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高校でクラスメイトだった彼女が妊娠したらしいから産婦人科について行った話、もちろんヤった相手は俺じゃない  作者: 櫛名田慎吾
② 先輩からもらったコンドームのせいで彼女と後味の悪いことになったけれど、やっぱりさっさと一人で使っておけば良かったと思った話。
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おまけ  ’20 ホンマにあいつらは…… 

◇  ◇  ◇


 フウッと僕はため息をついた。


 目の前には二枚の年賀状がある。また二枚に別れたことを再確認すると、新年からため息しか出てこない。


「弘哉さん、どないしたん。新年からため息ついて」


 小夜ちゃんが不思議そうな顔をして、テーブルの向かいの椅子に座った。歳相応に老けてしまった僕と違って、小夜ちゃんは若い。さすがに二十代後半はちょっと無理としても、絶対に三十代には見える。


 とまあ、そんなことは置いておいて、僕はテーブルに置いた二枚の年賀状を指さした。


「アイツら、二回目の離婚ってホンマにしたんやな。もう知らんわ」


「ああ、美紀ちゃんと川城さん? ふふふっ」


 なにが可笑しいのか、小夜ちゃんはそう笑って年賀状を手に取った。


  △


 いまの時代、結婚をして離婚をするのはもう普通だ。バツイチなんて珍しくもなんともない。そして一度離婚をした相手と再婚をするのもよく耳にはする。元の鞘に収まるという表現は昔からあるし、結局はお互いがパートナーだと再確認することもあるだろう。


 しかし……だ。同じ相手と再婚して、やっぱりもう一回離婚したという話を僕は一回しか聞いたことが無い。つまりは、今回の川城と村澤さんのケースだけだった。


 川城と村澤さんの結婚は、僕たちよりも一年くらい早かった。いわゆる()()()()()()()で結婚をしたのだけれど、今時そんなことも珍しくもなんともない。『ああよかったね』と、僕と小夜ちゃんは小さな結婚式に出席し、次の年には僕たちも入籍した。


 もともと村澤さんはバリバリと働きたい系の女子だった。だから産後はすぐに仕事に復帰して、子育ては両方が一緒にするという約束だったらしい。ところが川城が勤めているのはメディア関係なので、なかなか決まった時間に家に帰るというのが難しいようだった。そこで娘さんが三歳の時に一回目の協議離婚が決まったのだ。


 ところがこの二人、離婚してからも縁は切れなかった。村澤さんはキャリアウーマンとして働きながら娘を育て、川城は家に帰る必要がなくなったぶんも仕事に走り回って、毎月仕送りをする養育費を稼いだのだ。月に一度は三人で出かけるとか言って外食をしたり、話に聞くところでは年に一回ほど家族旅行に行っていた。そんな二人を見ていた僕と小夜ちゃんは『結局なんやねん、あの二人』とお互いに首を捻っていたものだ。


 その状況が変わったのは娘さんが中学生になった頃。つまり今から十年近く前だ。


『お父さんとお母さん、なんで離婚したん? こんなんやったらもう一回結婚したらええやん』


 と、娘さんに言われたらしい。


 あの二人のよく分からないところは、「それもそうやな」と軽く再婚を決めたところだ。離婚をした原因が子供ならば、もうその娘が中学生なら再婚をしてもいいだろう、と時間にして十分くらいで話がついたという。その経緯を村澤さんから聞いた小夜ちゃんは「美紀ちゃん、十分って……」と思わず絶句したという。


 そして去年の暮れ近くだ。


 娘も社会人になりましたので、私たち円満離婚致します。という一通のハガキが届いて僕は度肝を抜かれた。なにしろその文言とともに、笑顔の二人の写真まで印刷されていたのだから。


「小夜ちゃん……。これ、なに?」


 仕事から帰った僕がそのハガキを見つけて問うと、小夜ちゃんは「もう、ええんと違う。あの二人が好きなようにしたら」と笑っていた。


 僕と小夜ちゃんには、なかなか子供ができなかった。だからアイツらとは結婚が一年遅れでも、ウチの娘は今が中学生。七~八年子育て歴が違う。つまり、子供が社会人になった親の気持ちなどはまだ分からない。


 でも、『子供が社会人になったから、私たちはこれからお互い自分のやりたい人生を送ります!』というアノ二人の生き方に憧れることはないだろうと、僕自身は思っている。


 それをそのまま小夜ちゃんに話すと、「ええやん、美紀ちゃんと川城さんらしくて」と笑っていた。つまりは小夜ちゃんもそういう考えは無いらしい、ということで僕はちょっとホッとしたのだけれど。


 △


「こんなん、好き好んでコンプリートしたくもないけどなあ……」


 僕は小夜ちゃんから返してもらった年賀状を見て思わず呟いた。


「なにをコンプリートするって?」


 小夜ちゃんは不思議そうな目をする。


「あんな小夜ちゃん、村澤――川城――村澤――川城――村澤。はあ……、村澤さんから来た年賀状、独身時代の村澤美紀から始まって、川城美紀、村澤美紀、川城美紀、――で、また村澤美紀。全部揃ってるんと違うか、ウチの家」


「アハハハ、ホンマや。そしたらあと十何年して還暦とかになったら、『還暦でお互い老後が不安になりましたので、また結婚しました』って来るんと違う? あの二人!」


「なんやねん、それ……。でもありそうで怖いわ、いや、なんか確実にありそうな気がしてきた!」


 僕たちはそう言って、正月の食卓で笑ったのだった。


<’20 ホンマにあいつらは……  :終わり>


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