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カニカマが空を飛べない訳が無い

作者: makKi色

カニカマが空を飛べない訳が無い。好きな子がそう言ったので、僕は慌てて頷いた。



僕の好きな子は、顔面偏差値60の電波系美少女だ。高校入学すぐに同好会を立ちあげる、活動的な面もある。


同好会は部員が一人でも良いんだけど、部活として認められるためには五人部員が必要だと言うことで、立ち上げ初日から積極的に勧誘していた。


さすがに一年生時点で高校生活を棒に振る覚悟を出来た奴は少なかったようで、彼女が立ち上げた「カラスの羽の数を数えるための同好会」に入ったのは僕だけだった。


美少女と同じ同好会に入りたいという下心、カラスの羽をどうやって数えるのか知りたい好奇心、熱意が空回りしてなかなか仲間が出来ない彼女への同情とか、入った理由は色々あった。


活動初日、僕達は部活棟の1階の空き教室を拠点に定めて、ミーティングを行った。


「カラスの写真撮ってきて。」


彼女は僕に指示を出した。


「サクラさんは行かないの?」


「私、鳥苦手なのよ。」


彼女は鳥の写真を撮りたがらなかった。それでも一応、彼女の言う通りカラスを撮影して彼女に渡した。


「ありがとう! 良い写真ね!」

お礼の言葉と笑顔を見て、僕は恋に落ちたんだと思う。


彼女は毎日熱心に活動をし、そして時々突拍子もない事を言い出したりもする。


ある日、彼女は「カニカマが空を飛べるかどうか調べるわよ。」

と言い出した。


「何に使うの? その情報。」


「実験用。」


彼女はいつもこうだった。でも不思議とその行動力に憧れた。

その日の放課後、僕らは部室棟の一室で実験を始めた。


まずは、カニカマを近所のスーパーから買ってきて、それを部屋の四隅に置いて、カラスを呼ぶ。


しばらくすると、窓の外にカラスが二匹現れた。どうやらこの部屋の外はカラスの溜まり場らしい。


「実験開始ね。」


そう言って彼女は、カラスにビビりながらスマホを取り出して動画の撮影準備を始めた。実際に撮るのはもちろん僕だ。


「カラスー! カーラースー!!」


彼女は大声で叫んだ。しかし、カラスは飛んでいってしまった。


「やっぱりダメかー。じゃあ次は、カニカマをカラスの近くまで投げてみるわよ。」


叫んだらそりゃ逃げるだろ、と思ったが飲み込んだ。彼女には何か考えがあるに違いない。僕は言われた通りに、カラスの目の前でカニカマを投げてみた。


すると、突然一匹のカラスがそのカニカマに飛びついて、食べずに咥えて飛んでったのだ。


「えっ!? なんで!?」


「ほら見て! やっぱり飛ぶんだよ!」


彼女は興奮気味に言った。

その後も何度か同じ事をしたが、結果は変わらなかった。


「これはどういうことだろう……。」


彼女は腕を組んで頭を捻っていた。その時ふと目についた時計を見ると、時刻は既に午後八時を過ぎていた。


カラスも山に帰る時間だ。


「もう遅いし、帰ろう」


彼女と僕は同じバス路線で帰るので、下校中も話す機会が多くて嬉しい。

バス停までの道程で、今日の成果について話し合った。

「どうしてカラスって飛ぶんだろう。」


「うーん……、餌が豊富だからかなぁ。」


「そうなると、ニワトリも飛ばないといけないよね。」


「あっそっか!」


この高校は田舎にあるので、近所に肥えたニワトリが沢山いる。


「餌が豊富なら、人の近くまで来てカニカマを狙ったりしないだろうし、巣に持って帰ってるのかな?」


「そうね、カラスがどこまで咥えて行ってるのか気になるわ。」


あーだこーだと話し合ううちに、やがて仮説が出尽くしてしまった。2人の間に沈黙が降りる。


「……じゃあ、そういう方向性で、明日も実験しましょ。」


「もちろん。」


明日も彼女と一緒に共同作業が出来る……そう思うとにやけてしまう。彼女はそれを勘違いしたようだ。


「あなたって本当に実験が好きね。……実は私、入ってきたばかりの時は私の顔目当てかと思ってたのよ。」


図星を付かれて僕は動転してしまう。美少女とお近づきになりたいという下心は大いにあったのだから。思わず強く否定してしまう。


「違うよ!興味深い活動だなと思って……サクラさんの熱意にも感動したし……」


彼女はジト目で僕を見る。心無しか不満そうだ。


「ふーん。そうなの。」


しまった。強く否定し過ぎてかえって失礼だったかもしれない。僕は慌てて言葉を重ねる。


「いや、もちろんサクラさんは可愛いけどね……」


自分は何を恥ずかしいことを言ってるのだろうか。顔が熱くなるのを感じる。そんな僕とは対称的に、彼女はあっけらかんと言った。


「……あなたに可愛いって言われると結構嬉しいわ。」


「え?それって……」


「自慢じゃ無いけど、可愛いって言われること結構あるのよ。女子からも、男子にもね。けど、正直どうでも良いと思ってた。」


「へー……」


彼女が自分の心情を語るのは珍しい。なんとか相槌を打つが正直ピンと来てない。彼女は伝わってないことを察したのか、丁寧に、僕の目を見ながら言った。


「つまり、他の人にどう思われようと何とも思わないけど、あなたに可愛いと思われると嬉しいのよ。」


そう言いきったあと、彼女はスマホを取り出して、会話を打ち切ってしまった。ちょうどバス停に着いたのだ。僕も何も言えなくて、スマホを取り出す。昼間から気になっていたので、カラスがカニカマを食べて大丈夫なのか調べる。


けど、スマホには全然集中出来なかった。彼女の言葉の意味と、言い切ったあと彼女が少し顔を赤くして、恥ずかしそうにした事の意味を考えるので頭が一杯だ。


ともかく、明日からは彼女にもっと「可愛い」と言って、喜ばせたいと思った。

2人でカラスを追いかけたりする青春、したいですね……


良かったら評価お願いしますm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
[良い点] 電波でも話は通じる点。 [一言] よくわかんないカラスとカニカマの話だったけれど、青春味を感じた。 サクラさんは高校卒業したらフラッと海外とかに行ってそうで、主人公はそれに対して「僕の初恋…
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