望まぬ不意の来訪者
ノックを無視する彩花を無視したかのようにドアが開いた。鍵は……かかっていない。次郎は普段ドアの鍵をかけたりしないのだから。彩花が起きてからかけてない限り、そのドアは誰にでも開けられる……
そしてドアを開けた者、それは……
「やっぱりいたか。探したよ彩花」
「お、お兄ちゃん……」
そう。彩花の兄、藤崎家の二男である健二だった。
「あちこち探したんだよ? 盲点だったよ。まさかまたここに来てるなんてな。さあ、お兄ちゃんと帰ろうな」
「こ、こないで!」
「おいおい、わがままを言うものじゃないよ。そうだろう?」
土足で部屋に踏み入る健二。
「ひっ、い、嫌……」
「かわいい彩花がこんな狭い部屋で暮らしてるなんて親父が知ったらどう思うことか。さあ、俺たちの家に帰ろうな?」
「や、やだやだ! 私もう帰らない! じ、次郎と暮らすんだか……」
消え入りそうな声、健二が彩花の腕を掴んだからだ。
「彩花が帰らないと次郎の職場が大変なことになるかもな?」
「た、大変なことって……」
「あの手の仕事ってさ、どこが金出してるか知ってるか?」
「お、お金……?」
それが公共事業であることぐらい彩花とて知っている。公共事業の金の流れもある程度は知っている。
つまり、健二がその気になれば白浜組を潰すことなど容易いと……彩花でも知っている……
「さあ、帰るよな?」
彩花は……