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彩花の手料理
風呂から出て、食事の支度をしようかと考えた次郎だったが、これまたすでに彩花が料理を終えていた。
「おいしいか分からないけど……作ってみたの……」
そこに並べられたのは、水を入れすぎてお粥二歩手前のご飯。味噌を入れすぎて味が濃いと言うよりは辛すぎる味噌汁。焦げ目が目立つスクランブルエッグ。塩などの調味料を入れ忘れた肉野菜炒めだった。
それでも空腹の次郎は喜んで食べる。残さず全て。当然彩花も口にしては自分の腕の悪さに顔をしかめ、一口ごとに落ち込んでいった。
「ごめんね次郎……不味かったよね……」
そう聞かれると、もちろん正直に答える次郎。まずいと言うよりは辛いとか、味がないという返事ではあるが。
「でも、全部食べてくれてありがとう……あ、片付けは私がやるから!」
味に頓着のない次郎である。腐ってない限り出されたものは残さず全て平らげることだろう。その小さな体で。