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別れ
会えないんだろう
もう会えないんだろう
ひとりぼっちが
すかすかの夜
昔吸った
煙草の銘柄は
もうどこにもなくて
あのアパートには
きっと知らないひとが
住んでいる
会えないんだろう
もう会えないんだろう
言い聞かせるように
口ずさんだ言葉は
まるで他人事のように
浮かんでは消え
ぱくぱくと
金魚のように口を開けば
なんとなく
空気が薄い夜
自販機に
ホットの缶コーヒーは
もう置いていなくて
ビルの2Fにあったカフェには
貸しテナントの貼り紙が
でかでかとある
会えないんだろう
もう会えないんだろう
現実はどこか
嘘のようで
それなのに
いつだって嘘っぽさは
現実味を帯びていて
会えないんだろう
もう会えないんだろう
噛み締められない気持ちが
空回りする
さみしさの
手前




