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五月/耳鳴り
耳鳴りがした
なにかの
前触れのように
高く
きぃぃんと
私だけに鳴り響いた
梅雨入りした、と
何日か前
ニュースで聞いた
曇天と雨と晴れ間を
繰り返し
ムッと暑い日々が
続いた
そこかしこで
渦を巻くような
めまいがして
ベッドにもたれ
窓越しに
雨を見る
次第に
窓を打つ
雨の音と
耳なりの境目が
消え
私だけに聞こえるのか
そうでないのか
判然としないまま
時間は過ぎた
伸びた芝生を
掻き分けるような
水溜まりが
できた頃
振り絞るような
一滴をたらし
うす暗闇の中で
雨はやんだ
ちぎれた雲の
合間合間の
星は輝き
窓を開ければ
蒸した風が
流れ込む
しっとりと重い
草露の匂いに
混じる
夏の気配
耳鳴りがした
さぁさぁと
止めどなく
波のように
私だけに鳴り響いた