79/156
理解した彩花
そして彩花は思い出した。いつだったか次郎に牛肉を買わせたことを。それが次郎の日当に近い値段だったことを美砂から知らされた時は、何て安い給料で働いているんだとも思ったが……
このアパートの家賃、電気代などの生活費を知るにつれ、決して安くない給料であることも知った。むしろ同年代と比べても高い方だろうとも。
次郎の仕事を知り、理由を理解した。
何も言えなくなり、浴室を後にした彩花。
よく分からない顔をして入浴する次郎。彩花が風呂に来て、一瞬嬉しそうな顔を浮かべたのは気のせいだろうか。
美砂にしてみれば彩花に次郎の給料を知らせるのは気の進まないことだっただろう。だが、彩花の目を覚まさせるには必要な判断だったのかも知れない。