充電していれば、スマホの充電が可能である。

けど、モバイルバッテリーはいつかは電源が切れてしまう。

なので、乾電池式モバイルバッテリーもあるのだ。

それがあれば、乾電池を交換すれば使い続けられるのだ。

有効的な物はやはりソーラー充電器だろう。

太陽の光があれば充電可能だ。

それにコンパクトな物あるから持ち運びやすいのだ。

他にも手回し充電のラジオやポータブルテレビも良いだろうか。

情報源も正しく入手した方が身のためになるだろう。』


生存…ってよく考えたら…。


「よく…自分は生き残れたよな」


そう痛感した。

何でか?


それは、4ヶ月前の『吸血型伝染ウィルス』が流行した。

世界中に急速に拡大して大混乱を招いた。

ウィルスに感染すると、理性と知能が低下して人血を求めて彷徨った。

日本政府は直ぐに空港閉鎖と漁港閉鎖で他国からの侵入を徹底的に塞いだ。

だが結局は日本人の帰国から、感染が一瞬で全国に広まった。

翔太は学校に居た時に感染者が乱入した。

学校が、大混乱して街も大パニックになってしまった。

その状況で死を覚悟しながら走った。

駄目になるまで走った。

その走った結果がこのショッピングモールだった。

既に無人だった。


それから、翔太はここで暮らしている。


「よく生き残ったよな‥‥へへへ」


苦笑いをした。


以外に長い雑誌だった為、続きは後にすることにした。

そして、また歩き始めた。


店内音楽だけが、響いている…翔太以外誰もいないのだ。

異様な光景だったことには間違いない。

必ず誰かが居たのに、今は翔太以外人間が一人も歩いていない。


「何か、服でも見てるか」


そう、思って洋服屋に向かった。


近くにあった、カートを押しながら歩いた。

その道中は寄り道をしながら向かうのだ。

例えば、面白そうな商品があったら貰うのだ。

()()貰ってるだけだ。

強奪ではない。

何かしらなの抵抗は最初はあったが、今はそこまで感じない。

それか翔太がおかしいのか、世の中がおかしいのか?

どっちだろう。

窃盗をするしかない社会システムにしたのが悪い。

結局は店員すらいないから、意味もないのだ。

けど、こんな子供が平然と窃盗みたいな行動をしている。

普通に犯罪者だ。


そんな罪悪感が時々、襲う。


品物に代金を払わないで、嬉しそうに持っていく‥‥。

こんな自分でいいのか?

自分は法を犯すのか?

勝手に店の物を持ってく?


「‥‥暴徒とかが強奪とかしてるのと似たようなことしてるんだろう」


テレビで毎日、強盗や暴徒が人を平然と殺して強奪するのだ。

いくら、高級な服を着ても誰も賛否してくれない。

誰も見てくれない。




―――そんなことを考えていると、某洋服店に着いた。


店内に入ると、メンズコーナーに向かった。

お洒落な服や大人向けの服までなんでもあるのだ。

試しに着てみたり、好きな服を探したりとか。


そして、洋服店を出ると今度は家具店に向かった。


家具店には、絨毯やラグがあるから頻繁に利用する。

一階にあるのだ。

なので、エスカレーターで降りていく。

やっぱり店内は明るい。

でも、電力供給が停止したら…あっという間に真っ暗になるのかもしれない。

自家発電設備とかソーラーパネルとかあるのかな?

しかし‥‥なかったら食品も腐るよな。

本気で車の運転も習得した方がいいのかもしれない。

いずれはこのショッピングモールから出ていかないといけないだろう。

食品もいずれは腐敗していくし減っていくだろう。


それに強盗団とかの襲撃も心配だ。

奴らは自衛隊から銃を奪ったりしてるらしい。

だからシャッターも爆弾で破壊されるかもしれないのだ。

護身用の拳銃は一丁は欲しいがそんな物はない。

日本は一般人が拳銃を所持していけないという法律のせいで‥‥。

エアガンならあるけど。

そんな物じゃ脅しにも使えない。


感染者の侵入も油断できないのだ。

シャッターも押し倒されて侵入するかもしれないのだから。


「ああ…何か生きている感じが‥‥‥」


いや、止めろ。

翔太は自分で自制したのか、途中で言うのをやめた。

また馬鹿みたいなことしてるのだ。

頭がおかしい、おかしい。

おかしい、おかしい、おかしい、おかしい。


「やめろォ‼‼‼」


怒鳴り声と共に、両手で耳を塞いだ。


遂に翔太が壊れたのか…?

いや、元からなのかもしれないのだ。

3ヶ月間の孤独に耐え兼ねた。

けれどいつかは不安も大爆発をおこしたのだ。


孤独という恐怖に耐えきれない。

誰かと‥‥‥話したい。

生きた人間と会話をしたい‥‥‼


嫌だ、孤独のまま死ぬのは嫌だ!




―――――数十分後―――

翔太は正気を取り戻したのか、また歩き始めた。

目は充血させていた。

今度は無言だった。


しかし、行先は家具店ではない。


屋上だ。


新鮮な空気を吸いたい。

そう思ったからだ。


もしかしたら‥‥生存者がいるかもしれない。

そんな淡い希望と共に、また一歩と足を進めたのだ。



誰かに、会いたいという純粋な希望を。

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