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立ちはだかる羽美
二人の間に割って入る羽美。小さな体で意外にも力強く。
「おねぇちゃん! じろーにそんなこと言ったら絶対うんって言うわぁね! そんなのずるいよ!」
それが次郎の長所でもあり短所でもあるのだろう。
「だからじろー! うんって言ったらだめなんよ!」
彩花に言われ、羽美にも言われ次郎は身動きがとれなかった。あう、あうと意味不明な言葉を発することしかできなかった。
「はー。こりゃどうにもならないね。はいはいそこまで! 晩飯にするよ!」
口を挟んだのは美砂だった。
抜き差しならない状況だっただけに、美砂が割り込まなければ小田原評定になっていたことだろう。
「とりあえず次郎! あんたは風呂でも入ってきな!」
美砂に追い立てられるように風呂へと向かった次郎。後に残された羽美と彩花。睨み合うこともなく、その場を去る羽美。困ったのは彩花だ。おろおろと美砂に視線を向けていた。