次郎、絶体絶命
ロープは切れてないのだから、そのロープを掴みさえすれば次郎は助かる。そしてリンゾーは見事そのロープを掴んでみせた。
リンゾーの手を擦過するロープ。しかし、彼は離さなかった。
「おっしゃあ! そのままじゃあ!」
「今いくけぇのぉ!」
「オレぁ下いくわぁ!」
上で作業をしているのは次郎を含めて5人。
次郎とリンゾー以外の3人がいち早く救出に向かっている。2人はリンゾーと一緒にロープを引くべく、1人は直接次郎を支えるべく崖を降りていった。
だがその時だった。
「離せぇ! 逃げぇぇぇーー!」
下に降りた1人が突如叫んだ。ロープを離して逃げろと。
だが、いきなりそう言われても離せるものではない。次郎の命を支えているのだから。
「ええから逃げぇ! 上じゃあ! どけぇ!」
そう言われて上を見る3人……そこには次郎がロープを取ったはずの木がズルズルと落ちつつあった……
ロープが切れてないのに次郎が落ちた理由が、それだった。
下の1人が次郎のロープを支えたのを確認し、手を離す3人。だが、リンゾーだけがそこを離れようとしない。いや、それどころか次郎のロープを鎌で切ろうとしていた。