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焼きうどん
風呂へ入った彩花。夕飯の支度を始める次郎。今夜は焼きうどんのようだ。
「あがったよ……」
濡れた髪、水が滴るままに彩花は風呂から出てきた。
「次郎、拭いて。」
言われるがままに実行する次郎。バスタオルで頭を覆い、力任せに拭く。それはまるで雨に濡れた子犬の世話をするかのような手つきだった。
「もっと優しくして。」
子犬と違うのは、彩花は文句を言うところだろう。バスタオルは段々と下におりていく。
肩、脇、胸。
腹、尻、脚へと。
「もう一回する?」
自分の局部を凝視している次郎を見て、彩花はそう言った。
しかし、次郎は首を横に振った。
「そう。私のこと好きじゃないんだ。ふーん。」
男女の仲において好きだとか嫌いだとか、次郎にはよく分からない。ただ、彩花との行為が気持ちいいことは分かる。だが、次郎はその行為を何度もしたいとは思えなかった。常に彩花に馬乗りにされ、自分の意思などまるっきり無視されたまま行う行為ゆえに好きになれないのも当然なのかも知れない。
この夜彩花は焼きうどんを文句も言わずに食べた。