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高校でクラスメイトだった彼女が妊娠したらしいから産婦人科について行った話、もちろんヤった相手は俺じゃない  作者: 櫛名田慎吾
② 先輩からもらったコンドームのせいで彼女と後味の悪いことになったけれど、やっぱりさっさと一人で使っておけば良かったと思った話。
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第10話   〃 それにしてもいっぱい買うたな

 昼食時、僕の目の前にはホクホク顔の小夜ちゃんが座っていた。場所は喫茶コロンビア、川城たちとよく来る喫茶店だった。


 二階の窓際の席に座るとアーケード街を行き交う人が良く見えて、待ち合わせをするのにも使っている店だった。


 注文した食事が来るまでの時間、小夜ちゃんが大事そうにアニメイトでの戦利品を袋から取り出す。その嬉しそうな表情を見ていると、『まあ、来て良かったかな』と僕は思ったのだった。


 ◇


 僕たちはあれから本屋さんが開くまでの時間、アーケード街をウロウロとした。


 アーケード街の全長は大体一キロ弱といったところ。先に行けば行くほどお洒落な店などは減っていくけれど、その行き着く先まで行けば、国宝のお城がある。小夜ちゃんはお城には興味がないらしく、「小学校の遠足旅行で来ました」と言って、懐かしそうに眺めただけだった。


 お城に背を向けてクルリと引き返し、もと来た道を戻っていく。個人でやっているレコード店や服屋さんなどはポツポツと開き始めていて、僕たちはアーケード街をブラつきながらアニメイトが開くまでの時間を、ゆっくりと潰した。


 そしていよいよ小夜ちゃんが入りたくても入れなかった、アニメイトの入っている書店のところまで戻って来る。もう書店は営業開始寸前で、店員のお兄さんが店先に本を並べたり、レジのところではお姉さんが入出金の機械を触っていた。


 隣をみると、小夜ちゃんの顔が幾分緊張しているのが分かった。アニメイトに入るのにそんなに緊張するものか、とも思ったけれど、それを店先で口に出すのは空気を読んで僕はやめた。


 基本的に本屋さんの開店というのは地味だ。派手な呼び込みやBGMが流れ始めることも無ければ、銀行のようにシャッターが開く訳でもない。いつの間にか開いているのだ。


 この日もそうで、店に入っていいのかどうか迷っている僕たちの横を素通りして、中年のおじさんが当然のように本屋さんの中に入っていったのだった。


 それを店員さんが呼び止めることもなく、中の棚でおじさんが立ち読みを始めたのを見て、僕と小夜ちゃんはお互いの顔を見合わせ、そして同時にプッと吹き出しながら店に入ったのだった。


 ◇


「尾崎センパイ、これ、可愛いと思わへん?」


 書店での出来事を思い出していた僕に、小夜ちゃんが声をかけてきた。アニメイトで買った本の表紙を僕に見せたのだ。それはキャライラストの描き方の本で、いろいろと実例が載っていた。


「ああ、それな。倉本さん本気なんやなあ、って思ったわ。イラスト上手いもんなあ」


「そんなん違います、ただ、好きなだけやから……」


 そう言って、ちょっと拗ねたような顔で小夜ちゃんは水を飲む。


「でも倉本さん、それにしてもいっぱい買うたな」


 僕は小夜ちゃんが隣の椅子に置いている袋を指さした。なにしろ誰も先客がいなかったアニメイトに一番乗りし、キョロキョロとフロアを見回した彼女は、狭くもないけど決して広くもないアニメイトで一時間も吟味をしたのだった。


 最初は僕の姿をちょくちょく確認していた小夜ちゃんは、いつの間にか自分の世界に入っていて、おしまいには「俺、ちょっと下の本屋に行ってるから」と僕が告げても構わない雰囲気になっていたのだった。


 そんなこんなで、多数手に入れた本や雑誌を満足そうに確認しながら小夜ちゃんが微笑む。


「うん、買いすぎたけど、ずっと行きたいなあ、って思うてたから」


「で、どうやったん? もう倉本さんひとりでも入れるん違うん?」


「ええ……どうやろ。尾崎センパイがおったから安心して見て回ったけど」


「いや、俺、最後の方は下の本屋で立ち読みしてたんやけど……」


 僕がありのままの事実を告げると、小夜ちゃんは少し怒ったような目になって頬を膨らませた。と、同時に彼女が注文したシーフードピラフがやってくる。僕はその場を逃れるために「倉本さん先に食べたらええで、冷めるから」と、話題を変えたのだった。


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