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迎え撃つ彩花
次郎は久々に白浜家で風呂に浸かっていた。実際にはまったく久々ではないのだが、次郎の感覚では久々だった。
風呂に浸かりながら考える。彩花のこと、羽美の言い分。
しかし、下手の考え休むに似たりとの言葉があるように、次郎がいくら考えても全く意味がない。次郎には何一つ分からない。自分がどうするべきか。彩花に何と言うべきか。さっぱり分かっていない。
そのまま……心配になった美砂が呼びに来るまでずっと湯船に浸かっており、湯当たり寸前になっていた。
それから、次郎と彩花は白浜家で夕食をとってからアパートへと帰っていった。羽美は不満そうな顔をしていた。
「次郎。私、もう逃げないわ……」
帰り道。次郎の自転車の背中で、彩花はそう呟いた……