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次郎とリンゾー
「次郎! ここ押さえとけぇ!」
リンゾーに言われた次郎はワイヤーの上から手を伸ばし、網を押さえた。
「もう1マス上げぇ!」
金網を前から見ると正方形を斜めにしたような菱形となっている。次郎は言われた通りその菱形をわずか1マス、長さにして6センチほど上に動かした。
「それじゃあ! そこにコイル巻けぇ!」
コイルとは金網、つまりロックネットをワイヤーに固定するための資材である。ロックネットをワイヤーに当て、その両者をまとめて蛇のように巻き付けていく。それが終われば手を離せるわけだ。
そして次郎が手を離し、体重をワイヤーからロープに移した時……次郎の体は……
落下していった。
しかしロープが切れたわけではない……
リンゾーは慌てて手を出した……