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Traveling! 〜旅するアイドル〜  作者: 有宮 宥
【Ⅱ部】第七章 超消費文明
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時代が求めた世



『本当は、世界の暗闇を照らす日であることを願っていました。しかし世界は未だに光の届かない暗闇へと陥ろうとしています』


『開催にあたっては各国の協力もあり警備も万全を期したものの、それも我々を弄ぶかのようにかいくぐった。都市住人十六名の殺害にくわえ、各国からのVIPも一人を除き殺害されました。どちらも思想の違う犯罪者による虐殺です』


『松倉リツカは単独で都市の機能を崩壊し、特殊な方法を持って住人を殺害した。最終目標は四万人もの犠牲を出すつもりだった。シャオ・レイは御存知の通り、世界の混沌に陥れたテログループの首魁、その残滓の筆頭です。彼女たちに協力関係はなく、それぞれの思惑で動いていたが、ここに一点だけ彼女たちを導いた存在がありました。それが──』


『”旅するアイドル”と呼ばれる集団です。彼女たちはテロリストを手引し、この犯罪を企てたことが明らかになっている。しかしたった六人の旅人』


『2040年、”技術特異点”が人々の生活を変えるという俗説が存在します。断言しましょう。すでに”技術的特異点”が人類に潜んでいるということを!』


『そして”旅するアイドル”の大本こそがその”技術的特異点”──知性を持ったAIであると。我々はつい先日、”旅するアイドル”からそれを入手した! ”機械知性”と呼ばれるそれを調べた結果、これは人類を導く救世主であると確信できた。故に、世界中の方にここに宣言する!! これを持ってして──────であると!!』 




 三月三日十五時前、宗蓮寺グループ特別顧問室にて、先導ハルは招集を受けた。残り一人となって瓦解したと思われたフィクサーから連絡が入ってきたのだ。

 どうしてこんなときに、と思わずにはいられない。なぜなら本日正午に”実験都市白浜”の追悼式での内容が全世界を震撼させるものだったからだ。


「……今、あなたの勇姿を横で流しているわ。宗蓮寺グループ最後の一人と同じ顔をしているなんてね」


『気の所為ではない。僕が最後の一人だ。最後まで保身を貫いた茶蔵とただ俗物だった金城とでは、この集まりを有効に使わせてもらったがね』


 二つの画面上に同一人物が言葉を発している。”実験都市白浜”の追悼式で「変革」を宣言した左文字京太郎と、未だに正体を明かさなかったフィクサー最後の一人である左文字京太郎が。正体を探るだけ無駄だと思い詮索はしなかったが、彼ほどの人物なら該当してもおかしくないだろう。


「それで、わざわざ正体を明かしての連絡なんてどういう腹づもり?」


『ただの挨拶さ。宗蓮寺グループ社内を健全化させようとわざわざ”あの集団”を抜けてきた君へ、ちょっとした報告も兼ねて伝えようと思った次第だ』


 ハルは心臓が破裂しそうになった。ノアやミソラにも言っていないことを、この男は看破してみせた。さすがは公安を束ねるだけある。かつて所属していたところをわざわざ口にしたということは、ハルに対して圧力をかけるつもりでいるのだろう。


「──あの声明、与太話でもなんでもなさそうね。本気で、世の中を変えるつもり?」


『いいや、変わるのさ。こういってはなんだが、運が良かった。たまたま一つの場所に、最高のデータと最高の存在が存在したからね』


 最高のデータとはあの一連の事件そのものだろう。では最高の存在とは。決まっている。ようやくハルの中である出来事との関連性が結びついた。


「彼女たちを捨て石にしたのもそのため……」


『あれは人を惹き付けすぎる。しかしそれも、”技術特異点”の存在あってのものだ。あとは世間という枷が彼女たちを終わらせてくれる』


 人を惹き付けすぎるというのは的を射た表現だった。”旅するアイドル”の通った道には激情の炎が生み出した焦げ跡みたいなものが残る。世間の闇を暴く英雄として、またどんな手段も厭わない反英雄の側面も備わっている。


『さて、君にも協力をしてもらうよ』


「聞くとでも?」


『聞くさ。なにせ”誰もが幸せになる”には僕の改革は必須。違うかい』


 ハルは瞑目した。この男の言う通りだった。現状、左文字京太郎の理念は誰もが求めていたことにほかならない。だが実際にどうやって成すのか、それは未だに明かされていない。もっとも、”実験都市白浜”で披露したあの”宣言”は大言壮語極まりないものであったが、もし実現したなら世界は変わる。左文字は正午のときと変わらない力強さでこう口にした。


『近い内に世界から”暴力”という概念は消え、”技術的特異点”の力を持ってしてそれは完成し、人々は本当に向き合うべき課題へ取り組むことができる。──人は暴力による死を克服する。先人たちが望みつつも諦めた世界がすぐそこに来たのさ』


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