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危機一髪
『早う逃げぇぇぇーー!』
リンゾーの持つ無線越しに頭の声が響く。今となってはリンゾーの位置こそが最も危険な場所なのだから。
その時、リンゾーは何を思ったか腰袋ごと装備を外し、完全にロープからフリーになってしまった。そして、飛びつくように自分から3メートル離れた別のロープにしがみついた。その時、ついに勢いを増した倒木が2本、崖を滑り落ちていった。さっきまでリンゾーがいたロープの上を滑りながら。
つまり、もしリンゾーがロープに入ったまま横にずれようとしていたなら……滑りくる倒木を避ける術はなかっただろう。そして上半身を真後ろにぶち折られて……即死だったはずだ。装備を捨てることで拾う命もある。他のメンバーもようやく命拾いしたことに安堵し、岩山に腰を落とした。
なお、次郎は下の男、ガンさんが持っていたロープをそこらの木に巻き付けたので、もう大丈夫だ。後は全員で落ち着いて助ければいいだけである。