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新たな傷
「おぉ次郎どうした? 早ぉロープ入れや」
「別に入らんにゃあ入らんでもええけど、ちぃと危ねぇで?」
「なんじゃあそら? おめぇアル中じゃなかろうの?」
次郎の手足は震えていた。いつもはどうってことない崖。ロープに入っていれば落ちるはずもない高所。だが次郎は一歩が踏み出せなかった……
「なんじゃおめぇびびっちょんのか?」
「だめじゃのー。そりゃ仕事んならんわいや。降りれ降りれ!」
「それがええのー。頭の手伝ぉしよけえや」
『あー頭ぁ? 次郎おろすけぇ手伝でもさせてぇや』
リンゾーが無線で連絡をし、次郎はとぼとぼと山を降りていった。小さく、肩を落として。